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反射音を減らしたい!壁の向こうの吸音材について解説

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皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。

皆さんは「残響散歌」という曲をご存知ですか?
そう、アニメ「鬼滅の刃 遊郭編」のOPです。
でもこのタイトルにある残響って何でしょう?!反響と何か違うのでしょうか。

今回はそんな残響の疑問に触れつつ、壁の外側での吸音材の使い方や吸音効果のある断熱材について紹介していきます。

反射音って?

反射音とは音源から直接届く音ではなく、壁や天井などに当たって跳ね返ってくる音のことです。
反射音には反響音と残響音があり、聞こえるまでの時間差で区別されています。

・反響音・・・音源からの音と反射音が断続的で、繰り返しをカウントできる。
・残響音・・・音源からの音と反射音が連続していて、繰り返しがカウントできない。

「やまびこ」や「こだま」は反響音になります。
鬼滅の刃のOPも「残響散歌」だと何となく余韻があって趣きを感じますが、「反響散歌」だとどうでしょう?!・・・だいぶニュアンスが変わってきますね。

室内の反射音を減らしたい!

反射音はアウトドアやカラオケ時には気分を盛り上げてくれますが、日常ではうるさくて生活に支障がでることもあります。
防音効果が高い部屋ほど気密性が高く、内部で発生した音も外へ漏れにくくなっています。
すると音エネルギーは行き場がないため、室内で反響や残響を繰り返します

では、少しでも反射音を減らしたい場合にはどういった対策を取ればよいのでしょう。

答えは「壁の向こう側」にあります。

壁の向こう側の空洞に、空気の代わりに吸音材を充填し太鼓現象(※1)を防いで、音の反射を抑えるのです。

吸音材は音エネルギーを熱エネルギーへと変換し、反射するはずの音エネルギーを減少させる効果があります。
その結果、音の伸び(サスティーン)が短くなり室内で音が響きにくくなります。

 

※1 太鼓現象・・・二重構造の壁やガラスなどにおいて、間に存在している空気がバネのような役割をし、一方からの振動を他方にも伝える現象。

参考:日本建設業連合会 技術研究部会音環境専門部会「共鳴透過現象」

吸音と断熱で快適に

たまに吸音材と断熱材を同じように捉えている方をお見受けします。
しかし音と熱の周囲への伝わり方は異なるので、同じ素材を利用しても吸音と断熱の効果を同じように得られるわけではありません

<音の伝わり方>
気体・液体・固体などが振動することで音が伝わる

<熱の伝わり方>

輻射(熱が赤外線して放出される現象。電気ストーブの前に立つと体が温まるのと同じ原理。)
伝導(熱が周辺に伝わっていく現象。熱いコップを持つと指も熱くなるのと同じ原理。)
対流(温度差によって、空気や水が移動することによって熱が伝わる現象。)

音と熱の発生はそれぞれ違った事象であるため、「ウチは断熱対策をしているから吸音対策もOK!」というわけにはいきません。

例えばポリスチレンフォームという断熱材には吸音性はありません。壁に貼っても吸音効果はほぼ期待できないでしょう。

ポリスチレンフォームの例:引用 https://www.one-order.jp/items/surtairo23b100

もし吸音と断熱の効果を両方一気に得たい!という場合にはグラスウール(※2)やロックウール(※3)がおすすめです。
グラスウールやロックウールは断熱効果が高く、さらに吸音効果も兼ね備えています。
さすがに遮音材ほどの防音性能は望めませんが、壁の外側に貼れば音にも熱にも効果があり一石二鳥です。

※2 グラスウール・・・ガラスを1300℃以上で溶解し、遠心力で吹き飛ばして綿状に加工したガラス繊維
※3 ロックウール・・・鉄スラグや玄武岩の混合物を1500℃以上で溶解し、遠心力で吹き飛ばして綿状に加工した鉱物繊維

グラスウール

グラスウール

ロックウール

ロックウール

どちらも特に高密度である必要はなく、一般的に販売されている密度16 kg/m3や10 kg/m3のもので充分です。

ポイントは両壁を突っ張って押すように圧縮充填することです。
例えば、45 mmの隙間には50 mmや55 mmの厚さのものを、70 mm~80 mmの隙間には90 mm~100 mmのものをお使いください。

まとめ

今回は、壁の外側での吸音材の使い方や、吸音効果のある断熱材について紹介いたしました。

反響と残響の違いにも触れましたね。
「鬼滅の刃 鍛冶の里編」も楽しみです♪

私たちBudsceneは皆さまが暮らしの中で音と上手に付き合っていけるように応援しています。
これからも、皆さまが少しでも快適に過ごせるような空間を提案していきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. 壁の向こう側ではなく、部屋の内側に貼る吸音材はどうやって選べばいいのでしょうか?
A. 吸音材は効果のある周波数域が狭いので、吸音したい音の高さに合わせた素材・密度・厚さのものを選ぶ必要があります。
こちらに選び方や購入する際の注意点などについてまとめてあるので、どうぞご参照ください。
【吸音材は、こう選ぶ!選び方のコツ・注意点を徹底解説】

Q. 壁の向こう側の空洞に吸音材を充填する場合の、具体的なDIY方法を教えてください。
A. 隣室からの音を防ぎたい場合におすすめしているDIY方法があります。
太鼓現象を抑えるために吸音材を使っていますので、どうぞこちらをご参照ください。
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】

Q. インコの声を防音したいと考えています。
隣室側の壁に防音壁を作ろうと検討しているのですが、壁と壁の間の吸音材にグラスウールではなくウレタンを代用しても効果あるでしょうか?
グラスウールを使うとガラス繊維が飛散した際に、人間よりも小さいインコにとって被害が大きいのではないかと心配になりまして・・・。
インコの声は高音域なのでウレタンでも効果があるのではと思っているのですが、いかがでしょう。
A. 今回のように太鼓現象を抑えるために吸音材を使う場合、吸音材には元からの壁と新しい壁の間で突っ張ってもらう必要があります。
ウレタンの場合、内部でスカスカになってしまう可能性があるため、グラスウールの方が適していると考えます。
密度はそこまで高くなくてもよく、高密度だと価格も高くなってしまうので16 Kや10 Kがおすすめです。
ウレタンが好ましくないというわけではありませんが、設置する方法を考えるとグラスウールの方がコスパがよいと思いますよ。
また、グラスウールでもビニールで巻かれているタイプを利用すれば、完成後は石膏ボードなどで塞がっているので飛散しないはずです。(施工時は多少飛散するでしょうが。)

関連動画

【新素材!?吸音材の向こう側について解説!】

【防音アドバイザー 並木勇一チャンネル】

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並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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