忖度なし!市販の防音ブースの遮音性能を検証、結果を発表!
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
今回のコラムに登場するワードに関連した「防音あるなしクイズ」を作ってみました♪
「ある」の文字の中には、何かが隠れていますよ^^
お気づきになられましたか?
答えは・・・
動物の鳴き声(牛、豚、犬、羊、烏)でした~(≧▽≦)
え?!軽トラックにトラもいるって?!鳴き声だけじゃなくて本体もいましたか💦
さて先日、知り合いが市販の防音ブースを譲ってくれたので、この機会に遮音性能を測定してみようと思います!
以前、市販の防音ブースの遮音性能を重さから推測したことはありましたが、実際に騒音計を使って測定するのは初めてです。(重さからの推測について、詳しくはこちらをご参照ください。
【ユニット式防音室に潜む罠!重さで防音性能を見極めよう】)
果たして謳(うた)っている遮音性能は再現できるのでしょうか?
目次
防音ブースの仕様
今回、測定するのはこちらの商品です。
仕様は表1. の通りです。
表1. 防音ブースの仕様
記載されている遮音性能 | 約25 dB減衰 |
メーカー価格 | 99,900円(税抜き) |
構造 | パネル組み立て式 |
材質 | プラスチックダンボール |
サイズ | ・外寸:W1,240×D1,240×H1,912 mm ・内寸:W1,100×D1,100×H1,900 mm |
重さ | 約30 kg |
パネル1枚1枚の重さは軽量で、大人なら女性一人でも運べる程度です。
組み立て時間は3人で15~20分ほどでした。1人だと結構大変かもしれません💦
パネルどうしにはつまみを回すとロックがかかるので、組み立ては本当に簡単です。
天上には通風口が付いていて、こちらも回すことで調節可能です。
コンセント用の穴も1つ設置されています。
全体の印象として、使い勝手はよさそうです。
遮音性能の測定
さて、気になるのは遮音性能ですよね。
早速、防音ブースの実際の遮音性能を測定してみましょう。
測定方法
ブース内でピンクノイズを発生させてその音量をブース内外で測定し、音量差(室間音圧レベル差)から遮音性能を計算していきます。
測定方法を表2. に示します。
表2. 測定方法
測定音 | ピンクノイズ |
測定音域 | 125、250、500、1,000、2,000 Hzの5オクターブバンド |
騒音計 | 精密騒音計、A特性 |
今回はブースからの距離1 mほどの地点1ヶ所だけでデータを取りました。
測定結果
測定結果は表3. のようになりました。
表3. 防音ブース単体の遮音性能
音域 [Hz] |
ブース内の音量A [dB] |
ブース外の音量B [dB] |
遮音性能 (ブース内外での音量差A-B) [dB] |
125 | 109 | 100 | 9 |
250 | 93 | 89 | 4 |
500 | 99 | 85 | 14 |
1,000 | 91 | 76 | 15 |
2,000 | 89 | 76 | 13 |
防音ブースのメーカーのホームページでは、遮音性能について「平均約25 dB減少」と記載されていましたが、測定結果はどの音域でも15 dB以下でした。
謳われている遮音性能と実際の遮音性能には10 dB以上の違いがありますね💦
15 dBの遮音性能がどのくらいかというと、ボイスチャットやゲーム実況のような熱中している時の大きめな声(75 dB)が一般的な話し声(60 dB)くらいになる程度です。
一般定な話し声(60 dB)は、壁の薄い集合住宅に住んでいる場合には隣室にうっすら聞こえているくらいの音量です。夜なら喋っている内容が聞き取れるかもしれません。もし同居している家族から「ボイスチャットがうるさい!」などと苦情が来たら、今回の防音ブースではあまり問題は解決されないでしょう💧
この防音ブースを活用するために、どうにか遮音性能を向上させたいところです。
何かよい方法はないものか・・・。
強化対策
ということで、コストの面でも労力の面でも手軽に挑戦できる方法がないか考えた結果、防音ブースに次の方法を施してみることにしました。
- 養生テープで隙間を塞ぐ
- 毛布で覆う
条件は「1万円以下で取り組めること」です。
遮音シートも検討したのですが、遮音シートで防音ブースを覆うと匂いがキツいこと、強度的に心配なことから選択肢からは外しました。
対策1. 養生テープで隙間を塞ぐ
では、まず養生テープでパネルの接合部の隙間を塞いでみましょう。
徹底的に対策するため、ドアの隙間も塞ぎ床も固定しました。
養生テープで対策した後の測定結果は表4. のようになりました。
表4. 養生テープ対策後の遮音性能
音域 [Hz] |
ブース内の音量A [dB] |
ブース外の音量B [dB] |
養生テープ対策後の遮音性能 (ブース内外での音量差A-B) [dB] |
125 | 109 | 97 | 12 |
250 | 93 | 88 | 5 |
500 | 99 | 84 | 15 |
1,000 | 91 | 76 | 15 |
2,000 | 89 | 71 | 18 |
数値を見ると、あまり効果はありませんでしたね💦
さらなる防音強化に挑戦してみましょう!
