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【防音】木製防音ドアのヒミツを公開!

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皆さん、こんにちは。防音アドバイザーBudscene並木です。

突然ですが、ドアといえば何製のものを思い浮かべますか?スチール製、アルミ製、それとも・・・?
この質問で真っ先に木製のドアを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。

木製ドアは生活に馴染みが深く、温もりや高級感などから古くより愛用されてきました。
今回はそんな木製ドアが、防音に対してどのくらい効果があるのかについて解説していきます。

 

木製ドアの性質

木材は加工性に優れているのでデザインがしやすく断熱性も高いという特徴があります。
なにより自然素材ならではのぬくもりがあるため、建材としては非常に優れた素材です。
しかし防音という観点で考えるとどうでしょう。

木製ドアの防音性とは?

結論からいうと、私たちは2つの理由からお客様に木製ドアを提案しません
例えコストが安くても、です。

その理由は
木製ドアはカタログ記載のスペックと実際の性能にズレがある
木材は経年変化によって性能が低下していく

この2点です。

カタログ上のスペックと実際の性能のズレ

透過損失値

まず①「木製ドアはカタログ記載のスペックと実際の性能にズレがある」についてご説明します。

防音ドアのカタログには「透過損失値」と呼ばれる、ドア本体のみの遮音性能を工場の試験室で検査した実験値が記載されています。
透過損失値は「その商品・素材がどれだけの音を防ぐ力を持っているか」を示します。

一方、実際の生活ではドアと壁の隙間から音が漏れていき、ドア本体のみで遮音性能は決まりません。
そこでパッキンでの密閉やハンドルによる締め付けなどが重要になるのですが、そこは透過損失値には加味されていません

そのため、どうしてもカタログ記載の数値と実際の防音室の性能にはズレが生じてしまうのです。

ズレの事情については、こちらでも詳しく述べています。
【防音室の性能表記には嘘がある】

弊社の様々な検証結果から考えると、メーカーさんカタログ記載の数値の2/3~3/4ほどの値を実際の防音性能の目安にするとよいでしょう。

例:カタログ記載の透過損失値が30 dBのドア → 25 dB以下
38 dBのドア → 28 dB前後

ちなみに私たちBudsceneでは防音室が完成した後の実測値で性能保証をしているので、ご安心ください。

木製ドアの重さ

木製ドアが軽いということも、防音面で木製ドアをおすすめしない理由の一つです。

防音性能は音を遮る材料の重さが大きいほど向上します

従って、軽い素材ほど防音性能は低くなります。

表1.に一般的な木製ドア材と、弊社が扱うスチール製ドア材の比重(※1)を記載しました。
表1.によると、スチール材に比べ木材はとても軽いことがわかります。

同じ大きさの木製ドアとスチール製ドアがあった場合、重さが違うので防音性能も異なります。
スチール製ドアの方が重さがある分、圧倒的に防音性能は高くなります。

表1. 木材とスチール材の比重

比重
木材 MDF 0.35~
スギ(※2) 0.34
ヒノキ(※2) 0.41
ウォルナット(※2) 0.59
チーク(※2) 0.65
スチール材 7.85

※1 比重とは、水の密度1.0 g/cm3を基準とした物質の密度の比
※2 全乾比重を記載
参照:日本繊維板工業会「MDFの比重」
参照:株式会社ケツト科学研究所「比重表」

ここで、建材メーカーさんのカタログ上の透過損失値を重さの観点からも考えてみます。

ある実際の例を挙げると、35 dB減衰の防音ドアを作ろうとした場合、某建材メーカーさんのカタログ上の数値は以下のようでした。

・某建材メーカーさん

面材35 kg + 枠材15 kg=50 kg

しかし、この重さではとても35 dB減衰の性能は確保できません。
技術力云々の前に物理的に重さが足りないのです

弊社で35 dB減衰の性能を確保しようとすると、以下のような重さになります。

・弊社採用の防音ドア

面材70 kg + 枠材25 kg=95 kg

比較すると、重さが2倍くらい違ってきます

このように一般的に建材メーカーさんのカタログのスペックは机上の値であり、実際には性能を再現できません。(不動産の物件紹介で駅から徒歩5~6分とされているのに、いざ歩いてみると坂や信号などで10分くらいかかるのと似ているかもしれません。)

皆様には是非このことを認識した上でドア材を検討していただきたいと思います。

経年変化による性能の低下

次に②「木材は経年変化によって性能が低下していく」についてです。

木材は木であり生き物なので、呼吸もするし湿気によって伸び縮みもします。
すると面材が経年により段々反り返ってきてドアの上下に隙間ができ、そこから音が伝わることがあります。

