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遮音シートと吸音パネルを足したら防音性能はどうなった?

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皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。

今、ちまたで噂の「遮音シートと吸音パネルを壁に貼るだけで騒音を防げちゃうんだって♪」という都市伝説をご存知でしょうか?

いかにも信憑性がありそうですが・・・。
実際はどうなんでしょう?!

そこで今回は私たちBudscene調査隊が、この都市伝説が本当なのかを検証して確かめてみようと思います。
皆さまも是非お付き合いください^^

宇宙人

検証に使用したもの

検証には以下のものを使用しました。

材料

  • 遮音シート 940 mm×10 m巻、厚さ1.2 mm、重さ19 kg/巻(ダイケン  940SSE  GB03053E)
  • 吸音パネル(GCボード) → 厚さ50 mm、密度32 kg/m3(パラマウント硝子工業 厚手ガラスクロスGC4CS)
  • 画鋲(仮釘を推奨)
  • スプレーのり
  • 両面テープ(インサルピンとボタンワッシャーでも可)

工具

  • カッター → 遮音シート切断、吸音パネル切断
  • メジャー、定規
  • 脚立

検証手順

検証は次のような手順で行いました。

部屋の元々の壁の遮音性能を確認

まず、検証に使う部屋の壁の遮音性能を測定します。

隣室でピンクノイズを発生させ、検証を実施する部屋でどのくらい聞こえてくるのかを騒音計で読み取ります。

ピンクノイズ発生

 

測定は、5つのオクターブバンド(125 Hz、250 Hz、500 Hz、1000 Hz、2000 Hz)で行いました。
そうすることで92.5~2960 Hzの周波数の音を読み取ることができ、人間の可聴域(20~20,000 Hz)の中の、防音しにくい低音域の遮音性能について知ることができるからです。

詳しい測定方法はこちらで述べています。
【防音室の正しい性能測定】
どうぞご参照ください。

遮音シートを貼る

次に、遮音シートを天井高さと同じ長さでカットし、画鋲で壁に仮留めします。
隣り合う遮音シートどうしは10 cmほど重ねています。

遮音シート

カットはカッターでできますが、その際、下に段ボールを敷くと意外と貫通しやすいので注意が必要です。私たちは吸ホル養生ボードを敷きました。

遮音シートを留めるのは一般的な画鋲でも可ですが、壁に穴の跡を残したくないので今回は芯の細い仮釘を利用しました。

仮釘_遮音シート用

吸音パネル(GCボード)を貼る

次に、吸音パネル(GCボード)を遮音シートの上に貼ります。

吸音パネルの加工

吸音パネルとして用いたGCボードは、グラスウールを同じ素材であるガラスクロスで囲い、ガラス繊維が飛散しないように作られています。
そのためGCボードを切断して使う場合は、切断面が切りっぱなしにならないように加工する必要があります。
そこで生地だけを、必要な大きさより10 cmほど大きくしてグラスウールをしっかり包みこみました。

<GCボードの加工の仕方>

  1. 吸音パネルを生地ごと、必要な寸法よりも10 cmほど大きくカット(カッターで切断)
  2. 裏返して必要な寸法に罫書きを入れる
  3. 生地を切らないようにめくっておく
  4. グラスウール部分だけを切断
  5. スプレーのりで、めくった部分の生地とグラスウールを接着
吸音パネルの作り方

吸音パネルの設置

吸音パネルを壁の大きさに加工した後は、両面テープで遮音シートに固定します。
両面テープの代わりにインサルピンとボタンワッシャーなどを使ってもOKです。

吸音パネル

性能測定

最後に、再び隣室からピンクノイズを流し、どのくらい音圧が減ったかを検証します。

遮音シート+吸音パネルの遮音性能の測定結果は以下の通りでした。

周波数[Hz] 遮音性能(実測値) [dB]
125 4
250 6
500 7
1,000 9
2,000 20

 

1,000 Hz以下では1桁台の値を示しており、これは誤差の範囲といえます。

測定結果からは遮音シート+吸音パネルの設置だけでは、遮音性能が低く防音効果はほぼ得られないことがわかりました。
DIYを実施しても無駄に終わってしまうだけでしょう。

かろうじて2,000 Hzでは20 dBに届きましたが、高音は防ぎやすいので、わざわざ労力と費用をかけて今回のようなDIYをするなら、別のやり方に注力した方がよさそうです

防音対策には元々の壁の性能も重要であり、元から遮音性能が高いような重さのある壁であると、後から施工した効果が薄まります。
今回は木造住宅の間仕切りで検証しましたが、鉄筋コンクリートなどもっと重い壁ならさらに効果は期待できないでしょう。

