【事例42】-楽器メーカーのユニット防音室を買ったのに、下の階から苦情が!-
クラリネット奏者です。
自宅で練習したく、ユニット防音室を購入したのに階下から苦情がきてしまいました。
防音のお悩み相談・質問コーナー。
今回のゲストは、クラリネット奏者のoさんです。
では、ご相談・ご質問をどうぞ!
はじめまして。
女性・岐阜県在住・一人暮らしです。
住宅環境は
・集合住宅(4階建ての2階に居住)
・鉄筋コンクリート造
・1K8畳
です。
クラリネットを自宅で演奏するために、楽器メーカーA社のユニット防音室(0.8畳、D-35)を室内に設置して練習していましたが、先週初めて下の階の人からクレームが来てしまいました。
クレームが来たのは大事な本番の5日前のことでして、いきなり練習場所がなくなり、とても動揺しました。
今まで防音のことをあまりわかっていなかったので、この機会に勉強しようと思っていますが、何が最善なのか迷走しております。
相談に乗っていただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
はじめまして。
精神的なショックも大きかったのですね。
心中お察しいたします。
今まではクレームが来たことはなかったのですか?
はい。
7〜8年くらい前からユニット防音室を使っており、ここ4年はかなり頻繁に利用していたのですが、今まで苦情をもらったことは一度もありませんでした。
管理会社に詳細を問い合わせたところ、相手の方は「どこからかは分からないけど、決まった時間にクラリネットの音が聞こえる」と言っていたとのことでした。
その方は最近引っ越されてきたようです。
管理会社によると、両隣や上階の人からの苦情は来ていないし、今までもなかったとのことでした。
ただ、「クラリネットの音」というところまで言及されていたので、私が気づいてなかっただけで、今までも他のところにも音漏れしていて、我慢させていたかのではないか・・・と心苦しく思っています。
(今までは苦情が来なかったのもあり、油断して夜も音を出していました。)
そうなのですね。
階下の方がクラリネットの演奏だと把握できるということは、かなり聴こえていると考えてよいと思います。
ユニット防音室の製造元のA社には問い合わせをしてみたのですか?
A社にも問い合わせたのですが、効果的な解決方法はないと言われました。
防音室の買取り中古売買をしている業者にも問い合わせてみたのですが、「防振マットなどで緩和できる」と言われ、それ以上の具体的な方法は教えてもらえず・・・。
知り合いの伝手の自作防音室を作っている人の話を聞いたら、「吸音材などで、窓や換気扇を補強し、その上で下の階の人に交渉してみる。それでもダメならば引っ越しを考える。」という案をいただきました。
手を加えてどうにかなるのなら試してみようかなと思いますが、具体的にどうすればいいのかよくわかりません。
音の感じ方が人それぞれである以上、集合住宅の賃貸では限界があるような気もしていて、戸建て物件を探した方がいいのかな・・・とも思い始めています。
A社からの返答もお送りします。
防音室内で楽器演奏をした場合、防音室外ではメロディラインが認識できる程度には音漏れがします。
実際の設置では防音室を建築側の壁で囲いますので、周囲への音漏れは更に少なくなりますが、減衰度合いは建築側のスラブ厚や材質・構造などにより建物ごとに異なるため、特に静かな環境や時間帯によっては周囲に音が漏れ聞こえる可能性があります。
防音室本体の遮音性能を上げることについては、違いがわかるほどの効果的な方法がございません。
音漏れを防ぎたい方向から防音室本体をできるだけ離すと多少なりとも改善される可能性はありますが、実際の住宅環境ではスペースの問題等で防音室の移動は難しいケースも多いです。
防音室ご購入後の返品は不可ですので、手放される場合は中古防音室としての買取可否について、ご購入店へご相談ください。
簡単ではございますが用件のみのご案内とさせていただきます。
今後ともご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
ユニット防音室は室内のどこら辺に設置していますか?