対策2. 毛布で覆う
次に、養生テープはそのままで、外側を毛布で覆ってみます。
毛布はモノタロウさんで10枚セット1万円以下で売っているものでOKです。
ドア部は合計3枚が重なり合う暖簾(のれん)のようなかたちとしました。
毛布は落ちないように上の方を養生テープでキツめに縛って留めています。
毛布で対策した後の測定結果は表5. のようになりました。
表5. 毛布対策後の遮音性能
音域 [Hz] |
ブース内の音量A [dB] |
ブース外の音量B [dB] |
毛布対策後の遮音性能 (ブース内外での音量差A-B) [dB] |
125 | 109 | 97 | 12 |
250 | 93 | 85 | 8 |
500 | 99 | 81 | 18 |
1,000 | 91 | 71 | 20 |
2,000 | 89 | 65 | 24 |
高音域の遮音性能は明らかに向上しました。
しかし、これでも500 Hzで18 dB減衰くらいですね。
もう少し向上させたかったのですが・・・💧
測定結果
一連の測定結果を表6. にまとめます。()内は防音ブース単体の遮音性能との差を表しています。
表6. 防音ブース単体の遮音性能と各対策後の遮音性能
音域 [Hz] |
防音ブース単体の遮音性能 [dB] |
養生テープ対策後の遮音性能 [dB] |
養生テープ+毛布対策後の遮音性能 [dB] |
125 | 9 | 12(+3) | 12(+3) |
250 | 4 | 5(+1) | 8(+4) |
500 | 14 | 15(+1) | 18(+4) |
1,000 | 15 | 15(±0) | 20(+5) |
2,000 | 13 | 18(+5) | 24(+11) |
単体では15 dB以下の遮音性能だった防音ブースですが、養生テープで隙間を埋めて毛布で覆うことで特に高音域の遮音性能を20 dB以上まで上げることができました。
ボイスチャットやゲーム実況などで防音ブースを利用する場合は、高い声に対しての方が効果があるかもしれません。
低音域の遮音性能をもう少しアップさせたいところですね。
まとめ
市販の防音ブースの遮音性能を実際に測定したところ、重さから推測した時のように、謳われている数値を下回っていることがわかりました。
こういった商品は今回の防音ブースに限らず、市場に溢(あふ)れています。
購入の際は、安物買いの銭失いにならないように、重さを参考にしたり展示してある防音ブースを体験したりして慎重に選ぶようにしましょう。
どうしても安く手軽な防音ブースを活用したい!という場合には、今回ご紹介したようなカスタマイズをして防音強化に取り組んでみてください。
私たちBudsceneは、防音に関する様々な情報を発信しています。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 毛布対策で気をつけることはありますか?
A. 通風孔を塞いだまま長時間滞在すると酸欠になってしまいます。
30分に一度くらいはドアを開放して空気を入れ換えてください。
Q. 引っ越しの時など、自分で防音ブースを運搬したい場合はどうすればよいですか?
A. 1度解体してパネルの状態に戻し、軽トラックなどで運びましょう。ハイエースやキャラバンのようなワンボックスカーでも大丈夫です。
Q. ピンクノイズではなく、人間の声を使って遮音性能を測定したらどうなりますか?
A. 養生テープでの対策後、実際に私が防音ブースに入って80 dBくらいで声を出して実験してみました。結果、500 Hz辺りの音域での遮音性能は10~12 dB減衰ほどでした。表4. での15 dB減衰という結果に比べて少し性能が低く出ましたが、人間だと声量を一定に保つことが難しいことも鑑(かんが)みて誤差の範囲といえるでしょう。頑張って声を出したので疲れました(笑)
ちなみに測定でピンクノイズを使用するのは、低音域と高音域での1オクターブあたりのエネルギーの偏りを補正するためです。同じ1オクターブでも周波数幅は低音域ほど狭く、高音域ほど広くなります。そのためそのまま測定すると、高音域の方がエネルギーが高く測定されてしまうのです。
音の高さと強さが反比例するピンクノイズを使用することで、全ての音域でのエネルギーを公平に評価することができます。
関連動画
【【忖度無し!】話題の防音ブースを性能測定してみた!Part1】
【話題の防音ブースの性能が足りないので、勝手に強化してみました!Part2】