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防音に完全も簡易もありません!なぜ完全防音や簡易防音という言葉が生まれたのか?!

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皆さん、こんにちは。防音アドバイザーBudscene並木です。

ここ最近、防音業界には実体がない幽霊があちこちに出没するんだとか・・・。
あたかも正式な防音界の住人のようなフリをして、何も知らない純粋な人間をまどわすそうです。

そこで今回は私・並木がゴーストハンターとなって幽霊を成敗してしまおうと思います。
皆さん、くれぐれも怪しい幽霊には惑わされないように気をつけてくださいね。

幽霊

ネット上ではびこる幽霊言葉「完全防音」「簡易防音」

皆さんは「完全防音」や「簡易防音」という言葉を耳にしたことはありますか?

お客様から「完全防音にしたいです」や「簡易防音で作りたいです」というご連絡をいただくこともあります。しかしこの言葉、実は正式な防音用語ではありません

書籍や資料、文献などには一切存在しない、ネット上だけでさまよう実体のない幽霊のような言葉なんです。

完全防音は意味がない

では完全防音とはどういった意味で使われているのか。

名前通りに解釈すると「音が全て遮断され、音漏れが『ゼロ』である防音法」ということになります。
まるで真空の宇宙空間のようですね。

宇宙
完全防音を実現するには膨大な手間と時間、莫大な費用がかかり、防音の観点からするとコストパフォーマンスが非常に悪くなります
防音室の目的を考えてみてください。

きっと皆さん満場一致で「近隣から苦情が来ないようにするため」とお答えになると思います。

しかし、それを達成するために漏れる音を「ゼロ」にする必要はありません
音量を、自然に発生している雑音(=環境騒音)程度にまで落とすことができれば目的は果たせます。

防音室創りの一番効率の良いやり方は、利用用途に合わせてゴール(=防音性能)を設定し、ゴールに合わせて材料や工法を決めて具現化していく方法です。

完全防音にしようとすると、この上なくオーバースペックとなり材料・費用共に無駄な工事を重ねることになります。

つまり工事する上で完全防音は現実的ではなく、言葉だけがフワフワさまよっている状態なのです。

簡易防音も意味がない

一方、簡易防音とはどういう意味で使われているのでしょう。

名前通りに解釈すると「簡単で手軽な防音法」ということになります。

ネット上でも、「工具無しで組み立てられる」「吸音材で遮音効果抜群!」「〇〇dB減衰で楽器演奏可能」など、メリットをうたっているサイトを多数見つけられます。

しかし、皆さん。この幽霊言葉には惑わされないでください。

簡易的な防音方法などありません!
簡単に手軽に防音できたら苦労はしません!

その証拠に、簡易防音の説明をよく読むと、もっともなことをいっているようでもおかしな点がたくさんあります。

吸音材で遮音効果とは、これいかに?(吸音と遮音は違います。)
〇〇dBで本当に目的を達成できるのか?(楽器演奏では45~50 dB以上の遮音性能が必要なのに、全然足りない性能を堂々と謳(うた)っています。)

吸音と遮音の違いについては、こちらで詳しく述べています。
【防音と吸音の違い「吸音は防音しない」】

また、楽器演奏に必要な遮音性能に関しては、こちらの質問コーナーで詳しく答えています。
【「防音室の風呂桶理論」その音、漏れてますよ!】

耳当たりのいいフレーズだけ信じこむと、せっかくそれなりの費用をかけたのに性能が足りず結局目的を果たせない「安物買いの銭失い」のケースに陥ってしまいます。

幽霊のように曖昧で実体を持たず漂っている言葉には惑わされないように気をつけてください。

幽霊

なお、「こんなことをやったらもっと静かにできるよ」というような、自分でできる防音対策については私たちも随時発信していきますので、是非参考にしていただければと思います。

防音の定義

なぜ「完全防音」「簡易防音」といったような現実に即していない言葉が生まれたのかというと、防音室の定義が曖昧であるからだと考えられます。

そこで、もう一度防音室の定義を見直していきましょう。

「防音室=必要な防音性能を確保するために設計された部屋」です。

「周囲に音で迷惑をかけたくない。」「近隣から苦情が来ないようにしたい。」という目的のために、防音性能というゴールを設定し、そこから逆算して材料や工法を決めていく。そしてそれを実現するためにプロセスを踏みデザインされた部屋が防音室です。

従って、その定義に基づくと音が漏れにくいイメージのある地下室は防音室にはなりません。

地下室

地面に潜っているため音が漏れにくいという性質は確かにあるのですが、たまたま地下に位置しているだけで、防音性能のゴールが明確ではないからです。

実際に、換気経路や出入口、ドライエリアなど、音の逃げ道への対策が万全ではないため、地下室で楽器演奏でもしようものなら建物中に音が響き渡ります。

音はどこか1ヶ所でも防音性能が低い逃げ道があればそこから漏れてしまうのです。

防音効果を効率よく得るには、目的を達成するためにゴール(=防音性能)を決めて、そこへ突き進むことが大切です。

まとめ

完全に防音する必要はありません!そして簡単に防音することはできません!

ネット上で漂っている実体のない幽霊のような言葉「完全防音」「簡易防音」には惑わされないように注意してください。
いかにも正式な防音用語のような顔をしていますが、どちらも生活に取り入れる意味がありません。

そして、怪しい幽霊にだまされないよう、防音の目的を再度考えていただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. そもそもdB(デシベル)がよくわかりません。
A. dB(デシベル)とは音圧(音の大きさ、音量)のレベルを表すときに使われる単位です。
量の比を対数で表わす単位B(ベル)に、使いやすいように1/10を表す接頭語d(デシ)をつけてセットにしています。B(ベル)の名は、電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルが由来となっています。

音は振動であり媒質の密度を変化させながら(振動の進行方向に圧力を変化させながら)伝わるので、音圧の単位は本来、圧力と同じPa(パスカル)となります。
しかしそれでは日常で使いにくいため、人間の感知できるギリギリの最小値20 μPa=0 dBを基準として比をとり、発生している音量がどの程度なのかを単位dBで対数として表すことになりました。

最小可聴値0dB=20 μPaは、「正常な聴覚を持つ若者が周波数1000 Hzの純音を空気媒体・雑音がない環境で聞き取れるギリギリの音量」として決定されました。

Q. 音が「ゼロ」の状態というのは0 dBということですか?
A. 厳密には違います。
人間が感知できる最小の音である20 μPaを0 dBと規定しています。
従って、数値上0 dBであっても、実際には聞き取れないくらいの音が発生している場合もあります。

  • 0 dB → 人間が感知できないだけで、もっと小さい音が発生していることもある状態
  • 音が「ゼロ」→ 振動を伝える媒体が無いような、完全に無音の状態

Q. マイナスdBというのも存在するのですか?
A. はい、存在します。
最小可聴値0dBを基準として、人間には聞き取れないほどの小さい音はマイナスdBで表されます
0 dBの1/10の音量を-20 dB、1/100の音量を-40 dB、1/1000の音量を-60 dB・・・と表していきます。

関連動画

【防音工事に簡易防音も完全防音もない!ネットに蔓延る言葉の定義を正します!】

並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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