管楽器・電子楽器を安心して演奏したい!防音室の性能はどれくらい必要?
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
生ドラと聞いたら、何を思い浮かべるでしょうか。
生どら焼き?生ドラム?それとも・・・?
生どら焼きはクリームとあんこの組み合わせが絶妙!生ドラムの演奏はド迫力!でどちらも捨てがたいですね♪
さて、オーケストラ演奏で活躍する管楽器や、バンド活動に欠かせないエレキギター・エレキベース・電子ドラムといった電子楽器。
自宅で思いっきり練習したい!バンド活動の場を創りたい!といった方も多いでしょう。
しかし、防音対策を何もしていない建物内でそのまま演奏しては近隣に迷惑をかけてしまうかもしれません。
そこで今回は、管楽器や電子楽器にスポットを当てて、近隣から苦情が来ないようにするにはどのくらいの防音性能が必要なのかを解説していきます。
防音室創りの前に
「防音しにくい音」というと、大きい音をイメージする方が多いのではないでしょうか。
けれど実は防音しにくいかどうかには、音量だけでなく音域(音の高低)も関係してきます。
低い音は高い音よりも波長が長いので、図1.のように障害物を避けやすいからです。
図1. 低音と高音の障害物への避けやすさの違い
また波長が長いということは、図2.のように材質(媒質)の中を通る時に、波長が短い高音よりも振動が少なくてすみます。物を揺らす回数が少ないとエネルギーを消耗しにくいので、低音は弱くしにくくなるのです。
図2. 低音と高音の振動する回数の違い
このように、低い音は高い音より遠くまで届きやすく防音しにくいという特徴があります。
また、「うるさい音」も同様に音量だけでは決まりません。
同じ音量でも耳に心地よい音色か不快な音色かで、うるさいと感じる度合いは変わってきます。
詳しくはこちらをご参照ください。
このように、「防音しにくい音・うるさいと感じる音」には、音量だけでなく他の要素も絡んできます。
そのため、防音には次のポイントを考えることが大切となります。
- どんな音色か
- どの程度の高さの音か
- どのくらいの音量か
- どこにたいして防ぎたいか(戸建ての同じ家の中、戸建ての隣の家、集合住宅の隣室・上下階など)
そこで弊社では「音を出しても近隣から苦情が来ない!」を目標として、表1-1のように遮音性能のレベル別に3タイプの防音室を提供しています。
表1-1 Budsceneの防音室の遮音性能
遮音性能 (戸建て住宅) |
遮音性能 (集合住宅) |
|
タイプ1(標準タイプ) | D-55~D-60 | D-70~D-75 |
タイプ2(高性能タイプ) | D-60~D-65 | D-75~D-80 |
タイプ3(超高性能タイプ) | D-65~ | 室内のスペースや防音材の重さの関係で実現不可 |
D-〇〇という表示は壁の遮音性能を表し、例えばD-60とされている場合は音を60 dB減衰(弱く)できるという意味になります。従って数値が大きいほど防音室の性能は高くなります。[dB(デシベル)]とは音量を表す単位で、60 dB減衰の場合、100 dB(電車が通る時のガード下程度)を40 dB(図書館内程度)にまで下げることができます。
どのタイプでも集合住宅の方がD値が大きいのは、集合住宅は隣居が密接しているので、同じ用途でも戸建て住宅よりも防音性能を高める必要があるからです。
なお、表1-1のD値は500 Hz辺りでの遮音性能であり、防音室単体ではなく隣家とを隔てる壁の遮音性能も含めた数値となります。(防音室だけで遮音しようと闇雲に性能を上げてもコストがかかるので、効率的に防音するために家自体の遮音性能も加味して考えています。)
管楽器や電子楽器に必要な遮音性能
では肝心の「管楽器や電子楽器を安心して演奏できる遮音性能」はどのくらいなのでしょう。
答えからいうと、ズバリ
- 戸建て住宅 → 65 dB減衰(D-65)
- 集合住宅 → 75~80 dB減衰(D-75~D-80)
です。
従って弊社の防音室に当て嵌めるとタイプ2が適切ということになります。
ただし、管楽器の種類によってはワンランク下の防音性能であるタイプ1をおすすめするケースもあります。
その場合どこで線引きするのかというと、バリトンサックスのラッパ部分の太さを基準としています。
フルートやトランペットのようにバリトンサックスよりも細い場合は、出る音が高音域なので防音しやすく、タイプ1の防音室でも対処できる可能性があるからです。
逆に管楽器の先がバリトンサックスよりも太い場合は、低音域が強いためタイプ2の防音室を推奨しています。
引用:ヤマハfacebook、椿音楽教室
また、電子楽器の中では電子ドラムが要注意です。
スピーカーから出る音はボリュームをコントロールできますが、パットを叩く音やペダルを踏む音は制御が利かないからです。
打楽器は固体を直接伝わる衝撃音が生じるので、特に防音性を向上させなければいけません。
用途を含めた3タイプの防音室を表1-2に示します。
表1-2 Budsceneの防音室の遮音性能と用途
遮音性能 (戸建て住宅) |
遮音性能 (集合住宅) |
推奨用途 | |
タイプ1(標準タイプ) | D-55~D-60 | D-70~D-75 | ・ピアノ ・ヴァイオリン ・ホームシアター ・ボーカル録音など |
タイプ2(高性能タイプ) | D-60~D-65 | D-75~D-80 | 管楽器 ・トロンボーン ・ホルン ・チューバなど 電子楽器 ・エレキギター ・エレキベース ・電子ドラムなど |
タイプ3(超高性能タイプ) | D-65~ | 室内のスペースや 防音材の重さの関係で 実現不可 |
打楽器 ・ドラム ・和太鼓など |
防音室の作り方としては、タイプ1が防音層1層であるのに対し、ワンランク上となるタイプ2は防音層が2層となります。
