ドラムスタジオ 防音室
【家を建てる土地を探し始める前に防音室の相談に】
はじめてご夫婦にお会いしたのは、まだ家を建てる土地も、建物のメーカーも決まっていない段階でした。ドラムスタジオを希望の方は、建物のメーカーが決まっていない中で、なるべく早くにドラム向け防音室について知っていただく必要があります。
なぜ、早くにお越しいただいた方がいいかというと、ドラム防音室の床は防振コンクリートを打設しないと満足な遮音性能が確保できないからです。
そのため、ご夫婦との出会いは非常にいいタイミングでした。
間取り図もない状態なので、ご要望の広さをある程度定めて、防音室の資料作成と概算見積書を提出し、ご予算の範囲内で実現できる防音室を模索していきました。
ご夫婦は防音室に関しての知見もあったため、注意点を意識しながらお打ち合わせをすることができました。
まず、75dB仕様だと予算がオーバーするので、65dB仕様でバスドラムの口径を小さくすること。そして、防音室は近隣の住居に隣接しないようにレイアウトすることです。
もうひとつ重要だったのが土地の条件でした。
閑静な住宅街で隣接する住居内で生のドラム演奏を聴こえないようにするには、75dB以上の減衰仕様が必要です。
しかし、今回は65dB減衰仕様で進めていくため、土地の条件が重要でした。
ドラム防音室に近隣住居が隣接しない土地は簡単に見つかるわけではありません。
しかし、ご夫婦はバス通りに面し、近隣も店舗が立ち並ぶという土地と巡り合いました。
「この条件の土地はいかがでしょうか?」とバドシーンに連絡が入った際に、速攻で「その土地の条件はとても良いです!」と返答しました。
【建築メーカーとの打ち合わせ】
建物の完成時に防音室を完成させるためには、建物と同時進行で防音室の打合せを進める必要がありました。
そのため、建築メーカーとの打ち合わせでは、「ここまでは防音室に必要な建築工事の区分、ここからは防音室工事の区分。」というように、防音室の細かい打合せを重ねていきました。
土地の条件を確認できた時点で、「ドアは一枚ドアで行きましょう!」と言い切れる間取りと近隣環境でしたので、建物に関して、わざわざ防音の意識を高めていただいた箇所はありませんでした。
建築メーカーさんは防音室のメーカーと関わって建物を創った事が無かったとのことでしたが、基礎部分の納まり、ドア部分の納まり、給排気ダクトの納まり、など図面化していれば
現場作業で応えてくれるメーカーさんでした。
【バス通りの交通量が防音室には最高!しかし、施工は困難に】
土地がドラムスタジオとしての遮音性能を落とせる条件となりましたが、工事に関してはとても大変な部分もありました。
資材搬入くらいであれば、スムーズに行えるのですが、床の防振コンクリート打設にはミキサー車やポンプ車を駐車できるよう道路利用許可を取ったとしても大渋滞の元となる事を認識していました。
交通量が減った夜のうちにコンクリートや砂を敷地内に搬入し、その場でコンクリートを練るという選択をしました。
コンクリートを練る職人さん、水を運ぶ職人さん、コンクリートを運ぶ職人さん、左官をしながらコンクリートを均していく職人さん、沢山の職人さんを動員して防振のコンクリート打設を実施しました。
「職人さんのサポートをせねば!」とコンクリートの運びに入ってみましたが、ペースを乱してしまうので数杯を運んだだけにとどまり、いつの間にかサポートは遠くからの応援に変わってしまいました。
【機材セッティング完了後にお邪魔すると?】
演奏配信用のレイアウトや壁掛けスピーカーの設置なども組み込んでいるお部屋でしたので、ある程度の機材は把握できていました。
しかし、お客様自体が3Dプリンターをお持ちだったらしく、プリンターを活用し、ドラムの細かいナットや、スタンドインシュレーターなどの細かいパーツはご自身で設計して創られていました。
3Dプリンターのノイズや振動も「以前の住まいでは気になってなかなか使えていなかった。」との事でしたが、ドラム向けの防振床があるので今は自由に使えるようになってとおっしゃっておりました。
各メーカーで売れ筋の商品をオマージュしてご自身の3Dプリンターで創る事で、ちょっとしたサイズの変更なども可能だそうです。「自分で使う分を創るには非常に良いなぁ」と、ちょっとだけ羨ましく感じました。
生のドラム音ですが、建物外部に対してはもちろん問題ありませんでした。
しかし、建物内の書斎に聴こえてしまう音量は気にはなったようですが、「リモート会議のマイクには音は入らないし、書斎で音楽をかければ気にならないので大丈夫!」と奥様にもご満足いただけました。
性能仕様をワンランク下げた生ドラムのスタジオは私たちも緊張感がありましたが、
立地条件から逆算すれば問題無いなと改めて実感できました。