壁や天井・床から十分に距離を取らずに設置している場合には、ユニット防音室の性能(該当ユニット防音室では実性能30 dB減衰)が、部屋の元々の遮音性能にそのままプラスになるわけではないので、注意が必要です。
クラリネットの音色だと判別できるほど音が聞こえているということは、階下へ聞こえている音量は30~35 dBほどはあると予想します。
すると、クラリネットの音量が95 dBほどとして、ユニット防音室内から階下(隣接住居)への遮音性能(元からの遮音性能+ユニット防音室の防音性能)は60 ~65 dBほどでしょう。
防音の考え方については下記を参考にしてください。
【【防音DIY】最短最速で防音の結果を出す方法!】
クラリネットの音は500~8,000 Hz辺りの高音域がメインなので本来は防ぎやすいはずなのですが・・・💧
それでも聞こえるということは、ユニット防音室の遮音性能は予測よりも下回っている可能性があります。
改善策についてですが、「床からユニット防音室までの距離を取る」ことが重要です。
具体的な方法を下記に示しますね。(数字が小さい方法ほど、効果が得られます。)
①大工さんなどの知り合いがいれば防振置き床を施工してもらい、その上にユニット防音室を置く
参考:万協フロアー
②ジョイントマットやタイルカーペットを何層にも重ねて約10 cmほどの床を創り、その上にユニット防音室を置く
③雑誌をユニット防音室の4隅、中央に10㎝程重ねて、その上にユニット防音室を置く
デメリットは、ユニット防音室が天井に近くなるので今度は上階に聞こえやすくなってしまうことです。
ただその場合でも、天上とユニット防音室の間に何か挟んだりはしないほうがよいでしょう。
空間となっている方が上階に対しての遮音性能は確保できます。
ユニット防音室に何かを貼ってもほぼ効果はないので、ユニット防音室を浮かせることを優先してください!
ありがとうございます。
とてもためになります。
現在は、ユニット防音室を壁から7 cm離して設置しています。
隣も自宅も1K物件なので他に部屋は挟んでおらず、もし苦情が来るならお隣からだと思っていたので、下の階から来たのは想定外でした。
(ただ、テレビの音などは全く聞こえないので、壁はそんなに薄くないと思います。)
大工さんの知り合いは残念ながらいないのですが・・・、追加の床を作るとなると、いったんユニット防音室を解体するということですよね?
中に何か敷くというのもあまり効果ないということですよね?
動画で紹介されていた方法(おすすめスマホアプリ)で、室内の音量を測ってみました。
家にあるBluetoothスピーカーでは80 dBの音量が最大だったので、それで調べています。
時間帯は19:00〜20:00です。
・特に何もしてない状態(車の走行音などは聞こえる) → 35〜45dBくらい
・防音室内でピンクノイズを鳴らし、ユニット防音室のドアを閉めた状態 → 55〜60 dBくらい
・キッチン(扉を閉めた状態)→ 45〜48dBくらい
でした。
測定お疲れ様でした。
予想通りの測定結果ですかね。
後はクラリネットの演奏音の周波数や音圧が確認できると、目指すべき遮音性が見えてきます。
測定結果からすると、お隣にも聴こえている可能性はありますね。
お隣とお話しできるのであれば確認してみるとよいですね。
下の階に対しては、ユニット防音室自体を浮かさないと防音性は向上しないので、「ユニット防音室を傾けて何かを挟む」というのを繰り返して浮かせていかないといけません。
今まで、大手メーカーの有名な商品だからと安心していましたが、近隣に聞こえていた可能性が高いですね💧
それなのに夜まで音を出したりして、本当に申し訳なかったな、と思います。
今まで何年も苦情がなかったのが不思議なくらいです。
防音について知ろうとしてなかったことを、反省しまくっています。
ユニット防音室の床を浮かすことについてですが、
・A社 → 床のようなオプション商品はない
・防音室の買取りをやっている業者
→ 床の補強はできるが、苦情が来なくなることを保証はできない
→ ユニット防音室を一度解体しなくてはいけないので16万円ほどかかる
・自分で、簡易的に床に防振シートを仕込む
→ あまり意味なさそうな気がする
という感じです。
クラリネットを練習するにあたり、スタジオやカラオケなどを借りると際限なく費用がかかるけど、防音室なら初期費用のみで、場所確保の手間も省けると考えての購入だったのですが・・・。
楽器メーカーは、遮音性能について責任を果たしているとはいえませんね。
中古買取り販売の業者はメーカーの商品を買う・売るのみの仕事なので、遮音性能についてのノウハウはそもそも持っていないと思われます。
楽器メーカーに対しては、今回の件でかなり不信感をもちました。
A社は好きなメーカーであっただけに残念で悲しいです・・・。
それなりにお金がかかっている商品である以上、自分たちの作る物に対してもう少し責任と誠実さをもってもいいんじゃないか、とやり取りしていて感じました。
そうですよね💧
私たちもoさんのように防音でお困りの方を少しでも減らせるように、正しい情報をこれからも発信していくつもりです。
さて、この状態で何ができるか!?ですが、下の住居に聞こえている音は、物体を伝わる固体伝搬の音です。
そのため、ユニット防音室を浮かせないと効果は得られにくくなります。
内側にシートを貼っても、ユニット防音室本体は床に触れていることには変わらないので、意味はあまりないでしょう。
しかし、クラリネットの音は500Hz~8kHzの間がメインなので、部屋がビリビリするような低い周波数の音はほとんどありません。
高い周波数で効果が期待でき、費用がなるべくかからないのはタイルカーペットを何枚も重ねる方法です。10枚程重ねてもよいでしょう。
ユニット防音室の床は端から端まで必ず覆ってください。
タイルカーペットの起毛は長い方が良いのですが、長いと金額が高くなってしまうので、コスト重視で選んでも構いません。
後は上手にカットできるかどうかなのですが、実施できそうでしょうか!?