単純計算すると使う材料も2倍、手間も2倍かかり、費用的にはタイプ1の1.5倍ほどになるでしょうか。
楽器別に必要な遮音性能についてはこちらでも解説しています。どうぞご参照ください。
【【戸建て住宅】楽器別の防音室の性能】
吸音対策
演奏する環境を整えるには、反射音への対策である吸音も重要になります。
ただし、管楽器と電子楽器では適切な吸音バランスが異なります。
管楽器
管楽器の場合は、吸音のし過ぎに注意しましょう。音が殆ど響かない空間になってしまうと音が跳ね返ってこないので、吹く加減が判らなくなってしまいます。
コンサートホールなど、自分が発表する場と響きが全く違う環境にするのは練習場としておすすめしません。
管楽器スタジオの吸音のコツは、最初は薄味にしておくことです。
はじめは少なめの吸音材を設けておいて、必要であれば後から調節しつつ徐々に足していくようなかたちがよいでしょう。
1回取り付けた吸音材を外すよりも新たに設置する方が簡単ですし、無駄なお金もかかりません。家具などを配置した後に段々とカスタマイズしていきましょう。
吸音の仕方はこちらをご参照ください。
【響きを追求!理想の音空間を実現するには?!】
電子楽器
電子楽器の場合は、吸音のし過ぎに注意する必要はありません。
反射音を押さえたい時はガンガン吸音材を貼ってOKです。
防音体験をしよう
防音室を創りたい場合は、どのくらいの遮音性能でどの程度防音できるのかを1度体験しておくとよいでしょう。
防音室体験での感覚・感想を設計段階から反映できます。
弊社でも防音ショールームを設置しているので、予約が必要ではありますが是非お気軽にお立ち寄りください。
予め防音室をどんな用途に使うのかおうかがいした上で、ベストな環境をご案内・ご提案できるように努めます。
管楽器や電子楽器であれば持ち運べるので、ご訪問の際は是非実際に楽器を持ってきてください。その場で演奏し、響きを確認していただけます。
また外に漏れる音をチェックしてもらえるため、どなたかと一緒のご来訪も大歓迎です。
防音室創りは高額ですので、必要な遮音性能の設定を見誤って後悔することのないようにしましょう。
まとめ
管楽器や電子楽器にスポットを当てて、近隣から苦情が来ないようにするにはどのくらいの防音性能が要るのかを解説いたしました。
管楽器や電子楽器を安心して演奏するためには、戸建て住宅で65 dBほど、集合住宅で75~80 dBほどの減衰値が必要となります。
適切な遮音性能の防音室を創り、快適な空間で思いっきり演奏を楽しみましょう。
音について悩んでいること・迷っていることなどがありましたら、是非バドシーンのオフィスにいらしてください。
ご相談・ご依頼などいつでも承ります。
防音ショールームの見学・体験もお待ちしております♪
もっとお気軽に、以下の連絡手段からもご連絡いただけます。
- 問い合わせページ
- 電話:03-4400-7678
- メール:info@budscene.co.jp
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最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 電子楽器、アコースティックな楽器とは何ですか?
A. 電子楽器は電気回路を利用している楽器を指します。(例:エレキギター、エレキベース、電子ドラム、電子ピアノなど)
これに対し電気を使用しない楽器のことをアコースティックな楽器と呼び、主に電子楽器が存在する楽器において電子楽器と区別するために使われます。(例:アコースティックギター、アコースティックベース、生ドラム、アコースティックピアノなど)
アコースティックな楽器と電子楽器の主な違いを表2.に示します。
表2. アコースティックな楽器と電子楽器の違い
アコースティックな楽器 | 電子楽器 | |
特徴 | 楽器自体が振動して音を出す | 内蔵している装置で振動を電気信号に変換し、アンプやスピーカー、ヘッドフォンなどから音として出力する |
メリット | ・楽器だけで演奏できる | ・音量や音色を調節できる |
デメリット | ・音量を調節できない | ・周辺機器や電源が必要 |
サイズとしてはアコースティックギターやアコースティックベースの方がエレキギター、エレキベースよりも大きく弦も太いので、弦を押さえづらくなります。また、生ドラムは演奏に2帖ほどの面積が要りますが、電子ドラムは1 m2ほどですみます。
Q. 築34年の鉄筋コンクリートのマンションに住んでいます。6帖の部屋でエレキベースを弾きたいのですが、壁や床に石膏ボードや吸音シートは何枚ほど必要になりますか?
A. 床・壁・天井に防振をしっかりと施し、独立した構造で防音室を創る必要があります。弊社が施工する場合には2層の防音構造として、床・壁・天井1 m2あたり2層で45 kg~80 kgの質量をかけることを提案するでしょう。石膏ボードや遮音シートでそれだけの質量を確保することは困難だと思いますよ。
Q. 部屋でボクシングバッグを叩くことがあるのですが、防音のためにはどういったことをしたらよいでしょうか。床には緩衝材のようなものを敷いています。次に引っ越すマンションでは角部屋などを考えているのですが、防音を基礎とした選択をしたいです。
A. サンドバッグを叩く衝突音は非常に大きく、測定したら恐らく90 dBを超えると思われます。
手とボクシングバッグの衝突音に対しては、壁や天井を防音する必要性があります。
ボクシングバック自体の振動が階下へ伝わるのを抑えるには、床に天然ゴムやクッション材、合板などで、何度も繰り返すようなミルフィーユ構造をとり防振を図りましょう。
引越しの際には角部屋・2重床・天井に懐あり・隣居との間に1部屋挟む、といったことが最低条件となるでしょう。
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