どうなる?トリプルガラス・2重窓・3重窓+防音カーテンの性能を検証!
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
部屋の中で、最も音が漏れやすい場所はどこだと思いますか?
- 窓
- ドア
- 換気扇
答えは・・・全部でした!
え?クイズになってないって?!
そうですよね💦
今回は、最も音が漏れやすい箇所の1つである「窓」について、実際に内窓と防音カーテンの遮音性能を検証していきます。
窓ガラス自体の遮音性能についてはこちらで詳しく解説しているので、是非ご参照ください。
【ガラスでの防音は難しい!ガラス窓の防音方法を徹底解説】
目次
3重窓と防音カーテンの遮音性能はどのくらい?
内窓は、窓の遮音性を高める効果的な方法です。
ただ「一体どのくらい遮音性能があるのか」を具体的に数値で確認しているデータが中々見当たらないため、弊社にも多くのお問い合わせをいただいております。
そこで、これから我々が手掛けた防音室の3重窓の性能を、1重の時・2重の時・3重の時と実際に測定していきたいと思います。
窓が1枚増えるとどのくらい性能が高くなるのかを是非ご確認ください。
防音を謳(うた)っている市販の防音カーテンも一緒に性能測定するので、そちらもご参考にしていただければと思います。
窓の仕様
今回の測定に使用する窓は、1軒家・木造住宅の4枚のガラスの引き違い窓です。
窓は3重で、
- 1枚目(一番外側、元からの既存のガラス窓)→ YKK AP社:APW430(FL3+A16+FL3+A16+FL3:トリプルガラス)
【高性能トリプルガラス樹脂窓 APW430】 - 2枚目(真ん中、内窓1)→ LIXIL社:インプラス(PL4+A8+PL6:ペアガラス)
【インプラス/インプラス for Renovation/インプラス浴室仕様:インプラス】 - 3枚目(一番内側、内窓2)→ LIXIL社:インプラス(PL3+A10+PL5:ペアガラス)
【インプラス/インプラス for Renovation/インプラス浴室仕様:インプラス】
となっています。
(APW430に関しては、ホームページによると最近、アルゴンガス入の中空層が16 mm→18 mmに変更になったようです。)
弊社の防音室は、部屋の中に壁・床・天井と接しないように防音層を創るのですが、今回の3重サッシは1枚目と2枚目が建物側に、3枚目は防音層側に付いています。
グレーのコーキング(空気層)の左が建物側(オレンジ)、右が防音層側(ブルー)になります。
建物側と防音層側は、振動を伝えにくくするために接触させていないため、3重窓の全てを建物側に設置しているケースとは遮音性能が異なってしまいますが、そこはご了承ください。
防音カーテンの仕様
今回の検証のために防音カーテンを買いました♪
生地はパリパリした紙のようで、粘りがあるような感触です。
はてさて、防音カーテンはどのくらいの効果があるのでしょうか?!
測定方法
遮音性能の検証はできるだけ実際の状況に近い条件で行うことが大切です。
例えば、同じ3重のガラスでも小さな箱などで試すと、音が振幅できる周波数の距離を確保できないので、実際の遮音性能ではなくなってしまいます。
そのため、以前弊社で施工した防音室の3重窓をお借りして、次の6通りで測定を行っていきます。
- 1枚目だけの遮音性能
- 1枚目+防音カーテンの遮音性能
- 1枚目+2枚目の遮音性能
- 1枚目+2枚目+防音カーテンの遮音性能
- 1枚目+2枚目+3枚目の遮音性能
- 1枚目+2枚目+3枚目+防音カーテンの遮音性能
測定方法は音域125~2,000 Hzの5オクターブ域のピンクノイズを室外で流して、室内で音量を測定します。
測定箇所は窓の両サイドと中央の3ヶ所とし、算出した平均値をデータとしてお伝えしますね。
測定結果
測定結果は次のようになりました。
【1枚目だけ】の遮音性能
表1. ①だけの遮音性能
音域
[Hz] |
室外音量① [dB] |
室内音量②
[dB] |
遮音性能①-②
[dB] |
125 | 89.6 | 76 | 13.6 |
250 | 79.3 | 65.3 | 14 |
500 | 75.6 | 59.3 | 16.3 |
1000 | 77.3 | 62.3 | 15 |
2000 | 74.6 | 52.6 | 22 |
APW430は、カタログでの遮音性は等級3(T-3:35 dB減衰ほど)です。(※1)
