エアコンから音が漏れる?防音室の性能を下げない設置方法
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
今回のコラムに登場するワードに関連した「防音あるなしクイズ」を作ってみました♪
「ある」の文字の中には、共通して含まれている「あるもの」がありますよ^^
お気づきになられましたか?
答えは・・・
一週間の曜日(日月火水木金土)が入っている!でした~(≧▽≦)
さて、クイズのワードにもある通り、今回は冷暖房・エアコンの設置方法についてのお話です。
防音室を快適な空間にするためには、音だけでなく温度調節や換気に関しても気を配らなければなりません。
しかし、エアコンや換気扇の設置の仕方次第では、防音性能が低下してしまうことがあります。
そこで、防音性能をしっかりと確保できるエアコンの設置方法について解説していきます。
(換気扇に関してはこちらで扱っています。)
DIYで防音室を創ってみようという場合には、是非参考にしてみてください。
目次
エアコン設置の落とし穴
エアコン設置問題
防音室の性能を上げるには気密性が重要です。
隙間が多いと音を媒介する空気の流動も多くなり、音が伝わりやすくなってしまうからです。
しかし、エアコン設置の際には壁に穴を空けるため、気密性が失われてしまいます。
つまり、1つの防音室で「音」の出入りはNGなまま、「熱」の出入りだけOKにするという相反した条件を両立させなければならないのです。
一体どうすればよいのでしょうか。
エアコンの仕組みと構造
そもそもエアコンを設置する際に何故壁に穴を空けるの?空けないで設置できないの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、エアコンの仕組みと構造を簡単にご説明します。
エアコンは室内と室外の熱を循環させて室内の温度を調節します。そのため、室内機と室外機を2本の冷媒管と呼ばれるパイプでつないでいます。
さらに、エアコンを冷房として使うと空気が冷やされ水滴が発生するので、室内機からは結露水を室外へ排水するドレン管ものびています。
- 冷媒管 → 液体やガスを通じて熱を移動させる管
- ドレン管 → 冷房を使った際に出る水を流す管
このように、エアコンは室内と室外を切り離せない構造なので、設置の際に壁に穴を空けることが避けられません。
そして、それに付随(ふずい)して
- 壁に空けた穴から音が漏れる
- 管の中を伝って音が外部へ抜けていく
- 管自体が振動して音を伝える
という問題が生じ、防音室の性能の低下につながります。
しかし私たちはこの問題を克服するために、防音室の性能に合わせた3パターンの設置方法を実施しています。
防音性能を下げないエアコンの設置方法
【パターン1】 ピアノ、ヴァイオリン、声楽(防音室性能D-35)
防音室の使用目的がピアノ、ヴァイオリンの演奏、声楽である場合、防音室の性能を音の減衰値35 dBほどにする必要があります。
この場合は、エアコンの後ろの壁に穴を開けて外部に配管を出すという通常の設置方法で問題ありません。
ただし、壁の穴と冷媒管・ドレン管の間の隙間に、外側から必ず断熱材を詰め、エアコン用のパテを多めに使って穴を塞いでください。
建物外部の冷媒管やドレン管はそのまま剥き出しにしておくのではなく、スリムダクトと呼ばれるプラスチックのケースで覆うとさらに音が漏れにくくなるでしょう。
パターン1のポイントは次の通りです。
- 壁穴の処理をする(外から隙間を断熱材で埋め、エアコン用パテを多めに使う)
- 建物外部の冷媒管・ドレン管はスリムダクトで覆う
なお、ユニット式防音室へのエアコン設置の様子は、こちらの動画でご覧いただけます。
【【防音室/防音ブース】にエアコンを設置する方法】
ご参照ください。
【パターン2】 管楽器、エレキギター、エレキベース(防音室性能D-40)
防音室の使用目的が管楽器、エレキギター、エレキベースの演奏である場合、防音室の性能を音の減衰値40 dBほどにする必要があります。
この場合は、冷媒管やドレン管の長さをかせいで音を減衰させます。
エアコンを設置する床から約2 mの高さから建物の中に冷媒管とドレン管を通し、なるべく下の方で建物の外部に出してください。
