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【戸建て住宅】楽器別の防音室の性能

公開: / 更新:

皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。

今回は色々な楽器に登場してもらい、音量別に防音室に必要な性能をご紹介していきます。

楽器さん達、スタンバイはOKですか~?
グループに分かれてくださーい。

  • ピアノ、ヴァイオリン、トロンボーン、チューバ、ホルン、太鼓
  • フルート、クラリネット、トランペット、ギター、ベース、ドラム

あれれ?これはどういう基準で分かれたのでしょう?

楽器

どうやら、男女別に並んでしまったようですね。
フランスでは名詞にも男性名詞と女性名詞がありますもんね。
楽器の皆さんは、さすが国際色豊かです!

本当は音量別に並んでほしかったのですが・・・^^;

性能を決める前に

さて、戸建て住宅の一室を防音室にする際にはどのくらいの性能が必要なのでしょうか。
性能を決める前に、いつ・どこへの防音対策を重点的にしたいのかを明確にしておきましょう。

どこへの防音対策ですか?

家の中に防音室を作る場合、以下の2パターンの音漏れが考えられます。

  1. 家族に対する、建物の中への音漏れ
  2. 近隣の人に対する、建物の外への音漏れ

1の場合、防音室から家の中に漏れる音は純粋に防音室の遮音性能のみにより決まります。
2の場合、防音室単体の性能に加えて家の外壁の性能が加わってくるため、防音室の性能+20 dBほどの音の減衰効果を見込むことができます。

そのため、1、2どちらへの防音対策をするかにより求める性能も変わってきます。

いつ防音対策したいですか?

防音対策は、漏れ出る音を必ずしも「ゼロ」にする必要はありません

日常を営む上で自然に耳に入ってくる雑音全般(=環境騒音)に紛れるくらいの音量であれば気にならないからです。環境騒音は一日の時間帯でも異なってきます。昼間で45 dBほど、夜間で35 dBほどになります。

従って、環境騒音がある場合、防音室に必要な遮音性能は、以下の式で求められます。

必要な遮音性能  =  A  -  B   (A:防音室内で発生する音量、B:環境騒音の音量)

夜間の環境騒音を考慮した場合の、防音室に必要な遮音性能の目安を表1に記載します。

表1. 防音室に必要な遮音性能

音量A
[dB]
夜間の環境騒音B
[dB]
必要となる遮音性能(実測値)
[dB]
ピアノ 95 35 60以上
ヴァイオリン 90 35 55以上
トランペット 95 35 60以上
ドラム 100 35 65以上
ボイスチャット
(盛り上がった時の人の声)
75~85 35 40~50

 

夜間の寝室・書斎のように静寂を重んじる時間帯・場所に対しては、発生する音を環境騒音に紛らわせにくくなるので、防音室で高い遮音性能を確保しなければなりません。

そうなるとコストも手間も非常にかかってしまうため、間取りを設計する段階からご相談いただければ最適なコストパフォーマンスを実現できる防音室を提案することができます。

どのくらいの防音性能が必要ですか?

いつ・どこへ防音したいのかを明確にしたら、いよいよ性能を決定しましょう。
今回は、家の外への対策を弊社バドシーンの例で説明していきます。

 D-35性能(音を35 dB減衰させる防音室)

バドシーンの防音室で最も性能の低い商品が35 dB減衰性能です。
浮き構造で防振対策をして重さをしっかりかけると、基本的な防音性能が得られます。

D-35防音室は、家の外に対して約55~60 dBの防音性能を見込めるので、夜間でも次の楽器であれば満足の行く効果が得られるでしょう。

<対象楽器>

  • ピアノ
  • 弦楽器(ヴァイオリン、アコースティックギターなど)
  • 木管楽器(フルート、クラリネットなど)
  • ホームシアター、オーディオルーム、ボーカル録音、ボイスチャットなど
ピアノ_ヴァイオリン_フルート

 

また寝室として使う場合でも、外の救急車の音や騒音が気にならずに安眠できるだけの性能になります。

 D-40性能(音を40 dB減衰させる防音室)

