換気扇から音が漏れる?防音室の性能を下げない設置方法
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
今回のコラムに登場するワードや防音に関連した「防音あるなしクイズ」を作ってみました♪
「ある」の方には何か共通して隠れているものがありますよ^^
ヒント、文字の色が濃いところに注目してみてください♪
2番目に隠れているものは■です。
お気づきになられましたか?
答えは・・・
色(白、砂色、青、青、黒)が入っている!でした~(≧▽≦)
さて、クイズのワードにもある通り、今回はファン・換気扇の設置方法についてのお話です。
防音室を居心地良く安心して使うためには、音だけでなく換気や温度調節に関しても気を配らなければなりません。
しかし、換気扇やエアコンの設置の仕方次第では、防音性能が低下してしまうことがあります。
そこで、防音性能をしっかりと確保できる換気扇の設置方法について解説していきます。
(エアコンに関してはこちらで扱っています。)
DIYで防音室を創ってみようという場合には、是非参考にしてみてください。
目次
換気扇設置の落とし穴
換気扇設置問題
防音室の性能を上げるには気密性が重要です。
隙間が多いと音を伝える空気の出入りが多くなり、音が伝わりやすくなってしまうからです。
しかし、密閉性が高く空気の入れ替えがない空間に長時間いると酸欠になってしまいます。
空気中の成分としては酸素濃度18%以上、二酸化炭素濃度3%以下を保たないと、酸欠や二酸化炭素中毒になってしまい、最悪生命の危険があります。
換気が不十分な場合は、さらに匂い・湿気といった快適性も損なわれてしまいます。
そのため防音室では、音漏れを防ぎつつ空気の入れ替えをするという相反した機能を両立させないといけません。
換気扇の種類
この防音室の換気扇設置問題で活躍するのが「ロスナイ」という換気扇です。
特にDIYでの防音室創りにおいて、性能的にピッタリなのでおすすめです。
画像出典:三菱電機
ロスナイは給気・排気の両方を同時に1つの機械で実現できるので、給気口・排気口を別々に設置しなければならない一般的な換気扇より防音効果が高くなります。
どういうことかというと、給気口、排気口を個々に設ける場合、室内と室外をつなぐ開口部を2個所設けなければなりません。しかし、給気・排気を1つの機械で行えると開口部が1個所で済むのです。つまり、部屋の開口部=隙間が必要最低限でよくなり、気密性を高めることができるのです。
また、換気扇のファンにはプロペラファンとシロッコファンという2つの種類がありますが、ロスナイはシロッコファンに分類されます。
シロッコファンはプロペラファンに比べ防音面で優れている点が特徴です。
表1.に各換気扇の特徴をまとめました。
表1. 換気扇の種類と特徴
種類 | 特徴 | 防音効果 | 防音効果の理由 |
プロペラファン | プロペラで直接屋外に排気 | × | ・屋外と直結しているので音漏れしやすい |
シロッコファン | ダクトを通して屋外に排気 | 〇 | ・屋外と直結していないので音漏れしにくい ・回転音が静か |
(ロスナイ) | 給気・排気が1台で完結 | ◎ | ・室内の開口部(隙間)を必要最低限にできる |
ロスナイはシロッコファンの長所も併せ持つので
- ダクトを通して屋外と直結せずに排気するので、音漏れしにくい
- 回転音が静か
- 室内の開口部(隙間)を必要最低限にできる
という点で防音効果を発揮します。
防音性能を下げない換気扇の設置方法
ただし、ロスナイさえ使えば防音室の換気扇設置問題が全て解決するかというと、そんなことはありません。
必要な防音性能によっては、さらに音を減衰させる工夫を重ねる必要があります。
私たちBudsceneは試行錯誤を重ね、防音室の性能に合わせて3パターンの換気方法を実施しています。
新築時とリフォーム時では換気扇の設置の仕方が違うのですが、今回は新築時の換気扇の取り付けに関してご紹介します。
【パターン1】 ピアノ、ヴァイオリン、声楽(防音室性能D-35)
防音室の使用目的がピアノ、ヴァイオリンの演奏、声楽である場合、防音室の性能を音の減衰値35 dBほどにする必要があります。
この場合は、天井裏に天井カセットタイプのロスナイを埋め込み、フレキシブルダクトを6 m以上の長さで設けて音を段々と弱くします。
ダクトを通すことで、次のようなメリットが生じます。
- ダクト内で、室内で発生した音を減衰させる
- 換気扇のノイズを室内に聞こえにくくする
フレキシブルダクトは、グラスウールでできている「ニューホープ」という製品を推奨します。
弧を描いたり長さを変えたりと自由に変形させることができるので、使い勝手がよく便利です。
そして最後に、フレキシブルダクトを室外に伸ばし、先に給気・排気をするベントキャップを取り付けます。
パターン1のポイントは次の通りです。
- 天井カセットタイプのロスナイを取り付ける
- フレキシブルダクトを6 m以上の長さで設けて、ベントキャップに接続する
【パターン2】 管楽器、エレキギター、エレキベース(防音室性能D-40)