しかし、実際の測定では500 Hzで16 dB減衰ほどでした。
※1 参照:【高性能トリプルガラス樹脂窓「APW 430/APW 430+」プロジェクト窓リニューアル】
【1枚目+防音カーテン】の遮音性能
表2. ①+防音カーテンの遮音性能
音域
[Hz] |
室外音量① [dB] |
室内音量②
[dB] |
遮音性能①-②
[dB] |
125 | 89.6 | 74.6 | 15 |
250 | 79.3 | 62 | 17.3 |
500 | 75.6 | 57 | 18.6 |
1000 | 77.3 | 59 | 18.3 |
2000 | 74.6 | 48.6 | 26 |
1,000 ~2,000 Hzの高音域では防音カーテンが結構効いているようです。
2,000 Hz域は、コインシデンス効果で元々のガラスに遮音性能の落ち込みがあるのですが、そこを補うようなかたちで防音カーテンが効いていると思われます。
【1枚目+2枚目】の遮音性能
表3. ①+②の遮音性能
音域
[Hz] |
室外音量① [dB] |
室内音量②
[dB] |
遮音性能①-②
[dB] |
125 | 89.6 | 64.6 | 25 |
250 | 79.3 | 51.3 | 28 |
500 | 75.6 | 44.6 | 31 |
1000 | 77.3 | 46.3 | 31 |
2000 | 74.6 | 36.6 | 38 |
やはり内窓が付くと、音量がグッと下がった感覚があります。
平均化しているためデータからは見えませんが、内窓が設置されたことによって、窓の中央部分の遮音性能の低さがなくなり、右・左・中央の遮音性能が均等になりました。
【1枚目+2枚目+防音カーテン】の遮音性能
表4. ①+②+防音カーテンの遮音性能
音域
[Hz] |
室外音量① [dB] |
室内音量②
[dB] |
遮音性能①-②
[dB] |
125 | 89.6 | 64.3 | 25.3 |
250 | 79.3 | 50.6 | 28.7 |
500 | 75.6 | 43.6 | 32 |
1000 | 77.3 | 43.3 | 34 |
2000 | 74.6 | 33.6 | 41 |
防音カーテンを加えることで、高音域は3 dBほどと僅かですが遮音性能の上昇がみられます。
誤差範囲といえばそれまでなのですが💦
【1枚目+2枚目+3枚目】の遮音性能
表5. ①+②+③の遮音性能
音域
[Hz] |
室外音量① [dB] |
室内音量②
[dB] |
遮音性能①-②
[dB] |
125 | 89.6 | 58.3 | 31.3 |
250 | 79.3 | 41.6 | 37.7 |
500 | 75.6 | 27.6 | 48 |
1000 | 77.3 | 27.6 | 49.7 |
2000 | 74.6 | 20.3 | 54.3 |
内窓を2重(元々のガラスと合わせて3重)にすることで、高音域への効果が顕著に現れました。
【1枚目+2枚目+3枚目+防音カーテン】の遮音性能
表6. ①+②+③+防音カーテンの遮音性能
音域
[Hz] |
室外音量① [dB] |
室内音量②
[dB] |
遮音性能①-②
[dB] |
125 | 89.6 | 59.3 | 30.3 |
250 | 79.3 | 42 | 37.3 |
500 | 75.6 | 28.6 | 47 |
1000 | 77.3 | 28 | 49.3 |
2000 | 74.6 | 21 | 53.6 |
5.と比べてみると、防音カーテンがある6.の方が、逆に遮音性能が下がっているという結果になりました。
これは誤差もありますが、窓の遮音性能がここまで高くなると防音カーテンによる効果はほぼなくなることを表しています。
各遮音性能の比較
6通りの遮音性能を比較してみましょう。
1~6までの遮音性能を表7、グラフ1に示します。
表7. 1~6までの遮音性能
音域 [Hz] |
① | ①+防音カーテン | ①+② | ①+②+防音カーテン | ②+②+③ | ①+②+③+防音カーテン |
125 | 13.6 | 15 | 25 | 25.3 | 31.3 | 30.3 |
250 | 14 | 17.3 | 28 | 28.7 | 37.7 | 37.3 |
500 | 16.3 | 18.6 | 31 | 32 | 48 | 47 |
1000 | 15 | 18.3 | 31 | 34 | 49.7 | 49.3 |
