意外と音はだだ漏れ?日本の住宅の遮音性能についてわかりやすく数値で解説!
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
皆さんは「壁ドン」というと、どういう場面を連想しますか?
私は隣同士の部屋で、騒音に迷惑している側がうるさい側の壁に「ドン!!!」と叩いてうったえている状況をイメージするのですが・・・。
どうも少女漫画界隈では壁ドンとはトキメキのワンシーンらしいですよ?!
さて、今回はそんな壁ドン(防音業界バージョン)をされてしまう状況を防ぐために、一般的な住環境の遮音性能がどのくらいあるのかをお伝えしていきます。
目次
一般的な住宅の遮音性能
実は、一般的な戸建て住宅や賃貸の集合住宅の遮音性能はそれほど高くありません。
ゲームやボイスチャット、友人たちとの宅飲みなどを気兼ねなく楽しむにはなかなか難しい環境といえます。
そのため、隣人に騒音で迷惑をかけないためには、住んでいる住居の遮音性能と自分が出す音の音量を把握しておく必要があります。
表1.に一般的な住宅の遮音性能と話し声(約60 dB)の聞こえ方を示すので、自分の声が迷惑になっていないか心配な場合は是非判断の目安にしてみてください。
なお、音が生じていても環境騒音(日常生活で自然に耳に入る雑音全般)に紛らせると、必ずしも0 dBでなくても感知できなかったり気にならなかったりします。そのため表1. では15 dB以下を「聞こえることはない」としました。
表1. 一般的な住宅の遮音性能
状況 | 遮音性能 [dB] |
一般的な話し声(60 dBほど) の聞こえ方[dB] |
|||
戸建て住宅 | 同じ
建物内 |
隣 | 20~25 | 35~40 | 声を少し抑えた時の音量程度で、内容がはっきりわかるくらい |
上下階 | 35~40 | 20~25 | 聞こえることはほぼない | ||
建物の外 | 30~35 | 25~30 | ささやき声が微かに聞こえる程度 | ||
近隣の家 | 60~70 | – | 聞こえることはない | ||
賃貸の集合住宅 | 鉄筋 コンクリート造 |
隣 | 45~50 | 10~15 | 聞こえることはない |
上下階 | 45~60 | ~15 | 聞こえることはない | ||
鉄筋 コンクリート 造以外 |
隣 (造作) |
30~35 | 25~30 | ささやき声が微かに聞こえる程度 | |
上下階 (木造・鉄骨造) |
35~40 | 20~25 | 聞こえることはほぼない |
普通程度の話し声でも聞こえる可能性を気にしなければならないのは、戸建て住宅・集合住宅どちらの場合でも隣室に対してです。また道路や隣家の庭が近い場合は、時間帯や状況によって外に出ている人へも聞こえるかもしれません。鉄筋コンクリート造であれば集合住宅でも話し声が聞こえることはないでしょう。
もちろん、住宅メーカーによっても数値は変わってくるので、あくまで一般的な傾向として参考にしていただければと思います。
戸建て住宅と集合住宅の遮音性能の違い
表1.を見てみると、戸建て住宅でも集合住宅でも「上下階」の遮音性能は35~40 dBほどです。
また、戸建て住宅の「建物の外」への遮音性能と集合住宅の「隣」への遮音性能も30~35 dBほどと同程度です。
これはつまり”一戸”としての遮音性能は、戸建て住宅でも集合住宅でも変わらないように造られているということです。
しかし、戸建て住宅と集合住宅では、同じ音量を出しても隣居への聞こえ方が違います。
それは音が相手に届くまでの距離(空気層の厚さ)や障害物(壁)の数が違うからです。
図1.のように、同じ音量でピアノを弾いた場合を考えてみましょう。
戸建て住宅では、自宅の壁の遮音性能Aにプラスして、相手の家の壁の遮音性能Cや、距離で減衰される音量分Bも加えて考えることができます。
そのため、戸建て住宅・集合住宅それぞれの遮音性能は、
- 戸建て住宅の遮音性能 = A+B+C
A:自宅の壁の遮音性能
B:相手の家との間の空気層で減衰される音量
C:相手の家の壁の遮音性能 - 集合住宅の遮音性能=A
A:自室の壁(=相手の部屋の壁)の遮音性能
となり、戸建て住宅の方が遮音性能が高くなります。
図1. 戸建て住宅と集合住宅の聞こえ方の違い
戸建て住宅の遮音性能
戸建て住宅の場合、音で迷惑をかけたくない相手が同じ建物(自宅)内にいるのか近隣の別の建物(隣家)に住んでいるのかで遮音性能の考え方が変わります。
図2.に一般的な戸建て住宅における自宅内と隣家に対する遮音性能を示します。
図2. 戸建て住宅における自宅内と隣家に対する遮音性能
同じ建物(自宅)内の遮音性能
図2.で同居の家族やハウスメイトに対して音を防ぎたい場合を想定しましょう。
隣室への遮音性能は20~25 dB減衰ほどです。
一般的な話し声が、少し声を抑えた時の音量、ひそひそ話より少し大きいくらいの音量に聞こえます。
このくらいだと内容もはっきりわかるでしょう。
上下階の遮音性能は35~40 dB減衰ほどです。
一般的な話し声は、ひそひそ話の音量ぐらいまで低下し、聞こえることはほぼないと思われます。
別の建物(隣家)内への遮音性能
図2.でご近所さんに対して音を防ぎたい場合を想定しましょう。
建物の内外での遮音性能は30~35 dB減衰ほどです。
そのため、もし相手が外にいればこちらの声が聞こえるかもしれません。
しかし、相手が自宅にいれば相手の家の遮音性能分も合わせて60~70 dB減衰できると考えられます。
さらに家と家の間の空気層でも音は減衰します。
従って、一般的な話し声の音量であれば隣の住宅内にまでは届きません。