冷媒管もドレン管も保冷材で巻かれてはいますが、加えて室内では断熱材や吸音材で周りを覆ってください。
大げさなくらい覆って大丈夫です。
壁の穴に関してはパターン1と同じで、隙間に断熱材を詰めて多めのパテで蓋をしましょう。
パターン2のポイントは次の通りです。
- 冷媒管・ドレン管の長さをかせぐ(建物の中に通し、なるべく下から外に出す)
- 壁穴の処理をする(外から隙間を断熱材で埋め、エアコン用パテを多めに使う)
【パターン3】 ドラム、和太鼓などの打楽器(防音室性能D-45以上)
ドラム、和太鼓など打楽器の演奏を目的としている場合、防音室の性能を音の減衰値45 dB以上にする必要があります。
ドラムや和太鼓の音は大きく強いので、音源と冷媒管・ドレン管の間には防音層を何層も設けます。
そしてパターン2よりもさらに冷媒管・ドレン管の長さをかせがなければなりません。
建物の中を約4~5 mほど通し、音を減衰させて減衰させて減衰させてから外へ出すようにします。
壁の穴に関してはパターン1と同じで、隙間に断熱材を詰めて多めのパテで蓋をしましょう。
エアコンのレイアウトによっては冷媒管・ドレン管の長さを確保するのが難しい場合もあるかもしれません。
そういう時は、建物の中にあるL型のコーナーを利用してできる限り長さをかせぎましょう。
おとめちゃん
ここまでの工事をしてもパターン3の場合は結構音が聞こえてしまうことがあります。
どこから聞こえるか?
それはドレン管からです。ドレン管は排水のため片側が開いているので、冷媒管よりも音漏れしやすいのです。
そこでおすすめなのが「おとめちゃん」という商品です。
乙女ちゃんはドレン管の弁として使用しますが、水がある程度溜まったらパカッと開き排水されるようになっています。普段は塞がれている状態なので、ドレン管からの音漏れを最小限にとどめてくれます。
パターン3のポイントは次の通りです。
- 冷媒管・ドレン管の長さをかせぐ(建物の中を4~5 m通し、なるべく下から外に出す)
- 壁穴の処理をする(外から隙間を断熱材で埋め、エアコン用パテを多めに使う)
- ドレン管の排水口に「おとめちゃん」を付ける
まとめ
せっかく防音室の壁や窓、天井、床などの防音性能を高くしても、エアコンや換気扇の隙間から音が逃げてしまっては元も子もありません。
エアコンや換気扇は盲点になりやすい部分ですが、気を抜かず防音処理をして居心地の良い空間を手に入れましょう。
私たちBudsceneは暮らしの中での音との上手な付き合いを応援しています。
これからも、皆さまが少しでも快適に過ごせるように、様々な防音情報を発信していきますので、是非正しい知識を得てDIYの参考にしていただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 防音室性能D-35、D-40、D-45というのはどういう意味ですか?
A. D値というのは壁の遮音性能を表す数値で、例えばD-35と示されていれば、壁の向こうの音を壁のこちら側に35 dB減衰させる性能を持っていることを表します。
そのため、数値が大きいほど遮音性能が高い、ということになります。
建物の遮音性能は、壁に関してをD値、建具に関してをT値、床に関してをL値として区別しています。
Q. ユニット防音室を検討しているのですが、メリット・デメリットを教えてください。
A. ユニット防音室のメリット・デメリットは次の通りです。
<メリット>
- 組立式なので引っ越ししても利用できる
- 価格が安い
- 中古販売も可能
<デメリット>
- 性能不足
- 性能保証がない
まずは、自分の出す音がどの程度の音量なのか、防音室に必要な性能はどのくらいなのかを把握しておきましょう。
いざ使ってみて防音性能が足りなければ、購入した意味がありません。
また近隣から騒音でクレームが来ても保証はされないので、本当にその防音室で事足りるのか、メリット・デメリットをよく考えて購入してください。
Q. 防音室に必要な性能はどうやって測定するのですか?
A. 皆さまが自力で簡易的に防音性能を測定する方法に関しては、こちらで紹介しています。
【スマホの騒音計アプリで防音対策!】
どうぞご参照ください。
関連動画
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