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高気密・高断熱の家は防音性も高いのか?

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皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。

クロスワードパズルを作ってみました♪
今回お伝えしたいテーマのキーワードが入っているので、縦・横・斜めのカギをヒントに是非チャレンジしてみてください^^

クロスワードパズル_問題

 

もし難しい!と感じた場合も、読み進んでいただければキーワードが登場します。
(クロスワードパズルの解答は「まとめ」にあるので最後にご確認ください♪)

さて今回のテーマは、本当に高気密・高断熱の住宅は防音性も高いのか?!です。

住宅のセールスでは気密性・断熱性が高ければ、あたかも防音性も高いかのように宣伝しているところがあります。
しかし、それは果たして真実なのでしょうか?

気密・断熱・防音とは

まず最初に、気密・断熱・防音の意味を確認しておきますね。用語が曖昧だと話を進められませんからね。

  • 気密・・・隙間を小さくし、空気の出入りを少なくすること。高気密の住宅は室温の維持がしやすくなる。
  • 断熱・・・熱の移動を防ぐこと。高断熱の住宅は外の気温の影響を受けにくくなる。

双方を組み合わせることで、夏は涼しく冬は暖かく過ごすことができます。

  • 防音・・・音を防ぐこと。遮音・防振・制振といった手法がある。
    ・遮音・・・空気で伝わってくる音への対策。音を反射して透過させないこと。遮る材料が重ければ重いほど効果的。
    ・防振・・・固体中を伝わってくる音への対策。ゴムのような弾性体で揺れを小さくする。
    ・制振・・・固体中を伝わってくる音への対策。支柱などで、そもそもの振動を抑える。

音は密度や硬さが異なる物質へ伝わる時に、反射(跳ね返す)や屈折(向きを変える)をして弱まるので、防音には色々な材料で複構造をとることも有効です。

また防音とは違いますが、音の響きを短くする方法として吸音という手法もあります。

気密・断熱・防音共に、快適な生活を送る上で欠かせませんが、気密と断熱は主に保温の役割を担い、防音は音によるトラブルを防ぐ役割があります。

気密性・断熱性と防音性・吸音性の関係

それではいよいよ、気密性・断熱性と防音性・吸音性についての関係を解説していきましょう。

私たちが日常で関わる音には

  • 空気など気体で伝わる音
  • 壁など固体で伝わる音

の2つがあります。

このうち固体で伝わる音に関しては、気密性も断熱性も関与しません。
気密性・断熱性が影響するのは空気を伝わる音に対してです。

高気密の住宅は、天井・壁・床・窓・ドアなどの隙間は小さく、壁厚は厚くなっています。
そのため住宅内外の空気の出入りが少なくなるので、空気を伝わる音も漏れにくくなります。
すると結果的に建物の遮音性も高まります。

しかし高気密の住宅の場合、防音はあくまで躯体構造頼りであり、防音を専門に考えた時の複構造の効果には及びません。
そのため、遮音性が高まるといっても一般の家と比較して若干高いくらいです。

窓のないコンクリート造の建物でさえ、実測の遮音性能は40 dB減衰くらいが限界値でしょう。(遮音性能が透過損失値で表されている場合を除きます。透過損失値と実際の遮音性能の違いは【防音室の性能表記には嘘がある】をご参照ください。)
40 dB減衰では、騒々しい工事の音が静かなオフィスほどの音量になります。

しかし、楽器を演奏しても近隣から苦情が来ないようにしたい、周囲に迷惑をかけたくないといった場合には、やはり防音をメインに本格的な対策をする必要があります

また高断熱の住宅を考えた場合、断熱材をしっかりと詰めて外の気温から住宅内の温度を隔離します。

断熱材(発泡ウレタン)

 

断熱材の中にはグラスウールやロックウールのように吸音性を兼ね備えた素材もあるので、そういった素材を使えば吸音性も向上します。

グラスウールロックウール

 

表1.に気密性・断熱性と防音性・吸音性の関係を示します。

表1. 気密性・断熱性と防音性・吸音性の関係

防音性 吸音性
遮音性
(空気で伝わる音に対して)
防振・制振
(固体で伝わる音に対して)
複構造
気密性 × × ×
断熱性 × × ×

 

