防音室に最も重要な「重さ」と「防振」の話
皆さん、こんにちは。防音アドバイザーBudscene並木です。
秋晴れも清々しく、絶好のスポーツ日和が続いていますね。
一度、相撲場所を見に行きたいんですがなかなか機会がなく残念です。
お相撲さんってズッシリと重くてボヨンボヨンと弾力性が高いですよね。
挑んでいっても、その重さとボヨンボヨン度合いで跳ね返されそうです。
実はこの重さと弾力性(防振)が防音にもとても大切なんです。
音もお相撲さんには弱いんですね。
今回は、そんな「重さ」と「防振」について解説していきます。
目次
重さと防振
防音に最も重要なものは
- 重さ
- 防振
この2つです。
では何故「重さ」と「防振」が必要であるのか。
今回は少し専門的な内容になるので、まずはざっくりと説明しますね。
音は「揺れ」だと思ってください。音が私たちの耳に届くまでには空気や壁を揺らしながらやってきます。
そのため、音を防ぐこと=空気や壁の揺れを小さくすることになります。
それぞれ揺れを小さくする仕方が異なり
- 空気を伝わってくる音を遮るには → 空気の揺れを小さくする → 遮る材料を重くする
- 壁を伝わってくる音を遮るには → 壁の揺れを小さくする → 防振(ゴムやバネで揺れを弱くする)
という方法が効果的です。
基本的に重さと力は比例します。重いものを動かすには力が要りますし、重いものが動けば大きな力が発生します。
空気は非常に軽くて力がないので、遮るものが重ければそれを揺らす(動かす)ことができません。
童話「3匹のこぶた」でも、ワラと木の家は狼に吹き飛ばされてしまいましたが、レンガの家は無事でした。お相撲さんも嵐くらいでは動かなさそうです。
一方、壁の揺れはどうでしょう。
壁を伝わる揺れの強さは、何もしないとドミノ倒しのようにそのままの強さでどこまでも伝わっていきます。そして壁は空気と違って重いので、重いものを重さで制することは難しくなります。
ここで登場するのがゴムやバネなどのボヨンボヨンしたものです。ボヨンボヨンするものに、ある方向から力を加えると、パンチングマシーンのように元の位置に戻って来ようとします。即ち、跳ね返す方向に力がはたらくので、段々揺れが収まっていきます。
擬音としても「ガタガタ」と揺れるのと「ボヨンボヨン」と揺れるのでは違いそうですよね。「ガタガタ」は同じ強さでいつまでも「ガタガタガタガタ・・・」と続きそうですが、「ボヨンボヨン」の方は「ボヨンボヨンボヨン・・・」と段々弱くなっていくような気がしませんか?・・・え?私だけ?!(^^;)
もし「重さ」と「防振」に興味があって、もっと詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、是非以下もご覧ください。
音の特性
音は振動です。音が周囲へ伝わるには、伝えてくれる空気などの媒質が存在しなければなりません。
そして音の特性は、媒質の状態(気体・液体・固体)により色々と変わってきます。
- 空気で伝わる音・・・空気伝播音(室内での話し声やテレビの音、雷の音、花火の音など)
- 水中で伝わる音・・・水中伝播音(水中ソナーなど)
- 固体で伝わる音・・・固体伝播音(足音、ドアの開閉音、モーター稼働音など)
この中で私たちの日常に特に密接に関わってくる音は、空気伝播音と固体伝播音です。
音の振動は音源から発生したあと、進む方向に空気があれば空気伝播音に、固体があれば固体伝播音になります。その後、媒質が変われば空気伝播音から固体伝搬音に、または固体伝播音から空気伝搬音に変わり、徐々に減衰して消えていきます。
振動の種類
空気伝播音と固体伝播音では伝わり方の種類に違いがあります。
従って、効果のある防音方法も変わってきます。
それぞれの伝播音の効果的な防音対策を表1.に示します。
表1. 空気伝播音と固体伝播音の防音方法
伝わる音波の種類 | 防音方法 | |
空気伝播音 | 縦波 | 音を遮る材料を重くする |
固体伝播音 | 縦波・横波 | 防振 |
質量則とは
表1.のように、空気伝播音を防音するには音を遮断する材料を重くすることが効果的です。
では、その材料の重さはどうやったらわかるのでしょう?
