「だんぼっち」が進化した?!防音ブースの開発過程をご紹介!
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
ただ今、福島県に来ています。
なぜかというと、神田産業株式会社=「だんぼっち」の製造会社さんにお邪魔しているんです。
「だんぼっち」はゲーム配信や楽器練習にも活躍する、軽さが売りの組み立て式ダンボール製防音ブースです。
今日はこのだんぼっち新バージョンの遮音性能を測りにはるばるやって来ました。
まだ改良中で色々と試行錯誤を重ねている段階なのですが、開発経過を皆さまにご報告いたします。
ご覧ください。
何と!新バージョンはマトリョーシカ式なんです。
3重でも軽いんですよ♪
総質量でも30 kgいかないそうです。
目次
遮音性能の測定
では早速、だんぼっちマトリョーシカ(仮)の性能測定に入っていきたいと思います。
ブース内と外側で、遮音性能にどれだけ差があるかを測定していきます。
測定方法
測定方法は、だんぼっち内でピンクノイズを発生させて、その音量をだんぼっち内外で測定し、音量差(室間音圧レベル差)から算出します。
測定方法を表1. に示します。
表1. 測定方法
| 測定音 | ピンクノイズ |
| 測定音域 | 125、250、500、1,000、2,000 Hzの5オクターブバンド |
| 騒音計 | 精密騒音計、C特性 |
測定結果
だんぼっちマトリョーシカ(仮)の測定結果
だんぼっちマトリョーシカ(仮)の測定結果は表1.のようになりました。
表1. だんぼっちマトリョーシカ(仮)の遮音性能
| 音域 [Hz] |
① ブース内 [dB] |
② ブース外 (正面) [dB] |
③ ブース外 (背面) [dB] |
④ ブース外(正面)の遮音性能(①-②) [dB] |
⑤ ブース外(背面)の遮音性能(①-③) [dB] |
| 125 | 約102 | 約88 | 約83 | 14 | 20 |
| 250 | 約90 | 約80 | 約74 | 12 | 16 |
| 500 | 約90 | 約64 | 約64 | 25 | 26 |
| 1,000 | 約87 | 約60 | 約66 | 28 | 22 |
| 2,000 | 約84 | 約60 | 約50 | 34 | 34 |
高音域での結果が良好ですね!
組み立て式防音ブースで25 dB減衰(500 Hzの音域)できる商品は中々ありません。大体20 dB減衰以下なんですよね。
1,000 Hzで28 dB減衰は快挙ですよ。
なお、背面も測定しているのは、正面ドアが一番音が漏れやすいので、他の面と比較するためです。
表1の結果④⑤を比較してみると、次のようなことがわかります。
- 低音域(125 Hz、250 Hz)では、背面の方が5 dBほど遮音性能が高い。
- 500 dBでは同じ程度
- 高音域(1,000 Hz以上)では、むしろ背面の方が6 dBほど遮音性能が低いか、同じ程度。
これはつまり、「ドア部分から低音が漏れやすい」と読み取れます。
従って、だんぼっちマトリョーシカ(仮)のドアを改良すれば、もっと完成度が高くなるといえます。
従来だんぼっちの測定結果
従来だんぼっちの方も遮音性能を測定してみましょう。
表2. 従来だんぼっちの遮音性能
| 音域 [Hz] |
① ブース内 [dB] |
② ブース外 (正面) [dB] |
③ ブース外(正面)の遮音性能(①-②) [dB] |
| 125 | 約104 | 約88 | 17 |
| 250 | 約87 | 約78 | 8 |
| 500 | 約91 | 約74 | 18 |
| 1,000 | 約85 | 約63 | 20 |
| 2,000 | 約83 | 約63 | 19 |
表1-④と表2-③の結果を比較してみると、次のようなことがわかります。
- 低音域(125 Hz、250 Hz)では、遮音性能はあまり変わらない。
- 中~高音域(500 Hz以上)では、だんぼっちマトリョーシカ(仮)の方が7~15 dBほど遮音性能が高い。
これは、空気層が低音域にはあまり効かず、高音域には効いていることを表しています。
声に対してはかなり効果を期待できますね。
特に配信やボーカルなどをしたい女性のニーズにマッチしてくるかと思います。
透過損失値なら、もっと高い値が?
