防音室は浮いている?!低い衝撃音を効果的に防ぐには?防振にまつわるエトセトラ
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
「カニ食べ行こう~♪はにかんで行こう~♪」
1997年にヒットした、パフィの「渚にまつわるエトセトラ」の歌詞の一節です。懐かしいですね。
カニはカニでも、モルディブ・カニフィノール島にある水上コテージも憧れますよね^^
「カニフィノール行こう~♪渚へ行こう~♪」
そうそう、水上コテージと弥生時代の高床式倉庫、そして防音室には共通点があるんですよ。
何だと思いますか?
実は3つとも、床が地面や水面から離れて浮いているんです。
え?防音室も?と思った方。
そうなんです。
一見しただけではわからないのですが、一般的な防音室の造りも、本来の床の上にもう一層別の床が設置された浮き構造になっています。
何故わざわざ防音室を浮き構造にするのか。
今回は、その理由や浮き構造にする手順、使用する材料、ノウハウなどについて解説していきます。
目次
防振を実現する浮き構造
浮き構造にするとどんなメリットがあるのか。
それは防振を図ることができる!ということです。
防振とは、読んで字のごとく振動を防ぐことです。
音源に触れないことが一番ですが、そうもいかない場合は、音を伝えたくない箇所と音源の間にゴムなどの弾性体を挟んで振動を弱めます。
そして、壁だけ防振といったように、一部のみを防振してもあまり意味がありません。
床も天井もつながっていて、そこから振動が伝わってしまうからです。
かといって壁の上下を床や天井から切り離して、隙間ができている状態で防振をとっても、今度は隙間から音が逃げていってしまいます。
そのため、防音室の理想形は下の図のような独立した「部屋 in 部屋」のかたちになります。
しかし重力がある限り、部屋の中にもう一つ部屋を浮かせるのは不可能ですよね。
(将来的にはホバークラフトやリニアモーターカーのようなテクノロジーを取り入れることができるようになるかもしれませんが、現状では無理です。)
そこで実際に施行する際には、本来の部屋の床と、防音室の床の間に防振材を挟んで高床式の浮き構造とします。
防音室の構造についてはこちらでも述べています。
【防音室を施工すると壁〇cm・床〇cm・天井〇cm狭くなります!】
どうぞご参照ください。
防振は固体を伝わる音に対して効果を発揮し、防音にはとても大切な要素となります。
防音では
- 空気を伝わる音に対して → 音を遮る材料の重さを重くする
- 固体を伝わる音に対して → 防振を図る
という方法が効果的です。
防振の効果
防振は特に低音域での防音性能に影響します。
私たちも実際に材料を全く同じにして、次の2通りの施工法で防音性能を比較してみました。
①防振を図らない施工法(材料を元の部屋の壁・床・天井にピッタリ貼り付ける)
②防振をしっかり図った施工法(床を浮き構造にし、防音室の壁や天井も元の部屋に触れさせない)
その結果、高い周波数こそあまり違いがなかったものの、500 Hz以下では7~10 dBほど②の方が高い性能になりました。
このように、防振をとることは低い音に対して非常に有効です。
材料の性質だけに頼って防音性能を上げようとすると、重さ・費用・スペースが莫大なものになってしまいます。
防音するうえで、防振は振動を伝えないようにするための効率的な手段なのです。
実際の手順
防振のための浮き構造は、床 → 壁 → 天井と下から構築していきます。
順番に、どんな材料を使ってどんな点に注意すればよいのかをみていきましょう。
床
最初は床から構築します。
部屋本来の床と防音室の床の間に防振材を挟み込み、床を浮かせます。
防振材には次のような商品を使います。
Budsceneが防振材として使用している商品
私たちが防振材として使用している商品は次のようなものです。
- 防振ゴム
- 高密度のグラスウール・ロックウール
防振ゴムは防振材の定番商品で、振動を緩和するのに役立ちます。
グラスウール・ロックウールは通常、断熱材や吸音材として販売されています。
特に防振材と謳(うた)われているわけではありませんが、高密度(96 kg/m3、80 kg/m3など)のものを裏技的に防振材として使っています。
DIYで防振材として利用できる商品
他にも防音DIYでは次のような商品が防振材として活躍しています。
- 防振金物
- タイヤチューブ
- バッカー材
防振金物には色々な種類があります。
上にかかる荷重や防音室のスペースにより、適したものを選びましょう。
タイヤチューブもDIYでは人気のある防振材です。
あまり予算をかけたくない時に重宝するでしょう。
バッカー材は発泡スチロールでできた棒状の商品です。
通常はコーキングの調整に使いますが、防振材としても活用できます。
防振材で床を浮かせた後は、コンクリートを流し込んで終了です。
オフィスビルのスタジオなどのように床の高さ・重さの問題でコンクリートを流し込めないケースもありますが、そういった場合は防振を何回も繰り返します。
壁
次に壁を構築します。
新たな壁が元からの壁に触れないように、板材を貼る柱を直立させて建てる必要があります。
元からの壁と柱との距離は、自分のDIYの腕前と相談して決めましょう。
柱は防振をとった新しい床の上に建ててください。
防振がとれていない元からの床の上に建てても意味がありません。
柱に板材を貼ったら壁の完成です。
天井
最後に天井を構築します。
天井の施工時に注意していただきたいのが、板材どうしの継ぎ目・目地です。
1枚の板材に収まるくらいの小さめな防音室なら問題ありませんが、板材の規格より大きい面積の防音室を作りたい場合は必ず板材に継ぎ目ができてしまいます。
するとその継ぎ目の部分の強度が弱くなるため、天井がたわんで下に垂れてしまいます。
主な板材の寸法を示します。
<主な板材の寸法>
- 石膏ボード → 1820 mm × 910 mm