それは、質量則=「音を遮る材料の面密度[Kg/m2](単位面積当たりの質量)や周波数[Hz]が大きいほど遮音性能が大きくなる」という法則から導き出します。
質量則の計算式は次のようになります。
透過損失値TL[dB]=20・log(f・m)-42.5
f:周波数[Hz]
m:面密度[kg/m2]
この式から、低い周波数ほど重さが必要であり、高い周波数ほど重さは必要ないことがわかります。
具体的な数値としては、例えば500 Hzの音を35 dB減衰させたい場合は1 m2に15 kgかければいいとわかります。
またこの式によると、ある周波数fの音の防音性能を5 dB上げたい場合は、材料の重さを元々の重さ(面密度)mの約2倍(1.78倍)にする必要がある、と導かれます。
防音室を設計する時にはこの質量則を元に、どのくらいの重さを確保すれば目的の防音性能を実現できるのかを検証していきます。
防振とは
しかし、重さを確保する方法だけでは高性能を目標にすることに限界があります。
重さが増えるということは、高密度な材料を使って工事費用が上がるか、低密度な材料を使って壁や天井を厚くするか(部屋が狭くなるか)の選択になり、現実的には非常に難しいからです。
そこで、固体伝播音への対策も重要になってきます。
表1.で示した通り、固体伝播音への効率的な防音対策は防振になります。
防振とは、振動源(音源)からの振動を小さくするために、壁や床との間にゴムなどの弾性体を挟む方法です。
防音層を重ね、ミルフィーユのような構造を作っていくことによって効率よく防音を図ります。
また、振動をいかに伝えないように施工するか、ゴムやバネなど最適な素材を工夫して徹底していきます。
知識・技術のある防音会社を選ぼう
これから防音室を検討している方は、防音会社に「この部屋はどのくらいの重さですか?」と聞いてみてください。その防音会社が信頼できるかどうかの目安になるでしょう。明確に答えられない会社は怪しいと思ってOKです。
防音層においても、ただ闇雲に重ねれば良いという事ではなく経験値やノウハウがあって初めて実現できるものになります。
是非しっかりとした知識と技術を持つ防音会社を選んでください。
まとめ
今回は、お相撲さんのようなズッシリとした重さとボヨンボヨンとした弾力性(防振)が防音に効果があることを解説いたしました。
私たちがお相撲さんに挑んでいっても、あちらはビクともせず逆に私たちが跳ね返されている図が容易に想像できますよね。音もそんな感じでお相撲さんには弱いのです。
私たちバドシーンは、重さと防振の知識・ノウハウを武器に徹底的な防音施工を行っています。
ご相談の際には自信を持ってお応えしますので、どうぞ安心してご依頼ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 真空中では音はどうなるのですか?
A. 媒質が無いので伝わりません。
ちなみに似たような波の性質をもつ光は、粒子の性質も併せ持っているので真空中でも進むことができます。
Q. 媒質の状態によって音の特性は具体的にどのように変わるのですか?
A. 速度や伝わる距離が変わります。
固体>液体>気体の順で音の速度が速くなり、かつ遠くまで伝わります。
密度や温度など他の要因にもよりますが、各媒質中の音の速度はおおよそ次のとおりです。
- 空気中:約340 m/s
- 海中:約1500 m/s
- 地中:約5000~7000 m/s
地中を伝わる振動の代表格が地震ですが、1秒間に5 km~7 kmで迫ってくるならとても逃げられませんね。
余談ですが、地震は固体中を伝わるので、縦波と横波があります。地震に、速く伝わるP波、遅く伝わるS波があるのは縦波と横波の速度が異なるからです。速い縦波がP波、遅い横波がS波となります。
Q. 防振と似たような言葉で制振というのを聞いたことがあります。どう違うのですか?
A. 「防振」は振動源(音源)からの振動を小さくするために、壁や床との間にゴムなどの弾性体を挟む方法で、振動源自体には働きかけません。
一方、「制振」とは支柱を増やすなどして、振動源(音源)の振動を直接抑える方法です。
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