2重・3重・4重サッシの掃き出し窓で防音性能を検証!
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
部屋の中で最も防音性能が低い「窓」。
壁くらいの防音性能を得られるようにするには、一体どうすればよいのでしょう?!
今回は、窓の中でも特に音漏れしやすい掃き出し窓(※1)で、何と!1~4重までのガラスサッシの防音性能を検証していきます。
※1 掃き出し窓・・・床近くから天井近くまで高さがある、大きな引き戸式の窓
はてさて、結果はどうなるでしょう?!
目次
防音性能の測定
それでは早速、騒音の音量を測定して防音性能を確認してみましょう。
測定方法
測定の手順は次のとおりです。
①音源から音を発生させる
②窓を1枚づつ閉めていって、その都度音源からの音量を騒音計で測定
③内外での音量差から防音性能を算出
測定は次の2パターンで行います。
- 室内→室外:室内でピンクノイズを発生させ、室外でその音量を測定
(ピンクノイズ・・・音の高さと強さが反比例するノイズの一種)
- 室外→室内:室外で車のエンジン音を発生させ、室内でその音量を測定
(住宅街のため、外でピンクノイズを発生させると近隣に迷惑がかかるので、弊社作業車のエンジンを基準音量に採用)
測定方法を表1. に示します。
表1. 測定方法
| 測定音 | ・室内→室外:ピンクノイズ ・室外→室内:車の騒音 |
| 測定音域 | 125、250、500、1,000、2,000 Hzの5オクターブバンド |
| 騒音計 | 精密騒音計、C特性 |
測定結果
測定結果は次のとおりでした。
室内→室外への音
室内→室外の測定結果を、グラフ1と表2に示します。
グラフ1. 掃き出し窓4重サッシの防音性能(内→外)
表2-1. 既存窓のみ(1重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 22 |
| 250 | 18 |
| 500 | 24 |
| 1,000 | 26 |
| 2,000 | 25 |
表2-2. 既存窓+内窓①(2重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 31 |
| 250 | 31 |
| 500 | 42 |
| 1,000 | 44 |
| 2,000 | 40 |
表2-3. 既存窓+内窓①②(3重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 34 |
| 250 | 36 |
| 500 | 50 |
| 1,000 | 56↑ |
| 2,000 | 53↑ |
表2-4. 既存窓+内窓①②③(4重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 39 |
| 250 | 40 |
| 500 | 56 |
| 1,000 | 60↑ |
| 2,000 | 60↑ |
室外→室内への音
室外→室内の測定結果を、グラフ2と表3に示します。
グラフ2. 掃き出し窓4重サッシの防音性能(外→内)
表3-1. 既存窓のみ(1重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 15 |
| 250 | 17 |
| 500 | 18 |
| 1,000 | 19 |
| 2,000 | 21 |
表3-2. 既存窓+内窓①(2重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 19 |
| 250 | 25 |
| 500 | 31 |
| 1,000 | 34 |
| 2,000 | 34 |
表3-3. 既存窓+内窓①②(3重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 23 |
| 250 | 30 |
| 500 | 36 |
| 1,000 | 42 |
| 2,000 | 44 |
表3-4. 既存窓+内窓①②③(4重サッシ)の防音性能
| 周波数[Hz] | 防音性能[dB] |
| 125 | 26 |
| 250 | 32 |
| 500 | 39 |
| 1,000 | 42↑ |
| 2,000 | 44↑ |
結果の評価
測定結果から次の4点が確認されました。