防音室の使用目的が管楽器、エレキギター、エレキベースの演奏である場合、防音室の性能を音の減衰値40 dBほどにする必要があります。
この場合は、パターン1の設置工程だけでは音を完全に減衰しきれません。
そのためパターン1に加え、天井裏でロスナイとフレキシブルダクトの間に消音ダクト(スチールでできた箱の中に吸音材が詰め込まれているダクト)を挟みこみます。
パターン2のポイントは次の通りです。
- 天井カセットタイプのロスナイを取り付ける
- 天井裏に消音ダクトを付けて音を減衰させる
- フレキシブルダクトを6 m以上の長さで設け、ベントキャップに接続する
消音ダクトはプロ仕様の品質が必要です(私たちもオリジナル製品を工場で制作しています)。販売されている商品だけで実現するのは厳しいので、DIYに組み込むのは難しいかもしれません。
【パターン3】 ドラム、和太鼓などの打楽器(防音室性能D-45以上)
ドラム、和太鼓など打楽器の演奏を目的としている場合、防音室の性能を音の減衰値45 dB以上にする必要があります。
ドラムや和太鼓の音は大きく強いので、ロスナイを使用して天井裏だけで処理しようとしてもできません。
そこで、弊社専用のオリジナルダクトで対処します。
オリジナルダクト内では各パーツが長い距離の中でしっかりと計算され組まれているので、打楽器の音にも対応できるようになっています。オリジナルダクトには、ロスナイでは性能が足りないことから別の給排気型の換気扇(パイプファン)を使っており、第2種換気か第3種換気(※)を行います。そして給排気の換気扇→消音ダクト→フレキシブルダクト→消音ダクトというシステムで、45 dB以上の防音性能を実現しています。
※ 換気の種類
- 第1種換気・・・給気・排気とも機械換気で行う方式
- 第2種換気・・・給気を機械換気、排気を自然換気で行う方式
- 第3種換気・・・給気を自然換気、排気を機械換気で行う方式
- 第4種換気・・・給気・排気とも自然換気で行う方式
打楽器の音は非常に手強いため、DIYではまず太刀打ちできないでしょう。
防音の専門業者へ依頼するのが一番です。
安全性に関して
防音観点からすると、防音室には窓を付けないのがベストです。
窓の防音性能は壁などに比べるとどうしても弱くなってしまい、そこから音が漏れてしまうからです。
そのため弊社の防音室には基本的に窓をつけません。
窓がないと換気の面で心配になる方もいるでしょう。
建築法規でも建物の安全性を考慮し、換気に関した様々な取り決めが定められています。
しかし、ご安心ください。
弊社の上記3パターンの換気方法はいずれも、役所から「窓がなくてもしっかりと換気の取れる安全性の高い設置方法である」と承認されております。
一番難易度の高いパターン3のドラムや和太鼓スタジオも豊富な実績があります。
今回ご紹介した内容は、色々試行錯誤してたどり着いた、防音面に優れながらも換気面においても安全性の高い施工方法であると自負しております。
まとめ
せっかく防音室の壁や窓、天井、床などの防音性能を高くしても、換気扇やエアコンの隙間から音がもれてしまっては元も子もありません。
換気扇やエアコンは盲点になりやすい部分ですが、気を抜かず防音処理をして安全で居心地の良い空間を手に入れましょう。
私たちBudsceneは暮らしの中での音との上手な付き合いを応援しています。
これからも、皆さまが少しでも快適に過ごせるように、様々な防音情報を発信していきますので、音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 換気扇とエアコンを、個々に2台ではなく両方の機能を備えた1台で補ってもよいですか?
A. 私たちが防音室を創る場合には、防音室の性能に合わせて
- エアコン → 冷媒管、ドレン管に伝わる振動を抑える
- 換気扇 → 給排気共に空気の通り道を確保しつつ音を減衰させる
ということをしっかりと計算し施工していきます。
一方、換気機能も兼ねたエアコンの場合は、換気風量が非常に少なくなり空気交換を満足に行えないことも考えられます。
そのため、基本的にはエアコンと給排気は別々にすることをおすすめします。
Q. ロスナイは熱交換機能もあるとのことですが、エアコンの代わりにもなりますか?
A. 確かにロスナイを設置すれば熱交換は行われます。
しかし防音室は熱がこもりやすいので、エアコンの代用まではできないでしょう。
人がいるとその体温だけでも上がってしまいますし、特に夏場はスポットクーラーを引き込むというような機構が必要となります。
Q. 消音ダクトとして車のマフラーを代用するのはどうでしょうか?
A. 防音面では効果がありそうですが、内径が細過ぎるため換気が不十分になりそうです。
Q. 楽器メーカーの防音ブースの中には、壁付けでダクトレスタイプの換気システムを利用しているものもあります。
ダクトにつなぐタイプのロスナイを使っていないのは何故ですか?
A. 理由は2つ考えられます。
- コストがかからない
- 換気扇での遮音性低下に無頓着
もしかして、そもそも性能測定を行っておらず、遮音性能が下がっても気づいていない可能性もあります。
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