賃貸の集合住宅
集合住宅は木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの材料・構造により遮音性能が違ってきます。
図3.にコンクリート造とそれ以外の造りの遮音性能を示します。
図3. 集合住宅の遮音性能
隣室への遮音性能は、隣室との壁がコンクリート造か造作(石膏ボードを利用した後付けの間仕切り)かで決まります。
コンクリート造であれば遮音性能は45~50 dB減衰ほどであり、一般的な話し声程度であれば聞こえることはないでしょう。
しかし賃貸の集合住宅は造作の間仕切りであることが多く、その場合、遮音性能は30~35 dB減衰ほどです。そうすると話し声も微かに聞こえてしまい、深夜になるとさらにシーンとして音が目立つので、テレビの音なども配慮が必要になります。
上下階の遮音性能は、コンクリート造であれば古いマンションで45~50 dB減衰ほど、昨今の頑健な造りのマンションで50~60 dB減衰ほどです。どちらにしても話し声が聞こえることはまずないといえます。
木造・鉄骨造の場合でも35~40 dB減衰ほどはあるのであまり心配は要らないでしょう。
集合住宅の注意点
集合住宅を選ぶ際には一つ、注意していただきたいことがあります。
それは、鉄筋コンクリート造とされている建物でも、隣室との間の壁がコンクリート造とは限らない(造作である場合もあり得る)ということです。
実際に、鉄骨造の賃貸物件を管理しているオーナーさんから「隣同士の声が聞こえすぎるので改善してほしい」という依頼を受けたこともあります。
その件に関しての動画はこちらです。
【建築会社が工事しても防音性が向上しない!賃貸物件オーナーからの依頼!「入居者さん同士のプライバシーを守るための防音性を絶対確保したい!」を実現してきました!】
【【賃貸物件】騒音で住民が退去してしまう!裁判も辞さないオーナーからの相談にアドバイス!】
興味がありましたら是非ご覧いただければと思います。
このような例は多々あるので、集合住宅の物件を選ぶ際は鉄筋コンクリート造と謳(うた)われていても、隣室との間の壁がどんな仕様になっているのか確認した方が確実です。
まとめ
今回は、一般的な戸建て住宅や賃貸の集合住宅の遮音性能について数値で解説しました。
防音を意識して計画的に対策した物件以外は、意外と遮音性に関して甘いと感じた方も多いのではないでしょうか。
友人たちと自宅で盛り上がる、ボイスチャットやゲームに熱中する・・・そんな時はついリアクションが大きくなったり、無意識に声を張り上げていたりするものです。
自分で思っているよりもずっと音量が出ていて、もしかして気がつかないないうちに周りに迷惑をかけているかもしれません。
住んでいる住居の遮音性能と自分が音の出す音量を理解した上で、お互い隣人に配慮しつつ快適な音ライフを送りましょう。
壁ドンされるような状況を防ぐためにも、是非今回の数値を1つの参考にしていただければと思います。
私たちBudsceneは皆様が暮らしの中で音と上手に付き合っていけるように応援しています。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 築24年の戸建て住宅1階にヤマハのアビテックス(1.5帖 D-35)を設置しています。
家の窓は単層ガラス3 mmです。
アビテックスには、壁から40 cm離す、下に防振ゴムを敷く、エアコンは建物内で上→下に通す、など一通りの対策は行っています。
自宅で歌いたく、100 dBほどの音量になると思うのですが、声は外に漏れてしまうでしょうか?
A. アビテックス内→建物外部への遮音性能は50 dB減衰程度と推測されるので、外での環境騒音を考慮しても多少は聞こえてしまうかもしれませんね。
スマホにも騒音計アプリがあるので、実際にどのくらい聞こえるのかを測定してみてはいかがでしょうか?
スマホの騒音計アプリに関してはこちらでご紹介しているので、ご参照ください。
【スマホの騒音計アプリで防音対策!】
測定した上で外への声漏れが気になるようでしたら、部屋の中で一番遮音性が低いのが窓なので、自宅の窓を二重窓にすることをおすすめします。
Q. 鉄骨造の賃貸物件に引越し予定です。最上階の両隣に部屋がない状況で、下の住民に対して騒音被害を出さないように対策をしたいと考えています。
主に防ぎたい音は、スピーカーから出る音楽や声などの周波数の高い音です。
フローリングの上に、遮音シート1.2 mm、ニードルフェルト10 mm、カーペットの順に敷こうかと思っていますが、効果はあるでしょうか。
A. その方法は、足音のような衝突音への対策としては有効ですが、音楽や声などのような空気を伝わってくる高い音にはほぼ効果がないでしょう。
音楽や声には、遮る材料を重くすることが効果的です。
しかし床の場合、重さを増す施工をしようとすると床が高くなり、ドアの開け閉めや家具などに影響が出てしまう恐れがあります。
床の重さを現状の床の重さ×2倍にして、やっと遮音性能5 dBの向上となるので、防振+積層床を実施するには最低でも90 mmは必要と考えます。
既に2重床になっている場合には、建具に影響しない範囲の上げ床程度では全く効果を得られないでしょう。
音量を下げたりイヤホンをつけたりと、対処方を切り替えた方がよいかもしれませんね。
Q. コンテナハウスやユニットハウス、トレーラーハウスは遮音性が高いと思いますが、防音施工するとどのくらいのお値段ですか?
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