だんぼっちマトリョーシカ(仮)の遮音性能は、実測値で表1くらいなら透過損失値ではもっと高い数値がでるでしょう。
もしかして500 Hzで30 dB減衰くらい行っているかもかもしれません。
それなのに、透過損失値ではなく、あえて実測値を公表する神田産業さんの姿勢に、自分たちの仕事への矜持(きょうじ)を感じました。
声や音楽に対して
だんぼっちの用途はゲーム実況やボーカルが多いので、一般的な話し声や音楽でも検証してみましょう。
私の声や音楽を60~65 dBくらいの音量にして、測定していきます。
60~65 dBというのは、特に気合いをいれたり小声だったりしない、普通の話し声程度の音量です。
家でのテレビの音などもこれぐらいのはずです。
声や音楽はピンクノイズと違って一定の音量ではないので音量差にバラつきがありますが、ほぼピンクノイズ時と同じ結果となりました。
騒音計の画面に表示されている低音域の音は、環境騒音や生活音のノイズです。
人間の声域ではあまり低音域はでないはずなのですが、スピーカーから音を流すと低音域のノイズがカウントされてしまうんですよね。
神田産業の開発担当者・石澤さんへインタビュー
ここからはインタビュータイムです。
開発に携わっている神田産業の石澤さんに色々と伺ってみましょう。
よろしくお願いいたします。
質問1「どういった経緯でだんぼっちマトリョーシカ(仮)を作ることになったんですか?」
石澤さん「実は並木さんのYouTubeチャンネルを見まして。我々のだんぼっちの性能を評価していただいたYouTube動画なんですけど。【だんぼっちの性能検証!】」
並木「初めてご連絡いただいた時には、お怒りの声かと焦りました💦(笑)」
石澤さん「我々の製品の性能をどうやって高めたらいいのか、というご相談をさせていただきまして。それから色々なアイディアをいただいて、このマトリョーシカ(仮)をやってみようかとなりました。」
並木「弊社のオフィスにも何度もいらしていただいたんですよね。マトリョーシカの案をだしたら、何と実行していただいて。性能を高めるには、『複構造にする』か『重さをかける』かになりますが、重さをかけるとだんぼっちのよさがドンドン消えていくんですよ。軽くて組み立てやすい・カスタマイズしやすいのがだんぼっちの利点なので。そのため、防音層を何層も設けるマトリョーシカ式を提案いたしました。」
質問2「だんぼっちマトリョーシカ(仮)を作ってみて、いかがでしたか?」
石澤さん「設計的には特に難しいところはありませんでした。」
並木「作り始めてからできあがるまでが、すごく早かったんですよ。できたというご連絡をいただいてから、中々訪れることができず・・・すみませんでした。」
質問3「推奨する使い方はありますか?」
石澤さん「だんぼっちは『高音域に対してそれなりの防音性能を、手ごろなお値段で提供する』というコンセプトで制作しています。従来のだんぼっちが声に特化した製品なので、だんぼっちマトリョーシカ(仮)もボーカルやゲーム実況などに使っていただければと思います。
ダンボールの地をだしているのも皆さんがカスタマイズしやすくするためなので、外観もどんどんアレンジしていただいて。」
並木「従来のだんぼっちは、吸音材を貼るにしてもフレームを使うしかなかったんですよ。でも今回のだんぼっちマトリョーシカ(仮)は、層と層の間に隙間があるので、後から吸音材を詰めたりできるんですよね。本や布のように身の回りのものを差し込むことで、性能を高めていくことも可能だと思います。」
質問4「これからの課題や改善点はありますか?」
石澤さん「ドアの構造ですね。」
並木「これね、『閉められないじゃないか!』って突っ込みが入るかと思いますが、そのとおりです!(笑)中に入ったら閉められないんです。そこは、これから詰めていきます。ドア部のくり抜きや、内開きへの加工を目指すと費用アップになるので、恐らく3枚のドアを繋ぐような処理になるのではないかと現段階では予想しています。コストとの戦いになるので、バネ蝶番など利用して、安く手軽に閉められる方法を模索したいと考えています。」
石澤さん「あとは、気密性の問題です。従来のだんぼっちはパッキンを回して気密性を向上させているのですが、だんぼっちマトリョーシカ(仮)はまだそこまで設計的な部分にいっていません。そういったところを突き詰められれば、もっともっと製品的な完成度が上がってくると思います。」
並木「だんぼっちマトリョーシカ(仮)の中は従来のだんぼっちよりも暑いので、暑さ対策も必要ですよね。逆に冬はよいかもしれません(笑)天井に穴を開けられる素材なので、そこから換気や温度調節ができるようなシステムを導入できますね。消音ダクトの使い方などは私たちも発信していきたいと思っています。」
石澤さん「ドアが自重に負けて左側が下がってきてしまうのも、隙間が空く原因になっています。」
並木「遮音性能に関しては、位置がズレているからか、この隙間はあまり影響していないかもしれません。気密が低いと高音が漏れやすいのですが、測定結果をみても高音域は正面と背面であまり差がないので。もちろん隙間があると外観上は見栄えが悪くなってしまいますが。」
質問5「だんぼっちマトリョーシカ(仮)の利点を教えてください。」