- 合板 → 1820 mm × 910 mm
- コンパネ → 1800 mm × 900 mm
- OSB → 1820 mm × 910 mm
例えば2 m70 cmの寸法で、【【10万円】完全解説!防音のプロがDIYで防音室を創る】と同じような作り方をしたら天井の真ん中辺りは3 cm以上垂れてくるでしょう。
たわみが進行すると板材に亀裂が生じたり垂木が割れたりして、天井が落下してくる原因にもなり危険です。
そこで強度を上げる方法を、面積別にご紹介します。
面積3畳くらいまで
防音室の面積が3畳くらいまでは、垂木の幅の長辺を鉛直(床や天井と垂直)になるように使うことで強度低下を防ぐことができます。
これは木造建築物の梁の考え方と一緒です。
縦方向を厚くすることによって、荷重を支える強度をUPさせます。
面積3畳以上
防音室の面積が3畳以上の場合は、 吊り金物を使用してください。
吊り金物は天井から吊り下げるタイプの防振材です。
シングルタイプとダブルタイプがあり、ダブルタイプの方がより低音域に効果があります。
材料の選択方法
材料は、実際に部屋の中にかかる荷重によって決めます。
- 床材・防振ゴム → 床本体、壁、天井一部の質量+中に入る人・物・機材の質量
- 天井材 → 一本の吊り金物にどれだけの荷重がかかるか
これらを逆算してそれぞれ材料を選んでいきます。
特に、防振ゴムは値段が高ければよいというわけではありません。
効果を発揮するのに適した荷重があります。
商品のカタログにきっちり記載されているので、見落とさないようにしてください。
まとめ
固体を伝わる衝撃音や低音域の音を防ぐには防振が効果的です。
防振材で高床式の浮き構造を作り、壁も天井も元の部屋に接触させない!
これが一番の防振方法になります。
DIYで防音ブースに挑戦する場合は、防振を意識して作りましょう。
そうそう、防音室と共通点のある水上コテージや高床式倉庫ですが、それぞれ「風光明媚な景観」や「食べ物をネズミや湿気から守る」ために考案されました。
防音目的で床が高くなっているわけではありませんが、発想や創意工夫など見習いたい点が多くありますね。
私たちBudsceneは様々な防音情報を発信しています。
是非正しい知識を得てDIYの参考にしていただければと思います。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでも気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 防音室と元の壁の間の空気層はどのくらいあれば十分なのでしょうか?
A. 1.5 cm以上を推奨します。
床を作る際には、壁に接触させないように防振材を挟みます。
高密度のグラスウールやロックウールを利用した場合には、2.5 cmは隙間をあけることになるので、防音室の床がどこまでの範囲になるかも考える必要があります。
Q. 天井の継ぎ目の強度対策で、木材の幅の長辺利用と吊り金物を同時にする必要はありますか?
A. 面積に合わせて、どちらか一方で大丈夫ですよ。
Q. 1900 mm × 1200 mmの防音ブースの天井として、630 mm × 1200 mm のパネルを3枚並べようと思っているのですが、パネルどうしの接続をどうしようか悩んでいます。
A. 1200 mm方向の木材は1本物とし、パネルの継ぎ目同士はビスを打ち込んでつなぐようにしてください。
防音ブース内側からパネルをまたぐように補強金物で施工できると、より安心でしょう。
Q. サブウーファー(100 Hz以下の超低音域のみを再生するスピーカー)の防振で、バランスディスクを敷いた合板の上に載せるのは効果ありますか?
A. 床への防振対策にはなるでしょう。
しかし音質的には締まった音にならないと思うので、合板の上に他の素材(コンクリートブロックや木毛セメント板、レンガ、御影石など)を重ねて、音質面でのチューニングも楽しんでみてください。
Q. 天井高さ2.4 mの部屋に2畳の防音ブースをDIYする予定なのですが、木材が高いので軽天材(軽量鉄骨天井下地材)で作るか迷っています。
防振を考えると、木材の方がいいですか?
A. 軽天材でも大丈夫です。
天井高さ2.4 mであれば、45 mmのものが適しているでしょう。
吸音材の充填方法などが木材とは変わり、テープなどで止めていくかたちになります。
Q. イナバ物置を防音ブースに改造して、電動工具を使うDIY工作室にしたいと考えています。
物置を防音ブースにする際に注意すべきことがあれば教えてください。
A. 湿気対策が重要です。
湿気を防げるようにポリスチレンフォームを垂木間に貼り、防音室内側にグラスウール充填、さらにその内側に防音施工!
これで物置防音ブースの寿命がかなり長くなると考えます。
Q. 古い分譲マンションに住んでいます。
たまに室内でボールをドリブルする音が響いてきます。
心当たりのある家は3階下なのですが、ドリブル音は 3階も壁を伝うものですか?
A. 躯体構造を伝わる衝撃音であれば、十分あり得ます。
Q. 隣人(成人男性)が夜中に全力で「おい!」「ふざけんなよ!」と叫んでいます。
びっくりして起きてしまうので、壁にDIYで防音をしようと考えているのですが、 何かいい方法はないでしょうか?
賃貸の壁は鉄筋コンクリートで厚さ180 mmぐらいです。
A. 鉄筋コンクリートの界壁で厚さ180 mmなら50 dBは減衰しているはずなので、聞こえてきている声は40 dBほどかと想定できます。 この音をさらに10 dBほど小さくすることを目標にするとよいでしょう。
こちらをご参照ください。
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】
聞こえる音を完全にゼロにすることはできないでしょうが、大分緩和されると思います。
関連動画
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