D-40防音室は、家の外に対して約60~65 dBの防音性能を見込めるので、夜間でも次の楽器であれば満足の行く効果が得られるでしょう。

<対象楽器>

  • 金管楽器(トランペット、トロンボーン、チューバ、ホルンなど)
  • エレキギター、エレキベース

表1.ではピアノとトランペットが同じ音量95 dBとなっていますが、あくまで目安の数値であり、ピアノは90~100 dB程度、トランペットは95 dB以上になるため、ピアノはD-35防音室でも大丈夫です。

また、音をうるさいと感じるかどうかは、音量(音の大きさ・音圧[dB])の他に音の高低(周波数[Hz])や音色も絡んできます。

高音の方が防音しやすく、さらに人の聴覚には聞き取りやすい音域や心地よく感じる音色があるので、一概に音量だけで耳障りになるかは決まりません。

ちなみに、この「音量・音の高低・音色」を音の三要素といいます。

楽器の音の高低について、詳しくは、
【うるさい音はどうにもならない? 防ぎやすい音とは】
をご参照ください。

 D-45以上の性能

夜間の場合、D-45以上(家の外に対して約65dB以上)の防音性能が必要になるのは次のケースです。

<対象楽器>

  • 打楽器(ドラム、和太鼓、ティンパニなど)

打楽器の場合は音量も大きく、さらに低音で防音しにくいため、設計段階から関わらせていただきそれぞれの利用環境に合わせて性能を決定していきます。

まとめ

今回は、楽器別に必要な防音性能についてお話ししました。
演奏したい楽器にはどのくらいの性能が必要でしたか?

コスパよく遮音性を確保したいのなら、いつ・どこへ防音対策したいのかも考えてみてください。

私たちBudsceneは暮らしの中での音との上手な付き合いを応援しています。
これからも、皆さまが少しでも快適に過ごせるような空間を提案していきたいと思います。

それでは最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. ジェット機やロケットなどの爆音をほぼ無音にするには、どれくらいの重さが必要になりますか?
A. ジャット機等のエンジン音を130 dB・500 Hzと仮定して、単純に質量則に当てはめると、以下の数値が導きだされます。

  • 1 m2あたりに必要な重さ=843,393 kg/m2≒843 t/m2

たった1 m2あたりに84万kgも載せることになります。

昼間の環境騒音45 dB分を差し引いて85 dB減衰を目指しても

  • 1 m2当たりに必要な重さ=4,743 kg/m2≒5 t/m2

1 m2あたりに約4,700kgも必要であるということになります。

しかし質量則での計算は壁の状態や音波の壁への入射角度など様々な条件により変わってくるので、実際に必要な値とはズレが生じます。あくまで机上の値なので参考値として捉えてください。

計算に使用した質量則や、質量則が導きだす透過損失値と現実の値が異なることに関しては、こちらをご参照ください。
【防音室の性能表記には嘘がある】

弊社が80 dB減衰させる部屋を創る際には、1㎡あたり200㎏以上の荷重を掛け、何層かに分けて床・壁・天井を構成しておりますので、1㎡あたり400㎏以上の荷重を掛け、総数を増やしていけば100 dBを減衰できるお部屋を構成できるかもしれません。

現実的に施工自体も困難となるので、明確な返答が出来ず申し訳ございません。

Q. 車で逆位相の音を発生させて室内の静粛性を高める装置がありましたが、これは使えるのではないでしょうか?
防音ブースからマイクで中の音を拾ってきてブースの外でスピーカーで相殺するというように。
A. ノイズキャンセリングという手法ですね。
確かに周波数を狭く絞れば逆位相を当てて相殺する事ができますが、音楽のように周波数に幅があると難しくなります。さらに相殺するノイズから外れた周波数は単なる騒音となり、逆効果となってしまいます。
自宅などの静かな空間で利用できるシステムにするには相当な演算処理能力が必要であり、実現するのはなかなか厳しいでしょう。

Q. 人間の聞き取りやすい音域は具体的にどの周波数域なんですか?
A. 人間にとっては2,000 Hz~4,000 Hzの周波数が聞き取りやすい音域となります。
ピアノでいうと、一番右端の1オクターブ(中央のドを基準にして、3オクターブ高いドから4オクターブ高いド)辺りの音域に相当します。

聞き取りやすい音域

関連動

【【防音室】性能別で使える楽器を解説!戸建て住宅の防音室はこれを知らなきゃ損!】

【防音アドバイザー 並木勇一チャンネル】

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並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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