- ピンクノイズでは、2重サッシで戸建てレベルほど、3重サッシで鉄筋コンクリート造マンションレベルほどの防音性能を確認
エンジン音では、4重サッシで戸建てレベルほどの防音性能を確認 - サッシを足していくと防音性能は上がっていくが、単純に2倍・3倍・4倍になるわけではない
- 低音の方が高音より防音効果が低い
- 「内→外」よりも「外→内」の方が、防音性能が低く測定された
1つひとつ詳しくみていきましょう。
1. ガラスサッシでの防音性能
中音域500 Hzでの防音性能で考えていきます。
ピンクノイズでは
- 2重サッシで42 dBほど → 一般的な戸建ての防音性能30~35 dB超え
- 3重サッシで50 dBほど → 一般的な鉄筋コンクリート造マンションの防音性能45~50 dB超え
エンジン音では
- 4重サッシで39 dBほど → 一般的な戸建ての30~35 dB超え
という結果でした。
いずれもガラスサッシを増やすことで、壁に匹敵するくらいの防音性能を得られることを示しています。
2. 防音性能の上がり方
防音する材料が重ければ重いほど(密度が高ければ密度が高いほど)、音を遮る効果は高くなります。
そのため防音材を重くするごとに防音性能は上がっていきますが、その際の伸び率は一定ではなく、重くしていっても段々と防音性能の伸びは減ってきます。(質量則)
グラフからも、防音しているサッシの枚数が増えて重くなっていくほど、次にサッシを追加しても防音性能の上がり具合が減速していくことが読み取れます。
ちなみに質量則によると、遮音性能を5 dB上げるにはもとの防音材の2倍の重さの防音材が必要です。
3. 高音と低音への防音効果の違い
一般的に、次の理由から低音の方が高音よりも防音しにくくなります。
<理由>
- 高音は波長が短く障害物を回り込めないのに対し、低音になるにつれ波長が長くなり障害物を回り込めるようになる
- 低音は特定の硬い材質(コンクリートや金属など)に吸収されにくく反射される傾向がある
- 2の理由から、2に加えて低音は特定の建築物や空間で共鳴してエネルギーが増幅されやすい
こういった理由から、低音は多少の減衰があっても長時間発生時のエネルギーをほぼ保持したまま伝わるので、防音しにくいのです。
データ測定中も、サッシを閉じるごとに、どこから聞こえるのかわからない低音の「ゴーッ」という音が目立って聞こえるようになっていきました。
これは障害物が増えて高音がドンドン遮音されていき、残った低音が際立って聞こえたためです。
音の発生源がはっきりしないのは、低音ほど全方向360°に広がる性質があり「どこで鳴っているか」を耳が特定しにくくなるからです。
4. 「内→外」よりも「外→内」の方が、防音性能が低い?
グラフを見ると「内→外」よりも「外→内」の方が防音性能が低いという結果になりました。
しかしこれは、ピンクノイズとエンジン音で条件が違うため単純な比較はできません。
(本来は検査の規格通りに「外→内」もピンクノイズで測定したかったのですが、外でピンクノイズを発生させると近隣に迷惑がかかるので、やむなくエンジン音にしたという経緯があります。)
ガラスなどの防音材にも音との相性があり、防ぎやすい音・防ぎにくい音があると解釈していただければと思います。
ただし、体感的にも「内→外」より「外→内」の方が防音性能を低いと感じがちです。
それは環境騒音が室外と室内では違うからです。
ほぼ同じ音量のはずなのに、室内での騒ぎ声を外で聞く分にはザワザワした他の音に紛れて気になりませんが、外での騒ぎ声をシーンとした室内で聞くと大きな声に感じませんか?
このように同じ防音性能で同じくらい音が減衰しても、部屋の中の方が外よりも静かである分、音が目立ってしまうのです。
騒音計の特性による表示の違い
騒音計には、2つの測定モードがあります。
- A特性:人間の聞こえ方に合わせて補正したモード
- C特性:ほとんど補正をかけず、音のエネルギーをそのまま測るモード
人間の聴覚は低音に対して感度が悪くなるため、それに合わせているA特性ではC特性よりも低音の音量が小さく計測されます。
ここで要注意なのがA特性の補正の仕方です。
実際の人間の耳は音の大小でも感度が異なるのに対し、A特性は小さな音に合わせた補正をそのまま大きな音にも採用します。
そのため、低音の音量が大きい場合は、実際に聞こえる音量と騒音計で示される数値にズレが生じてしまうことがあります。
今回もです。
これをご覧ください!
