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防音と吸音の違い「吸音は防音しない」

更新日:

皆さん、こんにちは。防音アドバイザーBudscene並木です。

いよいよ寒さが厳しくなってきましたね。クリスマスにお正月にバレンタイン・・・冬はイベントも盛りだくさんです♪

そうそう、日本の伝統的な行事である節分も忘れてはいけません。
「鬼は外~!福は内~!」って、鬼も大変ですね。外から入ったらすぐに追い出されて・・・。
ちなみに家では毎年私が鬼役です^^;

豆まき

 

今回は、節分の鬼のように「外から入ってくる」「外へ出て行く」音への対策、福のように「室内に留まっている」音への対策について解説していきます。

似て非なる「防音」と「吸音」

似たイメージの言葉に「防音」と「吸音」があります。
しかし防音と吸音は実は全く別の意味合いを持ちます。

大雑把にいうと、防音は室内から室外、室外から室内へ伝わる音への対策吸音は室内の音を整える対策になります。
節分でいうと、外へ出ていく鬼を弱くしたり、外から入ってこようとする鬼を減らしたりするのが「防音」で、室内で福を心地よく味わうのが「吸音」ということですね。

もう少し詳しく説明していきましょう。

防音とは

防音とは室内から室外へ(室外から室内へ)の音漏れを小さくすることです。

方法としては

  • 遮音・・・材料を通して音を遮り音を弱める方法。
  • 防振・・・振動源(音源)からの振動を小さくするために、壁や床との間にゴムなどクッションを挟む方法
  • 制振・・・支柱を増やすなどして、音源の振動を直接抑える方法。

などがあります。

遮音に使う材料には重さがあるものの方が適している、防振にはミルフィーユのような構造が効果的、といったようなコツやポイントがそれぞれ存在します。

防音については、こちらで詳しく述べているのでご参照ください。
【防音室に最も重要な「重さ」と「防振」の話】

吸音とは

一方、吸音とは音のエネルギーの一部を熱エネルギーへ変えて、音を小さくすることです。

原理としては、「空気が音の伝播により振動することで空気と吸音材との間に摩擦が生じ、音のエネルギーが摩擦熱へと変換されること」を利用します。

従って吸音材は摩擦面積を大きくするため、細かい綿のような繊維状(グラスウール、ロックウール)や、小さな気泡がたくさん開いているスポンジ状(ウレタンフォーム)になっています。

<代表的な吸音材>

吸音材
    グラスウール           ロックウール          ウレタンフォーム

 

また吸音材は室内の反射音の調節に効果を発揮します。
小さい穴が多数空いている構造によって音が乱反射して特定の方向への強い反射音がなくなるため、吸音材を使うと反射音の伸び(サスティーン)が短くなり音が響きにくくなるのです。

心地よい音環境にするには

遮音と吸音のバランス

室内を心地よい音環境にするには、遮音と吸音のバランスが大切です。

遮音も吸音も空気を介して伝わる音に対して効果を発揮する点は同じです。

しかし、遮音にこだわると気密性が高くなって音エネルギーの行き場がなくなり、室内で音の反射が繰り返されます。

詳しくは、
【音の逃げ道】
をご参照ください。

また吸音だけに注力しても音が遮られず、室外への配慮がおろそかになってしまいます。

快適な音空間を創るには、室外への音漏れを遮音や防振で減らして、室内の反射音を吸音材で適度に調節するのがベストです。
豆をまいて鬼を弱くして追い出し、室内に招いた福をおもてなしするのと似ていますね。

反射音が心地よく作用している例と不都合に作用している例を以下にあげます。

  • 反射音が心地よい例:ホテルのエントランス、視聴覚室、音楽室(吸音材が上手に使われており、反射音が騒がしく聞こえない)
  • 反射音が不都合な例:体育館(位置によっては先生の口からの直接音より反射音の方がより大きく聞こえ、話がよく聞き取れない)

 

 

直接音と反射音

日常で聞こえる音は、音源から直接聞こえる直接音と、壁や天井などに当たって跳ね返ってから聞こえる反射音の2種類に分けられます。
割合としては、直接音が耳に届く音の60%ほど、反射音が40%ほどです。