また、申し訳ございませんが、この方法でも下階から完全に苦情が来なくなると言い切れるわけではないのをご理解いただけると幸いです。
タイルカーペットのご提案ありがとうございます!
今まで色々な人に色々な提案をもらいましたが、初めて「これならダメ元で一度やってみるか…」という気力が湧きました。
防音室の買取りをやっている業者さんの提案のように、効果が不確かなものには16万円も払えませんが、タイルカーペットは試してみようと思います。
私の人生の小さな目標が、「好きな気持ちを持ったまま、音楽を続ける」なのですが、今回かなり衝撃的でした。
普通の日の苦情ならばこんなに消耗しなかったと思うのですが、気合いを入れている本番の直前の苦情(しかも油断していた)でしたので・・・。
大袈裟ですが「音楽をこれからも続けていくのか、やめるのか」を試されてるような感じがしています・・・。
音楽を続けられるように、自分にとって負荷にならない時間帯などを探しながら演奏を楽しんでください。
ありがとうございます!
それから確認なのですが、タイルカーペットは下への音漏れを防ぐことのみを狙っていて、ユニット防音室内の床に敷き詰めるということですよね?
もし隣に音漏れしていたとしても、そちらは防げないですよね?
ニトリとかで売っている商品でよいですか?
おっしゃる通り、今回の策は下の階への遮音性を少しでも向上させるための施策です。
ユニット防音室を浮かせるほうが間違いなく効果は得られますが、現状でできることはユニット防音室内への対策だけだと思い、案を送った次第です。
コスト重視で選んでよいので、下記のような商品を探してみてください。
タイルカーペットの例
後は吹き心地はどうしても変わってしまいますが、夜間などはサイレンサーを利用するのもよいのではないでしょうか。
物理的に音圧は5〜10 dBほど下がるはずです。
クラリネットは、サイレンサーがないんですよね・・・。
たぶん音圧などはサックスや金管楽器と比べればないと思いますが、音域は広くて4オクターブ近くありますし、どの音域もそれなりによく使います。
クラリネットについて把握しておらず申し訳ございません。
管理会社と連携しながら、演奏できる時間帯を試してもらうのがよいと考えます。
わかりました。
話が逸れるのですが、例えば中古のマンションや戸建てを買ったら、防音の工事ってしていただけるのですか?
私は結婚する気は全くなく自由な一人暮らしなのですが、賃貸物件で本格的な防音は難しそうですよね?
どうせ家賃は払っていくわけで、長い目で見たら持家に防音室を作る選択もアリかもしれないと思い始めました。
分譲マンションや戸建て住宅であれば、演奏だけではなく生活してもらえるイメージのお部屋を防音室として創ることをおすすめします。
リフォームローンを組んで15年の支払いなどを選択する方もおられますので、タイミングが来た際には、改めて相談くださいませ。
ありがとうございます。
やり取りの中で、不自由のない自分の練習室が欲しいという気持ちが湧いてきました。
良い機会だと思って、他の動画も拝見しつつ、その機会のために勉強しておこうと思います。
その際はぜひお願いします。
元気が出てきました。
相談に乗っていただきありがとうございました。
~数日後~
こんばんは。
先日アドバイスいただいたユニット防音室の床補強なのですが、タイルカーペットを敷き詰めてみました。
そこで少し心配になったのが、重さの件です。
床への影響とかって大丈夫ですかね??