私たちは防音室を提供する上で、メンテナンス後には元の性能に戻し性能保証をしていくことを信条にしています。
しかし木製ドアの扱いは難しく、専門の家具屋さんでも反り返りを元通りにすることはできないようです。
そのため反り返りが原因での音漏れはドアごと交換というかたちになります。

このような経験や色々な実験・検証を行ってきた結果、私たちは「防音ドアにはスチール製こそ至上」という結論に到達しました。
グレモンハンドル(ローラーハンドル)のような、ドアとドア枠とをギュッと寄せて締め付けを強くするタイプのハンドルであればさらに効果的です。

まとめ

今回は、木製ドアの防音効果について解説いたしました。

木材は建材としては非常に優れた素材なのですが、防音性能に関していえばおすすめできません。
防音ドアとしては、スチール製ドア+グレモンハンドルの組み合わせが最強です。

もし興味がある方がいらっしゃいましたら、当社のカフェ2階に35dB仕様の防音ドアがありますので、是非気軽に「どれくらい音が聞こえなくなるのか」を体験しにお立ち寄りください。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. 全乾比重とは何ですか?
A. 全乾比重とは、木材を恒温器中で103 ℃ほどで乾燥させ、含水率0%とした時の比重のことです。
木材の比重としては他にも、空気中に放置して含水率15%程度とした気乾比重というものもあります。
どちらの値も、水分を多く含む木材において、湿度の影響を受けずに木材のみの比重を考えたい時に使います。
重さや硬さ、強度などを計算する実用的な場面では気乾比重を、より正確な値を必要とする研究の場面では全乾比重を使うことが多いようです。

Q. 一番重い木材は何ですか?
A. 重い木材(比重が大きい木材)は次の通りです。(()内は全乾比重。参照:株式会社ケツト科学研究所「比重表」
1位 リグナムバイタ (1.25)
2位 イベ、ラパチョ、タベブヤ (1.11)
3位   トリスタニア (1.10)
どの木材も馴染みがありませんよね💦
それもそのはず、リグナムバイタとイベ、ラパチョ、タベブヤは中南米の木材、トリスタニアは南洋の木材です。
日本で一番重い木材は、アカガシ(0.89)、シラカシ(0.87)、クヌギ(0.86)、イスノキ(全乾比重0.85)あたりで、比重は0.8台後半ほどです。
一番重いリグナムバイタでさえもスチール材(7.85)の重さには遠く及びませんね。

Q. 一番軽い木材は何ですか?
A. 軽い木材(比重が小さい木材)は次の通りです。(()内は全乾比重。参照:株式会社ケツト科学研究所「比重表」
1位 バルサ(0.14)
2位 キリ(0.26)
3位   カポック(0.28)
バルサは中南米の木材、カポックは南洋の木材です。
日本国内の木材で一番軽いのはキリですが、世界ランキングでも2位に入っていますね。
キリは調湿性・防虫性に優れ、変形も少ないのでタンス材として重宝されてきましたが、ドア材として考えたときは防音性が低くなってしまうでしょう。

Q. トイレのドアで遮音性能が高い製品はありますか?
A. トイレ用ドアは換気のためアンダーカット(床側の隙間)が設けてあり、空気が流動しやすい構造になっています。
従って防音とは相性が悪く、遮音性においては一般のドアに隙間パッキンなどを利用して気密を上げた方が高くなるくらいです。
しかし換気扇が常時回転している場合に気密性の高いドアを設置してしまうと、空気を流動させにくい状況が続き換気扇の消耗が激しくなってしまいます。
もし排泄音が気になる場合は、例えばトイレ内で音楽を流すというように、別の対処法を考えた方がよいでしょう。
詳しくはこちらをご参照ください。
【トイレからの音漏れを防ぎたい!トイレの防音対策】

Q. スチール製のレバーハンドルの防音ドアを検討中です。
東洋シャッター社のレバータイトという商品では、マグネット入りのパッキンでしっかり密閉することにより、レバーハンドルでも高い遮音性能が確保できるようです。
開閉が楽で、見た目もすっきりすると思うのですが、同じ遮音性能のグレモンハンドル防音ドアと比べて違いがあるのかどうか気になっています。
A. カタログに重量などが記載されていないので断面図からの判断になりますが、「T4仕様まではパッキンがきちんと密着しさえすれば性能も確保できそうだな」というのが感想です。
防音ドアを採用する際には、部屋の床・壁・天井・窓などの防音性能にも留意してくださいね。
ドア以外の防音性能がドアに対して著しく低いと、せっかくスチール製のドアを使っても他の個所から音が漏れていってしまい部屋全体の防音性が向上しないことがあります。

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並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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