見積もりは金額で決めるな!防音室を何のために創るのか、その目的を達成できなければ意味がない
皆さん、こんにちは。防音アドバイザーBudscene並木です。
皆さんは旅行お好きですか?
このご時勢なので控えている方もいらっしゃるかもしれませんね。
さて、旅で重要なのが行き先です。
行き先を決めずにフラッと立ち寄ってみる、なんて旅もたまにはいいかもしれませんが、観光やグルメなどその土地特有の目的があったら、初めに行く先を決めておきたいですよね。
防音室創りも同じです。
防音室を創るには明確な目的があるので、金額だけで決めずにしっかりと行き先(=防音性能)を決めて進まないと、目的を達成できません。
今回は、防音室創りの旅へ出るために欠かせない見積もりの取り方について解説していきます。
目次
金額を決める前に
見積もりを決める際に必要不可欠なのが「防音性能をどのレベルにするか」です。
この防音性能が防音室創りの旅の行き先=ゴールであり、工事ではここへたどり着くために様々な工程を踏んでいきます。
では防音室の性能は一体どのように決められていくのでしょうか?
まずはゴールから決めよう
皆さんが防音室を利用するにあたって共通している目的は、「近隣から苦情を受けたくない!」これに尽きると思います。
この目的を達成するためには「防音室にはどのくらいの性能が必要になるか」というゴールを設定する必要があります。
そして、そこで重要になるのが「防音室内で発生する音量A」と「環境騒音の音量B」の2点です。
どんな用途で利用するか
最初に、「防音室内で発生する音量A」の方からみていきましょう。
こちらは防音室を利用する用途から大体の音量を予想します。
主な用途の音量目安を以下に示します。
- ピアノ → 95 dB
- ヴァイオリン → 90 dB
- ドラム → 100 dB
- ボイスチャット → 75~85 dB
- ホームシアター → 90~100 dB
目安となる音量については、こちらで詳しく述べています。
【苦情が来ない防音室の性能は?【戸建て住宅編】】
皆さんが防音室を作りたい!と思ったのは何故ですか?
まずは用途や理由をはっきりさせておきましょう。
環境騒音とは
次に環境騒音についてご説明します。
環境騒音、耳慣れない言葉ですね。
始めて聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
環境騒音とは、日常を営む上で自然に耳に入ってくる雑音全般のことです。
車の走る音や家電の稼働音、人の話し声、雨風の音などの全ての総称です。
詳しくは、
【環境騒音ってなに?実は騒音問題と密接な関係です】
をご参照ください。
防音室から漏れる音は必ずしも「0」にする必要はなく、環境騒音に合わせるレベルでOKです。
何故なら近隣の人は、室内で発生した音がもし外へ漏れていたとしても、他の環境騒音に紛れていれば気にならないからです。
もちろん苦情も来ないでしょう。
用途に合わせて性能を決定しよう
これらのことから、防音室に必要な防音性能は、以下の式で求められます。
必要な防音性能 = A - B(A:防音室内で発生する音量、B:環境騒音の音量)
例えば、環境騒音40 dBの場所で、ピアノを気兼ねなく弾くための防音室を創りたい場合、
必要な防音性能 = 95 dB - 40 dB = 55 dB
となり、55 dB以上の防音性能が必要になります。
このように、防音性能を決めるには利用用途と環境騒音の大きさを知ることが重要となります。
詳しくは、
【自分が欲しい防音室に必要な性能は?】
をご参照ください。
時間帯を設定してコスパの良い工事を
また、環境騒音の大きさは人間の活動量に比例するため、時間帯によって変化します。
活動量の多い昼間には環境騒音が大きいので騒がしく、活動量の多い夜間には小さいので静かになります。
従って、環境騒音の想定を間違えると、防音性能のゴール設定も誤ってしまいます。
その結果、ゴールへ到達しても目的(=近隣から苦情が来ないようにする)が達成できない、または余分な費用がかかってしまうことになります。
例えば
- 深夜に映画鑑賞をしたいのに昼の環境騒音に合わせると → 性能が足りず苦情が来る
- 昼にピアノを弾くことが多いのに夜の環境騒音に合わせると → オーバースペックとなり、本来かけなくもよい費用がかかる
という事態になりかねません。
こういったことを避けるためにも防音室を利用する時間帯の環境騒音に合わせて性能を決めるとよいでしょう。
見積もりの比較検討の際に
ドラム(100 dB)を叩く用途で防音室を作りたい場合に、A社、B社、C社から見積もりをとり、以下のような結果が出たとします。
見積もり価格 | 推奨する防音性能[dB] | |
A社 | 高い | 75 |
B社 | 中間 | 65 |
C社 | 安い | 55 |
ここで値段だけに注目して、安易にC社を選ぶのは危険です。
安いには安いなりの理由があるからです。
安いということは材料や工賃がそれなりであるため、低い防音性能しか確保できません。
しかし、低い防音性能で本当に「近隣から苦情が来ないようにする」という目的を達成できるでしょうか?
3社に依頼をした場合、最終的にこういう結果になるでしょう。
A社 「ドラムを叩ける部屋には減衰性能75dB必要です」 → 近隣からの苦情は来ない
B社 「ドラムを叩ける部屋を65dBで作ります」 → 近隣から苦情が来る可能性がある
C社 「55dBの防音室を作ります」 → 間違いなく近隣から苦情がくる
B社とC社はゴールが間違っているのですね。
繰り返しますが、そのゴール(=防音性能)の設定で目的を果たせるのか、しっかりと確認することが大切です。
手順としては
- 利用用途を明確にする
- 1.に合った性能仕様を決定
- 性能を実現できる会社かを比較検討
- その上で金額を比較検討
となります。
3、4の段階を一まとめにせず、きちんと分けて検討することがポイントです。
世の中の業者も色々です。その中から信頼できる会社を見極めて依頼しましょう。
打ち合わせをする際には、曖昧な伝え方ではなくできるだけ具体的に伝えるよう心掛けてください。
例:×「ドラムを叩ける部屋にしたい」 → 〇「ドラムを叩いても近隣から苦情がこない部屋にしたい」
そして「苦情は絶対来ません」と答えられるような業者をおすすめします。
まとめ
防音室創りの旅は「近隣からの苦情が来ないようにする」と、目的が明確です。
まずは目的を遂げるための行き先=防音性能を設定して、「安物買いの銭失い」を防ぐために安易に金額だけで決めないようにしましょう。
私たちBudsceneは皆さまが無事に目的地までたどり着けるように協力・応援しています。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 生活音と環境騒音は同じですか?
A. 環境騒音という大きなくくりの中に生活音も含まれます。
生活音とは、生活を送る上で発生する音のことです。(例:足音、ドアを閉める音、テレビの音など)
環境騒音とは、生活音を含め自然に耳に入ってくる雑音全般のことです。(例:車の走る音、家電の稼働音など)
騒音とつくので大きく不快な音と勘違いしがちですが、特にそういうわけではありません。
Q. 環境騒音ってどのくらいの音量なんですか?
A. 地域や時間帯でも違いますが、大体の目安として
- 昼 → 45 dBほど
- 夜 → 35 dBほど
と考えてよいでしょう。
Q. 金額と性能以外の見積もりチェックポイントを具体的に知りたいです。
A. 内装のデザインやレイアウト、工事後の性能保証の項目をチェックしましょう。
見積もりの範囲がどこまでであるのか工事前に把握しておくことが大切です。
本記事の続きである、こちらでも詳しく述べていますのでご参照ください。
【防音室の見積もりのチェックポイント】
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