気密性と遮音性に関連があることと、断熱材に吸音効果があるものが含まれている点から、あたかも高気密・高断熱の住宅は防音性も高いとイメージされがちです。

しかし高気密・高断熱であっても防音性が著しく向上しているわけではありません

住宅を検討する際には、是非このことを念頭に置いておいてください。

高気密・高断熱の住宅のデメリット

特に音楽活動をするわけではなく日常生活の中で静けさが欲しい場合は、一般の住宅の遮音性能30 dBほどが37 dB近くまで上がれば十分です。
このくらいなら高気密・高断熱住宅の防音効果でも事足りるでしょう。

しかし注意していただきたいのが、高気密・高断熱住宅ならではの音に関するデメリットです。

サステナブル住宅

それは以下の2点です。

  • 音が反射しやすい
  • 静かな分、室内で発生する音が気になりやすい

高気密の場合、隙間が塞がれて外の音が遮断されます。
ということは当然室内の音も外へ漏れにくくなり、逃げ場のない音が室内を延々と反射し続けることになります。
反射音を抑えたい場合は吸音して響きを調整しましょう。

また、外からの音が入ってこない分、家の中の騒音値が下がり静かになります。
その結果、家の中で発生する些細な音が際立って、耳につきやすくなります。
高気密・高断熱の住宅には騒音値の低い家電を選んだ方がよいかもしれません。
そうそう、雨音なども大きく聞こえるでしょう。

まとめ

高気密・高断熱の住宅は、ある程度までなら遮音性も高まり、静かで快適な生活を送ることができるでしょう。

ただし、それはあくまで日常レベルでの音量に対してであり、楽器演奏などをしても近隣から苦情が来ないほどの防音レベルまでは達しません。

また、反射音や室内で発生する音が気になりやすくなるという面もあります。

高断熱・高気密の住宅に防音効果も期待する場合は、過度に期待せずあくまでも多少はましになる程度と考えておいた方がよいでしょう。

私たちBudsceneは皆さまが少しでも快適に過ごせるように、音の悩みを減らすことでお役に立てればと思っております。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

そうそう、クロスワードパズルの答えはこちらです♪
ピンク・オレンジ・水色で囲まれている断熱・気密・真実が今回のキーワードでした。

クロスワードパズル_解答

いかがでしたか?難しかったでしょうか?!
え?簡単だった?

では、最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. 高気密・高断熱の住宅で、音と温度以外のメリット・デメリットはありますか?
A. 主なメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
高気密 ・花粉や虫の侵入を防げる
・節電できる
・匂いやハウスダスト(家のホコリ)がこもりやすい
・初期費用がかかる
高断熱 ・結露が生じにくい
・節電できる
・初期費用がかかる

高気密・高断熱の住宅は初期費用がかかりますが、省エネで電気代が削減されるので、長い目でトータルを考えれば費用対効果は高いでしょう。

Q. 隣人の騒音に悩んでおり、【壁の防音性能をDIYで上げる方法】を参考にDIYでの防音対策を考えています。
上記では遮音シートを石膏ボードでサンドイッチのように挟み込んでいますが、マンションの耐荷重の問題で1枚ずつしか使えません。
その場合、どちらを表側(室内側)にして貼ればよいですか。
A. 石膏ボードが表側(室内側)、遮音シートが裏側(壁側)がおすすめです。
遮音シートが部屋の表側にあると、匂いや装飾仕上げの面で不都合かと思います。

Q. 木造中古一戸建てを購入しました。
防音性、断熱性が著しく低く、とにかく家の中の生活音がダダ漏れです。
そして夏は暑い・冬は寒い・・・
リビングだけでも防音、断熱をしたいです😢せめて、テレビの音が窓から外に漏れているのを防ぎたいです。
A. 防音に関しては、窓が原因なら内窓の設置が効果的です。注意点として、内窓のガラスには現在利用しているガラスと同じ厚さのものを選ばないでくださいね。ガラスは、厚さやガラス同士の距離によって遮音性が変わり、同じ厚さのガラスの場合には共鳴現象が起きて音が大きくなることがあります。
また、TVのスピーカーが背面に設置されているとテレビ背面の音が大きくなります。外部スピーカーを接続して窓から離れたところで音を出すのはいかがでしょうか。
断熱に関しても内窓の設置が有効です。
加えて床下の断熱を強化すると室内の温度も改善されるでしょう。

関連動画

【高気密/高断熱の家は遮音性が高いのか?】

【防音アドバイザー 並木勇一チャンネル】

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【防音室の性能表記には嘘がある】
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】

並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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