4重サッシを全て閉じた時点で 「ゴーッ」という低音(63 Hz)の音量は
・C特性で50 dB前後
・A特性では約20~26 dBほど
でした。
同じ音を測定しているのに、C特性とA特性ではここまで音量に差がでてしまうのです。
そして実際に低音が聞こえているのにもかかわらず、A特性では騒音計の画面に音量の目盛りが全くない状態でした。
役所などで皆さまに貸し出している騒音計はA特性のものが多いので、「補正のズレもあるからご自分の耳を信じてくださいね!」という注意喚起をさせていただきました。
防音性能を上げるための工夫
測定している4重サッシですが、枚数を重ねるだけではなく、実は防音性能を高める「ある工夫」がされています。
それは、4重サッシの構造です。
1枚目のサッシは、もともとの建物に最初から付いていた既存の窓のサッシです。
2枚目のサッシも、もともとの建物に内窓として設置しました。
そして3・4枚目は新たに創った浮き構造の防音室に設置し、もともとの建物とは切り離した構造にしました。
振動を伝わりにくくするために、部屋の床・壁・天井とは直接的につながっていない状態を創ることが防音性能を向上させる秘訣です。
また、これらのガラスは4枚全て、厚さが違うペアガラスやシングルガラスを使っています。
ガラスには共鳴の問題があるので、窓の防音は単純にガラス1枚を厚くすればよいというわけではなく、異なった厚さのガラスを何層も組み合わせることが効果的です。
ガラスでの防音方法に関して詳しくは、こちらをご参照ください。
【ガラスでの防音は難しい!ガラス窓の防音方法を徹底解説】
まとめ
今回は、「4重サッシの掃き出し窓でどこまで音を防げるか」を検証しました。
窓の防音性能を向上させるために
- 浮き構造にする
- 異なる厚さのガラスを組み合わせる
という工夫を行い、ピンクノイズ(室内→室外)とエンジン音(室外→室内)で防音性能を測定してきました。
500 Hzでの測定結果を表4.に示します。
表4. 各音源に対する防音性能
| 音源 | 測定結果 | 防音性能 |
| ピンクノイズ | ・2重サッシで42 dBほど ・3重サッシで50 dBほど |
・2重サッシで戸建て(30~35 dB)超え ・3重サッシで鉄筋コンクリート造マンション (45~50 dB)超え |
| エンジン音 | ・4重サッシで39 dBほど | ・4重サッシで戸建て(30~35 dB)超え |
4重サッシの掃き出し窓!・・・なかなか測定できない貴重なデータですね。
測定にご協力いただいたお客さまには感謝です。
そもそもコストがかかるにも関わらず窓を4重サッシにした理由は、ピアノの搬入経路を確保するためです。
中古の物件をリフォームしたので部屋の入り口からは狭くてピアノが搬入できず、防音的には塞いだ方がよい掃き出し窓を今回はあえて塞がずに活用する方法をとりました。
このように、私たちBudsceneはお客様1人ひとりの個別ケースに合わせて工夫を凝らし、防音の最適解を提案いたします。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 窓にはどんな種類があるのですか?
A. 窓は開閉の仕方や用途などによって分類されており、代表的な窓としては次のようなものがあります。
掃き出し窓は、図の左側の引違い窓の一種です。
- 引違い窓(横にスライド)
- 縦すべり出し窓(前後に開閉)
- 横すべり出し窓(前後に開閉)
- 上げ下げ窓(上下に開閉)
- FIX窓(採光のみで開閉なし)
Q. 窓の大きさは防音性能に影響ありますか?
A. 窓の面積が広いほど、防音は難しくなります。
よって今回のような掃き出し窓は、防音性能を上げるために色々と工夫が必要になります。
Q. 浮き構造とはどういったものをいうのですか?
A. 部屋の壁・床・天井に触れずに空気層を挟んだ状態で、部屋の中にもう一つの部屋を創るルーム・イン・ルームの状態を「浮き構造」と呼んでいます。
壁・床・天井どうしが少しでも接するとそこから音(振動)が伝わるので、防音には元の部屋から完全に離す(浮かせる)ことが重要となります。
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