2000 | 22 | 26 | 38 | 41 | 54.3 | 53.6 |
グラフ1. 1~6までの遮音性能
結果を見ると、次のようなことがわかります。
- どの測定でも、高音域の方が遮音性能が高い
- 内窓を1つ付ける度に、高音域では15 dBほど性能の向上がみられる
- 防音カーテンの効果は内窓に比べると僅かであり、かつ窓の性能が高くなるにつれて防音カーテンの効果は低くなる
防音室の中は、ピンクノイズを流していないと平均10 dB前後というとても静かな環境です。
雑音が多い環境で測定すると正確な値を算出できないので、結果は変わってくるでしょう。
また、遮音性能には窓の大きさが関係してくるので、もっと大きい窓であったり、4枚でなく2枚の引き戸であったりすると数値は違ってきます。
まとめ
部屋の中で音が漏れやすい「窓」に焦点を当てて、1~3重窓までの実際の性能を、防音カーテンを付けた場合と共に検証しました。
皆さまのお困りのケースとは厳密には違うかもしれませんが、是非お悩み解決の一助にしていただければと思います。
私たちBudsceneは様々な防音情報を発信して、皆さまの心地よい暮らしを応援しています。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
防音ショールームの見学・体験もお待ちしております♪
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 1枚目のガラスAPW430(FL3+A18+FL3+A18+FL3)の測定値を、板硝子協会の公表してるFL3+A6+FL3複層ガラスの遮音性と比較してみると、ずいぶん低いように感じます。
これは引き違いサッシによる気密性の低さからくるものでしょうか?
A. 参照元はこちらですね。
板硝子協会【板ガラスの遮音性能 ~開口部の遮音設計のための資料~ JIS A 1416に基づく音響透過損失データ(2015年版)2016年9月修正版】P35. 2. 板ガラスの遮音性能 2.4 複層ガラスの音響透過損失データ 20. FL3+A6+FL3】
板硝子協会の公表値は透過損失値であり、計測用の装置にて理想的な環境下で測定をした場合の数値です。
透過損失値は振動による影響、音の回り込みによる影響などが発生しない条件で測定をしているため、実測値より高い数値で測定されます。
詳しくはこちらをご参照ください。
【防音室の性能表記には嘘がある】
【カタログにはカラクリがある?!防音室購入を失敗しないために】
【集合住宅の壁はメーカーカタログから防音性が確認できる!】
Q. 30 Hz辺りの低音域ではどのくらいの防音性能になるのですか?
爆音で音楽を聞いているので、是非知りたいです。
A. 音域125Hzの数値を参考にしてみてください。
- 音域63 Hz → 約20%減
- 音域31.5 Hz → 更に20%減
くらいのデータになるはずです。
しかし今回測定した部屋は防音室なので、部屋自体の防振も確保されています。
一般的な住居の場合には壁・床・天井から伝わる振動音があるため、今回の測定値よりも少しマイナスの性能になるでしょう。
Q. 自宅1Fの掃き出し窓と2Fの腰窓で、ガラスの厚さやサッシは同じなのに、2Fの方が窓の遮音性能が低く感じます。
お隣の建物が3階建てなのですが、何か関係があるのでしょうか。
A. 原因としては次のようなことが考えられます。
- 1階はリビングの家電の稼働音などで生活の中の雑音が大きく、2階の方が元の環境が静かな分、外からの騒音が大きく感じる。
- 隣の3階建て建物から屋根を回り込んで聞こえる騒音が多いため、物理的に2Fの方が1Fよりも騒音が大きい。
今回検証した通り、2階の窓を内窓で対策すると効果がみられるはずですよ。
Q. 防音カーテンではなく隙間テープで対策したらどうなりますか?
A. 昨今の樹脂サッシは気密性が高いので、隙間テープで性能が向上するような箇所はないと思いますよ。
もし効果があったとしても「防音カーテン > テープ処理」となるのは間違いないでしょう。
Q. 窓のないRC造の建物でも、近くのアスファルトでバスケをしたら音や振動は伝わってきますか?
A. 近くと表現している距離によりますね。
マンションの壁にボールをぶつけたり、建物内や廊下でドリブルをしたら明らかに聞こえます!
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