まとめ

検証した結果、都市伝説「遮音シートと吸音パネルを壁に貼るだけで騒音を防げちゃうんだって♪」は、根拠のない噂話でした。

この都市伝説を信じてうっかりDIY施工すると、全く効果がなくてがっかりしてしまうかもしれません。
せっかく手間暇・費用をかけて取りかかるなら、きちんと効果のある施工をしましょう。

というDIYがおすすめです。

私たちBudsceneは様々な防音情報を発信していますので、是非正しい知識を得てDIYの参考にしていただければと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. 遮音材と吸音材の違いがわかりません。
商品のタイトルにどちらも書かれてあることもありますが、どうしてですか?
A. 遮音材と吸音材にはそれぞれ次のような効果があります。

  • 遮音材・・・その質量で空気の振動を遮る効果
          気密を上げて空気の流動を防ぐ効果
  • 吸音材・・・室内の反射音を調整する効果

どちらも書かれている場合は、販売している側が商品自体の効果を理解しておらず、説明がおかしな状況になっていると思われます。

Q. 遮音シートを二重、三重にした場合、効果は上がりますか?
A. 襖やドアのような元々の質量が少ない場所であれば、重ねて質量をかせぐことで効果の向上を期待できます。

Q. 騒音発生側(隣室)に施行したり、遮音シートと吸音パネルを貼る順番を入れ替えたりしても、効果は変わらないのですか?
A. 厳密にいうと音源側に「音源→吸音→遮音→壁→隣の部屋」と施工するのが一番効果的です。また、双方の部屋の広さによっても遮音性能は変わってくるでしょう。
しかし、いずれも今回の施工と3 dB以内の誤差程度とお考えください。
今回は自室側をDIYで施工する目的だったので、「音源→壁→遮音→吸音」という仕上がりにしました。

Q. 質量が重い方がよいのなら吉野石膏のタイガースーパーハードはどうでしょう?
A. 同じ厚さ12.5 mmで比較するとスーパーハードは15.2 kg/m2、一般的な石膏ボードは8.5 kg/m2であるので、防音効果はスーパーハードの方が優れています。
しかし、コスト・加工のしやすさ・入手のしやすさなどの面ではプラスターボードの方がDIYしやすいと思います。

Q. 天井(プラスターボード)の上からGCボード50 mmを付けようかと思っているのですが、その場合でも強度的にボタンワッシャーのようなもので施行して大丈夫なのでしょうか?
A. GCボードは軽いので、下記URLのようなピンをしっかり接着すれば落ちてくることはありません。
https://item.rakuten.co.jp/yamayuu/pk55d/
映画館の天井なども同様の施工をしているところが多いので、機会があったら天井を見てみてください。

Q. 自室から廊下にキーボードなどの打鍵音が響いて困っているのですが、木のドアに今回の施工をするのは効果ありますか?
A. まずはキーボードを叩く音が空気で伝わっているのか、机などの固体を伝わっているのかを確認してみてください。

  • 空気で伝わっている場合 → 今回の施工でOK(遮音シートでドアの質量を増す、気密を上げる)
  • 固体で伝わっている場合 → キーボードの下や、机の脚と床の間に厚めのフェルトやカーペット、防振ゴムなどを敷く

といった対策が有効でしょう。

Q. 2階に自室があるのですが、1階の家族から「笑い声や椅子のゴロゴロ転がる音がうるさい」と苦情がくるので対策を考えています。
A. 笑い声に関しては、まずはドアや廊下、階段から抜けている音がないか探してください。
椅子の床振動を少しでも抑える方法としては、床の上にジョイントマットを敷き、その上にタイルカーペットというのはいかがでしょうか?
吸音効果を考えなくてもよい場合はクッションフロアでもOKです。

ジョイントマット_タイルカーペット_クッションフロアQ. スピーカーを大型のものにしたら、低域から中域の響きが強めに感じるようになりました。スピーカーの定在波抑制のため、反射音を調整したいと思っています。
スピーカーの対面(視聴側)の壁にWhiteLeaf 製の吸音材を貼ろうかなと考えているのですが、効果はあるでしょうか。
スピーカー背面はオーディオ用6段重ねのタワータイプ吸音、拡散ボードを両脇と中央に配置しています。バスレフポートは全面と底2ヶ所にあります。
A. トールボーイに変わると定位も変わってきますもんね。
低い周波数には2.5 mmの合板がおすすめです。
販売されている吸音パネルは250 Hz以下の周波数にはほぼ効果がないので、
壁側から→吸音パネルを積層→薄ベニヤの2.5 mm合板 がよいでしょう。
ルームチューニングの場合、全体的な吸音率を向上させることと、一次反射面に拡散や吸音を行うと効果的です。

関連動画

【遮音シート+吸音パネル】

【防音アドバイザー 並木勇一チャンネル】

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並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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