石澤さん「やはり軽いことですね。軽量化にこだわったので、持ち運びや組み立て、設置が楽々できます。」
並木「木造の賃貸物件でも置けますしね。私たちが発信しているDIY防音ブースなどは重くて床が抜けてしまうので、木造の建物2階以上には置けないんですよ。それを考えると、かなり重宝します。」
質問6「他にアピールポイントをお願いします。」
石澤さん「今、オリジナルデザインをプリントできる『だんぼっちデザイン』の印刷サービスも行っています。配信用のアバターやオリジナルキャラクター、企業様のロゴなども印刷できますので、是非ホームページでご確認いただければと思います。【だんぼっち】」
並木「印刷は全面にできるんですか?」
石澤さん「両側面になります。」
並木「私の推しているTWICEのプリントなんかも可能ですか?(笑)」
石澤さん「残念ながら、著作権に抵触しない範囲になります。ご自身で描いている絵とかならOKです。」
並木「なるほど!世界に1つしかない自分だけのだんぼっちにカスタマイズできるんですね。」
石澤さん「外観だけでなく性能面の方でも、石膏ボードや吸音材などをマトリョーシカ同士の隙間に詰めたり貼ったりと、カスタマイズしやすい材料と構造になっています。」
並木「自分で好みの仕様にカスタマイズできるのも、だんぼっちの大きな魅力ですよね。」
工場見学
それでは、最後に工場ツアーに出発です♪
工場内には従業員さんの休憩室用のだんぼっちが設置されています。
夏場は工場内が暑いため、冷風機で中に冷風を送っているそうです。
工場内まで見学させていただいて、石澤さんをはじめ神田産業株式会社の皆さん、本当にありがとうございました!
まとめ
今回は、だんぼっちシリーズの新バージョン「だんぼっちマトリョーシカ(仮)」の遮音性能や特徴についてご紹介しました。
だんぼっちには
- とにかく軽い(持ち運び・組み立て・設置が楽)
- お手頃価格
- 高音域の声の防音に活躍
・従来だんぼっち:500 Hz以上で18~20 dBほど
・だんぼっちマトリョーシカ(仮):500 Hz以上で25~34 dBほど - カスタマイズしやすく、オリジナル防音ブースにできる
という利点があります。
皆さまの方でも「こうしたらもっと使いやすくなるかも!」といったご意見がありましたら、神田産業さんや我々にどしどしメッセージを送ってください。
ニーズに対応して柔軟に取り入れていきたいと思います。
そして、だんぼっちマトリョーシカ(仮)の市場デビューを応援していただければ嬉しいです。
音について悩んでいること・迷っていることなどがありましたら、是非バドシーンにご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. だんぼっちが3重になっているのに、防音性能は3倍にならないのですか?
A. 残念ながら、なりません。音は防音材の厚さや密度が大きい(重さが重い)ほど遮られて音量が小さくなりますが、単純な比例関係にあるわけではありません。
計算では、現状から音量を5 dB下げるには、今まで使っていた防音材の重さと同じくらいの重さが新たに必要になります。
Q. だんぼっちが3重になっているなら、お値段も3倍なのですか?
A. まだ市場デビューしていないので正確には決まっていませんが、企業努力で頑張ってくれるようです。
材料自体は1枚ものから切り出しているので、大きさに関わらず、材料費は1枚分のコストで抑えられるそうです。大きくても余分に捨てる部分が少なくなるだけなので、材料費自体はあまりかわらない、とのことでした。
ただし手間が3倍かかっているので、その分は価格に影響するかと思われます。
Q. 組み立ては1人でもできるのですか?
A. 安全のため2人以上での組み立てを推奨しています。
Q. 換気面と防火性が気になります。
A. 換気は通常のだんぼっちと同等のため、改善策を模索していきます。
防火性に関しては、ダンボールですのでほぼないとお考えください。
Q. ブースの床が全部地面に接しているのを、4つ角にゴムを付けて浮き構造にすれば振動を抑えられませんか?
A. そうしたい気持ちはやまやまなのですが、ダンボール製なので4つ角だけ高さがあると、真ん中に座った時に床がたわんで落ちてしまうんです。
振動対策はタイルカーペットのような敷き詰めるものが効果的でしょう。
Q. 内側のだんぼっちを有孔ボード化して吸音効果を期待できないでしょうか? 穴をあける手間はあるものの材料費はかからないので。
A. 確かに吸音効果は向上しますが、その方法だと漏れる音量には変化がないので防音性能は上がらないのです。
費用対効果を考えると、パネルへの加工にお金をかけるのではなく、 表面に吸音材を貼る方がよいのではないかと考えます。
Q. オプションで、大・中・小の部屋それぞれのサイズの防音マットを追加できると、低音域の制御ができて嬉しいです。
A. ご要望をありがとうございます。 低音域の遮音性能の向上はコストに直結するので、皆さまの用途に相応しい遮音性能が確保できるように模索していくつもりです!
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