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吸音材が防音するという誤解はプラシーボ効果から?!

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皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。

皆さまはプラシーボ効果ってご存知ですか?
本来は薬の効果がない物質(例えば小麦粉など)なのに、摂取することで心理的な安心効果がはたらき病気が改善したように思えることをいいます。「病は気から」の典型ですね!

プラシーボ

 

実はこれ、防音界隈によくある現象なんです。

今回はこのプラシーボ効果による「吸音材への誤解」について解説していきます。

吸音材は防音するのか?

吸音材は防音効果があるのでしょうか。
答えはNOです。

吸音材は、吸音はしても防音はしてくれません。

吸音と防音の違いについてはこちらをご参照ください。
【防音と吸音の違い「吸音は防音しない」】
【防音材と吸音材は違います!混同する3つの理由とは?!】

けれど、ちまたでは「吸音材で防音できた!」と発信している方をお見かけします。
一体どういうことなのでしょうか?!

それは、次の3点が影響していると思われます。

  • 吸音による残響時間の減少
  • 宣伝による誇大広告
  • プラシーボ効果

1つひとつ解説していきますね。

吸音による残響時間の減少

まず残響時間の定義なのですが、残響時間とは「音源から発生する音が停止した後に、音量(音圧)が60 dB 減衰するのに必要な時間」のことです。
吸音材はこの残響時間を短くする効果があります。

ただし、どの音域にも同じように効くのではなく、高音域になるほど効果が強まり低音域になるほど効果は弱まります
これは低音域の方が波長が長いため、

  • 低音は音を伝える物質(媒質)に阻まれにくい
  • 高音と同じ距離を伝わる時に、媒質を揺らす回数が少ないのでエネルギーが減りにくい

ということが原因です。

回避・回折と反射
壁の厚さと波長の違い

 

高音域の場合は、吸音材を部屋に貼りめぐらせると1秒ほどあった残響時間を0.5秒くらいまで短くできます。
そのため、響きがかなり抑えられて静けさを実感できます。

しかし、注意点が1つ!

残響時間が短くなったとしても、部屋を出入りしている音の音量は変わりません
伝わる音の大きさは変わらない、つまり吸音材は防音効果には影響していないのです。

自分が騒音に迷惑している側なら、残響時間が減ったことにより満足できるかもしれません。

けれど自分が音源側になっているケースはそうはいきません。自分では防音できたと思って安心していても、音が漏れている先は何の変化も起こっていないのです
自分の出す音が周囲に迷惑をかけているか気になる場合は、吸音材では効き目がないということを認識していただきたいと思います。

宣伝による誇大広告

次に、宣伝による誇大広告とはどういうことなのかご説明します。

インターネットショップはキーワード検索で上位に表示されようと、キーワードをできるだけ数多く登録します。
そのため「防音効果」「遮音効果」というような、本当は違う意味合いなのに似たように感じる言葉を吸音材の説明に並べています。その結果、皆さまがインターネットで検索してページを開いた時に、吸音材なのにあたかも防音材であるかのように説明されており、勘違いが生まれてしまうのです。

吸音商品を防音材・遮音材と表しているショップは、運営者が防音について理解していないか、わざと誤解させるように掲載しているか、なので商品自体の信頼性も低いでしょう。

こういったショップや商品に引っ掛からないように、皆さまご自身が正しい情報から正しい知識を得ることが大切です。
吸音パネルを部屋中に貼りめぐらせると、費用もバカになりません。安いウレタン素材のものでも1万円ぐらい、GCボードだと2万円ぐらいにはなってしまいます。
無駄な買い物で後悔することのないように、目的に合う商品をご自身で選べる知識を身につけましょう。

プラシーボ効果

最後に、プラシーボ効果についてです。

吸音パネルを部屋に設置するだけでも結構大変なDIYですよね。
吸音パネルを選んで買って届いたその後に

  • 吸音パネルのサイズを部屋に合わせるためにカット
  • 飛散防止のためガラスクロスで巻く
  • 壁にマスキングテープを貼る
  • 吸音パネルを両面テープで貼る

というような工程を踏んでようやく完成です。

多大な労力と時間・金銭もかけた作業が終わったら、満足感を得て「防音効果もあるはず!」と思ってしまう心理、わかります。
特に残響時間が短くなって静けさを感じていたり、宣伝により防音材と信じていたらなおさら・・・。

「吸音材が防音にも効果がある」という方たちは、恐らくこういった「①残響時間の減少、②宣伝による思い込み、③DIYが大変であること」が合わさったプラシーボ効果から、発信しているのではないかと思われます。

まとめ

今回は、よく耳にする「吸音材への誤解」がどうして起こるのかについて解説しました。

吸音材はあくまで吸音材。音の響きを短くする吸音効果はありますが、音量を小さくする防音効果はありません

最初から吸音目的で買う場合は除きますが、防音効果を期待して吸音材を検討する時は

  • 悩んでいる音は高音か
  • 自分が迷惑している側か

であるかチェックしましょう。
Yesなら、残響時間の減少とプラシーボ効果で満足できるかもしれません。
また、もし購入する際は誇大広告に気をつけてくださいね!

私たちBudsceneは防音に関する正しい情報を発信して、皆さまの音へのお悩みを減らせるように努めています。
今後の新たな試みとして、私のYouTubeチャンネルの生配信を視聴してくださっている皆さまとLINE電話にて交流したいと考えています。
弊社まで訪問となると本格的な相談になってしまうので、もう少しライトに気軽に相談したい方にお応えできればな、と。
是非私たちの生配信もチェックしていただいて、音について気になること・疑問点などを質問していただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. 残響音と反響音は違うのですか?
A. 残響音と反響音は共に壁や天井などに当たって跳ね返ってくる反射音であり、聞こえるまでの時間差で次のように区別されます。

  • 残響音・・・音源からの音と反射音が連続していて、繰り返しがカウントできない。
  • 反響音・・・音源からの音と反射音が断続的で、繰り返しをカウントできる。

「やまびこ」や「こだま」は反響音になります。

Q. 音量60 dB以下の音の場合、残響時間はどうなるのですか?
A. 測定不能なため、残響時間という概念があてはまらなくなります。

Q. 「だんぼっち」をカスタマイズしています。
遮音シートを外側と内側のどちらかにしか貼れない時は、どちら側に貼ればよいですか?
①内側に貼った場合 → 吸音材は遮音シートの上に貼る
②外側に貼った場合 → 吸音材は内側に貼る
という予定です。
A. ②がよいですね。
だんぼっちのダンボール部分は剥がれてきてしまうので、遮音シートは外側のフレームを利用して貼るのがよいでしょう。

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【ふわふわした物で防音!どんな効果が得られるかをプロが解説!】

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並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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