【事例46】-アップライトピアノ騒音問題、賃貸マンションでどこまで対策できる?専門家Q&A-
賃貸マンションでアップライトピアノの演奏をしていたら隣人から苦情がきてしまいました。
市販の防音ブース(D-35)を導入したものの改善されず、様々な対策を試みている状況です。
防音のお悩み相談・質問コーナー。
今回のゲストは、マンションでピアノの練習ができずに困っているsさんです。
では、ご相談・ご質問をどうぞ!
はじめまして。
ピアノを弾いているのですが、マンションに引っ越したところ隣人から苦情がきてしまいました。
相談にのっていただけないでしょうか。
はじめまして。
戸建てと集合住宅では勝手が違いますもんね。
どういった状況なのか、詳しくお聞かせください。
ありがとうございます。
家の間取りと現在までの経緯は次のようになります。
<間取り>
<経緯>
①マンションでピアノ対策をしようと組み立て式のD-35防音ブースを購入
②部屋A(隣人の部屋と接している)に防音ブースを設置
③すぐに隣人から苦情が入る
④防音ブースの営業担当者から、吸音パネル「ホワイトキューオン(厚さ10 mm)」をすすめられ防音ブースの壁や上部に設置
⑤効果を感じられず、防音ブースを部屋Cへ移動
⑥部屋Aで部屋Cの防音ブース内からの音を確認したところ、作業員が数人いる時は聞こえず、静かな時間に再度確認すると若干聞こえる状態
(ピアノの弱音レバーを使用するとほぼ聞こえないレベル)
現在、隣人の部屋まで音が届くかは分かりませんが、以前苦情があったため、再発を非常に心配しています。
ピアノの先生から「ないよりはマシ」といわれ、ゴム製のインシュレーター(ピアノのキャスターから床へ伝わる振動を抑える、脚の下に敷く部材)も導入しました。
効果は限定的と聞きましたが・・・。
市販の防音ブースは、実際の性能が表記性能より低いことが殆どですからね💧
D-35と謳(うた)ってあっても、実際の性能は20 dB台後半あるかどうか、というところでしょうか。
そうなのですか。
知りませんでした💧
現在は以下の2つの方法で追加対策を検討しています。
①DIYで「ワンタッチ防音壁プロ」を設置し、その背面に石膏ボードとホワイトキューオンを組み合わせ、突っ張り棒で固定する。
→ 防音壁プロ単体の効果は実際にショールームで確認済みで、完全な遮音ではないと認識していますが、賃貸物件では現実的な対策だと考えています。
②工務店に依頼して、防音壁プロと同じ高さの石膏ボードと吸音材を壁面に固定してもらう(壁へのダメージ最小限を希望)。
また、同じ工務店から別の案として、「壁を傷つけずに、石膏ボードと防音材を組み合わせて自立式の“壁のような構造”を設置する方法」も提案されました。
現在この案についても、施工の可否や具体的な方法を社内で検討中とのことです。
御社の動画で賃貸住宅向けの防音対策についても拝見しましたが、今のところまだ当てはまる内容が見つかっておらず、引き続き参考にさせていただく予定です。
①のDIY設置、②の工務店施工、それぞれの効果や実例など、アドバイスをいただけると幸いです。
また、賃貸マンションで可能な製品や施工方法のご提案がございましたら、ぜひ教えてください。
何卒よろしくお願いいたします。
現状だと、ピアノの音量は
部屋C:95 dB ⇒ 部屋A:45 dB
ほどまで減衰していると予測します。
部屋Aで発生している音が45 dBほどであれば、TVの音よりも小さな音なので、お隣で聞こえることはないと考えられます。
ピアノを弾く場を部屋Cへとしたことで、隣人へのピアノ騒音に関しては恐らく全く問題なくなっているでしょう。
部屋Cから部屋Aへの音の減衰が十分であるとお聞きして少し安心することができました。
我が家の壁が非常に薄く、お隣の方が在宅で静かにお仕事をされていると伺っており、一度クレームが入った経緯があるため、再度の問題発生を事前に防ぎたいという思いが強くあります。
私自身が音に対して少し敏感になっているのかもしれませんが、初めてD-35防音室を設置した際にも「これで十分」と言われていたにも関わらず、実際には隣人からクレームが入ったので、今後は確実な対策を講じていきたいと考えています。
現在は下記のように、部屋Cのピアノの裏側は防音室を壁から約7 cm離して設置しています。
ピアノ裏側の洋室では比較的大きく聞こえるため、そちらの壁面についても補強を検討しております。
さらなる対策をすることに対しては、防音面でマイナスなることはないでしょうが、費用や手間の面で考えると私からはあまりおすすめできません。
防音市場には、効果がないような商品がたくさん出回っていて、それらを見極めなければならないからです。
追加対策で使用予定の商品は、防音効果が実証されているのでしょうか。
また、お話を聞いていて気になったのが上下階への防音です。
隣人へは、ピアノの場を部屋Aから部屋Cへ移動したことで防音レベルを向上させることができますが、上下階への距離は変わらないので、対策がなされていない状態です。
そちらはどうなっているのでしょう?
