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防音室の正しい性能測定

更新日:

皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。

皆さんは試験お好きですか?
私は好きです♪
ただし、手掛けた防音室の試験(性能保証)に限ってですが(^^;)

性能が証明できた瞬間って、達成感があって本当に気持ち良いんですよ♪

今回は、性能保証の意義や正しい測定のやり方について解説していきます。

性能測定とは

性能測定は、完成した防音室にきちんと希望した性能が備わっているかを判断するための工程です。
防音室が完成したことをお客様に証明するための最終試験に当たります。

具体的には、防音室の効果がどれだけあるか、音が実際にどのくらい減衰しているかを機器を使って測定します。
感覚的に終わらせるのではなく、試験の点数と同じように具体的な数値で性能を確認していきます。

性能測定の結果は、1つひとつ丁寧に仕上げた防音室の成績・評価です。
常に丁寧に設計、施工しているからこそ性能測定は私にとっていつも楽しいものとなるのです。

性能測定に必要なもの

防音室の性能測定には次の4つのアイテムが必要です。

  • ノイズ発生器
  • 騒音計
  • スピーカー(電気信号を音に変える装置)
  • アンプ(増幅装置)

ノイズ発生器は、周波数ごとに連続してピンクノイズを発生させられるものを使います。

実際のピンクノイズはこのような音です。
【防音室や防音の、音漏れ確認や防音DIYの目安の簡易測定に利用できる【ピンクノイズ】】

騒音計は、発生させた周波数ごとにオクターブバンドで測定できるものでなければいけません。

従って、価格が安く一般的に出回っている騒音計「オールパス」は測定に適しません
オールパスは全周波数領域をカバーし、低音から高音まで全ての周波数の音を一緒くたに表示してしまいます。
そのため、どの周波数の音が防ぐことができていて、どの周波数の音が漏れてしまっているのかわからず、原因究明ができないのです。
もし性能確保がうまくいかなかった場合に、設計や重さ・防振・気密などの施工法や材料のうち、何がまずかったのか一切判明しません。
せっかく性能測定しても、改善・修正の手掛かりがつかめない結果に終
わってしまいます。

性能測定の流れ

性能測定の流れは次のようになります。

  1. 防音室の中でノイズ発生器、スピーカー、アンプを使いピンクノイズを連続音で発生させる
  2. 防音室の外から騒音計を使い音圧レベルを読み取る
  3. 音が防音室を透過する前と後でどのくらい小さくなっているのかを評価
  4. D値(壁に対する遮音性能の実測値)が設計通りであるかを確認
性能測定

 

皆さまも防音室を作ったら、是非最終段階で性能測定に立ち会ってみてください。
そしてこの過程を楽しんでいただければと思います。

5種類のオクターブバンドで測定

音は高さによって防音のしやすさや効果のある防音方法が変わります。

そのため、ある周波数域だけ防音性能をクリアしても他の周波数域では音漏れしてしまっている・・・ということが起こり得ます。
従って、人間の聞こえる音域(周波数20~20,000 Hz程度)全域を満遍なくカバーできるように、オクターブごとに数値が測れる騒音計が必須となります。

Budscene騒音計

Budsceneで使用しているリオン社の精密騒音計

弊社では以下の規格に従い、聞こえる音の高さを変えて中心周波数が125 Hz、250 Hz、500 Hz、1,000Hz、2,000 Hzの5つのオクターブバンドでの性能測定を実施しています。

<性能測定に関する規格>

  • JIS A 1417(2000年):建築物の空気音遮断性能の測定方法
  • JIS A 1419-1(2000年):建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法
  • 日本建築学会推奨測定基準:建築物の現場における音圧レベル差の測定方法

性能測定する防音会社を選ぼう

複数のオクターブバンドで性能測定しない業者は、防音会社としてありえません。インチキといっても過言ではないでしょう。

見積もりを取る際にどのように性能測定をするかを聞いてみると、その防音会社が信頼できるかの目安になります。
「ピンクノイズを周波数ごとに発生させてオクターブバンドでの性能測定を行います。」と返答がなかったらアウトです。

知識・情報・ノウハウが足りていないハウスメーカーや工務店などでは、防音室が完成した際に「音を室内で聞くとこれくらい、外で聞くとこれくらい。いい部屋ができましたね。」と口頭や感覚で終わらせる場合があります。

