【ピアノスタジオの防音工事 – ご家族の理想を実現した空間作り】
今回のお客様は、北海道から東京へ移住予定のご家族で、新たな木造の戸建て住宅にピアノ演奏専用の防音室を作りたいというご相談をいただきました。特に、お子様が自由にピアノを演奏できる環境を整えることが重要でしたが、家族全員が互いに繋がりを感じながら生活できることも大切な要件として挙げられました。
ピアノは家族全員が共有する趣味であり、お子様にとっては重要な学びの場でもあります。演奏に集中しつつも、家族と一緒に過ごす時間を犠牲にしないような空間が求められました。私たちは、このご要望を実現するために、お客様と密に連絡を取り合い、遠方でのリモート打ち合わせを重ね、設計の細部にまでこだわりました。
【設計のこだわりポイント】
今回のピアノスタジオの設計において、特に注力したのが、リビングとのつながりを保ちながらも、音の漏れをしっかりと防ぐという点です。このため、リビングと防音室を仕切る部分には、大きな二重ガラスのサッシを採用しました。このサッシによって、リビングにいる家族がピアノスタジオの中を視覚的に確認できるだけでなく、外部の音がスタジオ内に入ってこないようになっています。結果として、お子様は家族の存在を感じながら、ピアノに集中することができるようになりました。勿論、ガラスサッシを出入り口に採用するという事は、防音ドアと比較した際には遮音性能が低下してしまいます。しかし、建物外部に対しての遮音性能への変化は無いと判断をし、お客様には家の中には防音ドアを採用するよりも防音サッシの方が音は聴こえますが、一番気にされている近隣住居に対しての遮音性能には変化が無い事をご理解いただいた上で防音サッシを採用しています。出入り口をガラスサッシにするので、リビングから空間全体が広がりを感じられるようにし、家族全員の生活に溶け込むデザインを目指しました。
内装デザインについては兎に角シンプルに!お子様たちが将来邸にこんなお部屋にしたいと思った際に、色味を加えていけるようホワイトのみでの仕上げとしています。壁紙、天井板、吸音パネルをホワイトで整え、お子様たちが貼りたい絵やポスターなどで今後色味が入ってご家族ならではの防音室が完成していくと考えています。
【遮音性能と快適性の両立】
防音室の建物外部に対しての遮音性能は、ピアノを深夜演奏しても近隣住居内で聴こえる事が無いよう設計されています。都内からは少し郊外の住宅地の為、建物外部の環境騒音が低い事で、建物内の環境騒音も低くなっている為、安心して演奏をするにはSTUDIO⇔建物外部に対してD-55以上の減衰性能が必要。
建物内部に対しては、STUDIOでの演奏音がTV視聴やご兄弟の勉強中に気にならなければ問題ないという事で、STUDIO⇔建物内部に対してD-30以上の減衰性能を設定しました。
これにより、家族全員が配慮の元でそれぞれの時間を快適に過ごすことができ、演奏を楽しむお子様と、リビングでリラックスする家族が共存できる空間となっています。
【隠し部屋のアイデア】
さらに、ピアノスタジオ内には、当初はクローゼットとして利用予定だったスペースを、音楽鑑賞や楽器演奏のための隠し部屋のような空間に変更しました。この隠れたスペースは、静かに音楽を楽しむための場所として活用されており、家族の誰もが気軽に使える空間となっています。このような予想外のデザイン変更も、お客様との打ち合わせを重ねる中で生まれた柔軟なアイデアです。通常クローゼットにはコンセントやTVアンテナの同軸はレイアウトされていませんが、防音工事の際にオーディオに利用できるコンセント、TVの視聴も出来るアンテナ同軸を増設して、隠し部屋の価値を高めています。
隠し部屋には消音換気システムが目立たずに施工されています。
リビング側のサッシ面だけでは消音ダクトの距離が不足していた為、給気はリビングからスタジオへ。排気は隠し部屋からキッチンへ。という経路を創り
演奏に集中して数時間過ごしてしまっても、防音室内で仮眠を取ってしまっても、安心できる換気量を確保しています。
このプロジェクトの最大の特徴は、ご家族のライフスタイルに合わせた柔軟な設計と、家族のつながりを保ちながらもお子様が演奏に集中できる空間を実現した点にあります。単なる防音室ではなく、家族が日々の生活を共にしながら、それぞれの活動を楽しむことができる空間としての役割を果たしています。ピアノスタジオは、家族の交流の場としても機能しつつ、音楽を楽しむことができる特別な空間として完成しました。