鉄筋コンクリートのマンションなので、危なそうな感じはないのですが・・・。
早速、取りかかられたのですね。お疲れ様でした!
人がピンポイントで歩く足からの負荷の方が重いので、ご安心くださいませ。
大丈夫です!
ありがとうございます。
安心しました。
その後、管理会社の人を挟んで階下の人と話し合いをし、防音補強した上でどうなるかの検証に立ち会ってもらえることになりました。
階下の住人は早く寝るようで、まだどうなるか分かりませんが、音漏れがゼロにならなくても時間帯さえ気をつけたら演奏を受け入れてくれそうな雰囲気です。
気になっているのですが、扉についているガラス窓と、室内の換気扇には何か対策をした方がいいでしょうか?
防音性能D-35以上を目指す場合には、ドアも換気扇も対策が必要となってきますが、現状のD-30ほどの減衰値を目指すのであれば気にしなくても大丈夫です!
そうなのですね!
ありがとうございます。
D-35の商品なのに、35 dB減衰されないというのは今回の新しい発見でした。
これが移動できる防音室の限界なんだな、と勉強になりました。
そういうことは、なかなか把握できないですもんね。
弊社でも色々と正しい防音情報を発信してはいるのですが・・・。
大手の知名度に負けないように今後も尽力していきますので、応援のほどよろしくお願いいたします!
本当に助かりました。
数字できちんと示してくださったのも、現実的なヒントをくださったのも、とてもありがたかったです。
現状はこれでなんとかなったとしても、長い目で見ると不安だらけですので、これからも勉強させていただきたいと思います。
応援もしますし、またお世話になりたいと思います。
~数日後~
こんにちは!
あれから、管理会社の人を挟んで階下の人と話し合いをし、ひとまず演奏を復活できることになりました!
夜20時くらいに試奏してみたのですが、「何も聞こえなかった」と感想をもらいました。
いざ寝る時間になったらどうなるかわからないので、しばらくは22時までにして、また何かあれば連絡をもらうことになりました。
良かったですね!!!!!!私も安心しました!
色々と大変だったと思いますが、その分成果がでて本当に良かった。
今後も安心して楽器の練習が出来る日々が続くことを祈っております!
東京に来ることがあったら是非弊社まで遊びに来てくださいね♪
まだ油断はできませんが、ひとまず落ち着きました!!
管理会社を挟んでの交渉だったので、なかなか思うように連絡が取れず、ユニット防音室を利用しなくなってから復活させるまで、まるまる1ヶ月かかりました・・・。
低い音が漏れやすいと聞いたので、バスクラ(低い音の出るクラリネット)も試奏したのですが、そちらも大丈夫だったようです。
ちゃんと補強が効いたのだと思います。
プロの助言ってすごいんだなと、心から感激しました・・・!!
東京に行くことがあったら、ぜひ楽器を持って伺いたいです。
本当にありがとうございました!!
ここまでの成果が得られたのは、oさんが住人や管理会社と真摯に向き合い、正しい情報を得るために労力を惜しまなかったからこそです。
根拠もない業者に10万円超えの費用を払わないで済んでよかったですね!
東京観光の際には、Budscene立ち寄りを是非スケジュールに入れてもらえたらと思います。
同じような悩みをもっていても正しい情報にたどり着けない方や、同じような状況で楽器演奏を辞めてしまう方もいるはずです。
そういった人たちに届くように、できれば今回の約1か月のプロジェクトを発信していただけると嬉しいです。
防音室の買取りをやっている業者の見積もりは16万円だったのですが、最終的に2万4,000円で済みました!
階下の人が協力的だったのは助かりました。
管理会社の人も、「元々何の対処もせずに演奏していたわけでもなく、さらに対応した上で交渉してくる人なんていない」と協力してくださいました。
数字で示してくださるBudsceneさんの助言が一番やる気になりました。
そのうち、レビューを書かせていただきます。
本当にありがとうございました!
oさんの真摯な行動が出した成果ですね^^
レビュー楽しみにしております♪
これからも音に悩んだら、お気軽にご連絡ください!