ご指摘の通り「上下階の防音」についてはまさに今、私も心配しているポイントです。
上下階に対してできる対策があればぜひ教えていただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
防音ブース自体の遮音性能を向上させることは難しいといえます。
特に真上に関しては・・・。
床側はタイルカーペットやジョイントマットを繰り返し敷くことで質量も増し、防振効果もでるので、ある程度は防音性能を向上できるんです。
しかし、防音ブースの上側はその分逆に天井に近くなってしまうんですよ。
ただ、マンションの上下階構造が
・RC造のスラブ厚み150 mm以上
・床2重構造
・天井裏有
などであれば、ピアノの音と認識できるようなレベルの音量は漏れていないと考えられます。
確認してみます。
防音ブースさえ購入すれば安心かと思っていたのですが・・・💧
責任感のない営業マンの「これで大丈夫」は何の根拠もありませんので、購入側が知識を深めるしかないんですよね💧
商品に表記されている性能(透過損失値)と実際の性能が違う、ということを把握されていれば今後はミスは起こらないはずです。
まんまと引っ掛かってしまいました💧
防音室内でピアノの音量はおそらく100 dB前後で、防音室の外では昼間は65 dBほどですが、夜間など静かな時間帯には77 dBほどになることもあります。
体感として、部屋を1つ隔てるごとに約10 dBずつ減衰しているように感じます。
ピアノの音量自体は、弾き方が同じであれば昼でも夜でも変わらないはずですよ。
感覚的に、周りの音が大きい昼間はピアノの音量が目立たなく、シーンとしている夜の方が大きな気がしているのかもしれませんね。
そうなのですか!
それでは、他に音楽などを流しておくとピアノの音があまり気にならなくなることがありますが、これも実際はお隣に同じように音が届いているのでしょうか?
自分の耳での聞こえ方を変えるだけで、ご近所への音漏れは軽減されないのでしょうか?
もしご存じでしたら、ぜひご教示いただけますと幸いです。
「マスキング効果」ですね。
マスキング効果は、音が他の音に紛れて目立たなくなっているだけで、近隣に聞こえる音量は残念ながら変わりません💧
音圧についてテストしてみてはどうですか?
例えば、下記のような方法でマスキング効果を感じる音楽が、何dBになっているか確認できますよ。
①ピアノを演奏する
②漏れ聞こえる部屋でピアノの音が少し紛れるなと思うくらいの音楽をBluetoothスピーカーで流す
③ピアノの演奏を止める
④Bluetoothスピーカーの音圧を測定する
騒音測定器を購入し、動画を参考にしながら実際に測定を行ってみようと思います。
今回もお忙しい中、丁寧で的確なご回答をいただき、誠にありがとうございました。
騒音計はスマホのアプリで十分ですよ。
アプリは何種類かあるので、防音室内のピアノ音が95 dB程を示すものを選んでいただければ。
スマホの騒音計についてもこちらに記載しているので、ご参照ください。
【スマホの騒音計アプリで防音対策!】
アプリがあるのですね💡
では、そちらで測定してみます。
音に関する理解が深まり、とても勉強になっています。
ただ、理解が深まれば深まるほど、心配も増してしまうことがあります💧
「この程度なら大丈夫」と思っていたことが、知識が増えることで「本当に大丈夫なのか」と気になってしまったり、少しの音にも敏感になってしまうことがあります。
それでも、こうして知識を得ることができたことで、自分がどこまで対策できているのかを客観的に把握できるようになり、1つひとつの選択に納得できるようにもなってきました。
ためになる動画を発信してくださり、ありがとうございます。
もし今後もさらに良い方法や、安心につながる対策があれば、ぜひ引き続きご助言いただけますと幸いです。
知識や理解が増すと、不安になりますよね💧
私も常々それは実感しております。
こちらにも書いたことがありますので、是非ご覧ください。
【そうだ、防音DIYしよう!防音知識をレベルアップさせると不安感が違います】
やはり皆さん、そうなのですね!
今回のご助言を通じて、防音に対する理解がより深まりました。
とても貴重なお時間を割いていただき、心より感謝申し上げます。
将来的に引っ越す機会があれば、その際はきちんとした防音室を整えたいと考えております。
その時には、ぜひまたご相談させていただければ幸いです。
YouTubeの動画も引き続き参考にさせていただきます。
本当にありがとうございました。
お引越しの際にはぜひご依頼ください。
満足度の高い防音室の提供をお約束します。
POINT👉
・市販の防音ブースは、表記性能と実際の性能が異なることが多い
・防音商品を購入する際は、購入者側に防音知識が必要
・マンションでの騒音対策は構造的な制約がある
Budsceneでは、今後もYouTubeチャンネルなどを通じて、正しい防音情報を発信していきます。快適な暮らしをするために役立てていただければ幸いです。