するといざ防音室を使い始めた時に性能が足りず、トラブルにつながることがあります。

こういったことを防ぐためにも、防音室を検討する際には是非信頼できる業者を見極めてください。

私たちBudsceneでは、性能測定の際にお客様に立ち会っていただき、結果も書類として提出いたしております。試験の答え合わせですね。
確認・保証まで終わって初めて完成とみなし引き渡します
ので、弊社へご依頼の際は安心してご契約いただけます。

まとめ

性能保証は防音工事の成果を確認する試験のようなものです。

その試験は、5つのオクターブバンドの項目全てをクリアしないと合格できませんが、結果発表が楽しみです♪」という姿勢で取り組む防音会社を選びましょう。

私たちBudsceneは様々な防音情報を発信しています。
正しい知識を得て防音室作りの参考にしていただければと思いま
す。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. オクターブバンドって何ですか?
A. まず、オクターブについて説明します。
1オクターブとは、低音から高音までの周波数が2倍になる音域のことです。
わかりやすいように、ピアノの鍵盤で考えてみます。
キリよくあらわせる「ラ」の音を例に挙げると、ピアノの真ん中の「ド」を挟んで下の「ラ」は220 Hz、上の「ラ」は440 Hzで周波数が2倍になっています。

オクターブバンドとは、ある周波数を中心にして、そこから上下で周波数が2倍になるような音域のことです。
性能測定で採用している中心周波数(125 Hz、250 Hz、500 Hz、1,000Hz、2,000 Hz)はそれぞれが「シ」と「ド」の間ほどに位置します。簡単にするために、各中心周波数を大よそ「ド」とみなすと測定範囲は次のようになります。

<オクターブバンドの中心周波数>

  • 125 Hz →  中央「ド」の2つ下のファ#から1つ下のファ#までの音域(92.5 Hz~185.0 Hz)
  • 250 Hz → 中央「ド」の1つ下のファ#から1つ上のファ#までの音域(185.0 Hz~370.0 Hz)
  • 500 Hz → 中央「ド」の1つ上のファ#から2つ上のファ#までの音域(370.0 Hz~740.0 Hz)
  • 1000Hz → 中央「ド」の2つ上のファ#から3つ上のファ#までの音域(740.0 Hz~1480.0 Hz)
  • 2000 Hz → 中央「ド」の3つ上のファ#から4つ上のファ#までの音域(1480.0 Hz~2960.0 Hz)
ピアノ鍵盤オクターブ

従って、5つのオクターブバンドを測定することで、人間の可聴範囲(20~20,000 Hz)の中で防音しにくい低音域をほぼカバーすることができます

Q. ピンクノイズって何ですか?
A. 音の高さと強さが反比例するノイズの一種です。
ノイズとは波形に規則性が無く無秩序な形になっている音のことです。
ピンクノイズには、ザーと聞こえるような滝の音や強い雨の音などが該当します。

ノイズは他にも、音の高さと強さの関係性によって様々に分類されています。
一部を例に挙げると

  • ホワイトノイズ・・・どの範囲の音域でも強さが変わらないノイズ
  • ブルーノイズ・・・音の高さと強さが比例するノイズ
  • パープルノイズ・・・ブルーノイズの性質に近く、もっと高音域に偏っているノイズ
  • ブラウニアンノイズ・・・ピンクノイズの性質に近く、もっと低音域に偏っているノイズ

というようなものがあります。
これらのノイズを光の周波数成分の特徴に当てはめると各色に相当するので、それぞれの名称がつきました。

同じ1オクターブでも低音域と高音域では周波数幅が異なります。
従って、そのまま測定すると、高音域の方がエネルギーが高く測定されてしまいます。
それを補正するために、様々なノイズの中でも低音域でエネルギーが強い特徴をもつピンクノイズを使用します。

Q. 何故、低い音は高い音より防音しにくいのですか?
A. 音を何かの材料で遮る際に、高い音ほど軽い材料ですみ低い音ほど重さが必要になります。
現実的に防音室を創る際には価格的にも、部屋の面積的にも重さを確保することが難しいため、低音の方が防音しにくいのです。

詳しくは、
【防音室に最も重要な「重さ」と「防振」の話】
をご参照ください。

また高音になるほど直進性があり回折が少ないのに対し、低音はあらゆる方向に伝わるという面でも、低音の方が防音しにくくなります。

関連動画

【防音室工事でオクターブバンドで性能測定をしない業者は詐欺です!プロのやり方全てお話します!】

【防音アドバイザー 並木勇一チャンネル】

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【防音室に最も重要な「重さ」と「防振」の話】

並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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