そして壁や天井に貼った吸音材はこの60%の直接音には作用しません。

従って、防音室の吸音をどんなに頑張っても40%の反射音にしか効果が無いので、吸音材のみで室内の防音効果を高めようとしても効率が悪くなります

重たい素材と防振構造で防音を徹底的に行いながら、壁・床・天井に吸音効果を発揮できるものを必要なだけ貼る方法がコスパよくおすすめです。

例えば、吸音効果がある身近なアイテムとして掛け布団があります。
そこで、布団にくるまって大声で叫んでいる人を想像してみてください。
そうですね、掛け布団を何枚も覆いかぶって床にうずくまった状態で「惚れてまうやろー!」と叫んでいるところがいいですかね。
その時、叫び声には

  • 布団の重さの遮音効果
  • 素材による防振効果
  • 反射音を抑える吸音効果

がかかっているはずです。

叫んでいる側は、吸音効果がMAXに効いて反射音がほぼなく、自分の口から出ている直接音しか耳に届いていないため、声がそれほど遠くまで聞こえていないと認識するかもしれません。

しかし、布団はそこまで重くなく、弾性力の点でも防振効果に期待できません。
従って実は遮音効果も防振効果もないも同然であり、音は外に筒抜けです。
聞こえていないと思っていた音が、実は周囲にバレバレで「王様の耳はロバの耳」状態のため、相当恥かしい思いをしてしまいます^^;

 

反射音と吸音材については、こちらでも述べています。
【反射音を減らしたい!壁の向こうの吸音材について解説】

3 まとめ

今回は防音と吸音の違い、吸音の原理や吸音材の構造、室内の快適な音環境の整え方などについて解説しました。

節分の豆まきでいうと、鬼(出ていく音・入ってくる音)は防音で弱体化させ、福(室内の音)は吸音でべストな状態に調節しましょう、ということでした。

私たちBudsceneは暮らしの中での音との上手な付き合いを応援しています。
これからも、皆さまが少しでも快適に過ごせるような空間を提案していきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。

質問コーナー

Q. 音エネルギーは熱エネルギー以外、何か他のエネルギーに変わりますか?
A. 身近な例としては電気エネルギーに変わります。
バドシーンでも防音室完成後に騒音計を使って音量を測定しますが、騒音計のマイクで音エネルギーを電気エネルギーに変えて数値として読み取っています。
テレビやパソコンにも付いているスピーカーは、逆に電気エネルギーを音エネルギーに変換して音を出しています。

熱エネルギーに関しては、熱で空気を膨張させ、ピストンやシリンダーを動かして力学的エネルギーに変えることもできます。
これは自動車などのエンジンの原理に応用されています。
昔の蒸気機関車だともっと想像しやすいかもしれません。
そして、乗りものが動けば音が出て音エネルギーが生まれます。

このようにエネルギーは絶えず変換し循環しており、私たちはそれを様々な形で利用しています。

蒸気機関車

 

Q. 吸音材のおすすめを教えてください。
A. 主な吸音材の特徴を下記に示しますので、用途に合わせてお使いください。

吸音材 グラスウール・ロックウール
(無機繊維系)
ウレタンフォーム
(発泡プラスチック系)
セルロースファイバー
(木質繊維系)
吸音性
価格
特徴 ・吸音性の他、断熱性にも優れている

・袋に入れたまま使うと便利(手で触れると刺さる場合がある、繊維が散らかる)

・吸音性の他、断熱性にも優れている

・施工しやすい

・吸音性の他、遮音性、断熱性にも優れている

・調湿性があり、結露予防に効果

 

Q. 遮音材のおすすめを教えてください。
A. 石膏ボードや合板がコスパが良くおすすめです。
ただし、どの材料にもいえることですが、材料の性能だけに頼るのではなく、適切な施工法と合わせて初めて防音効果を発揮します。
間違ったやり方で無駄な工事を行わないように、正しい知識を得つつ防音工事に着手することを推奨します。

遮音材と適切な方法については、こちらで詳しく述べているのでご参照ください。
【防音DIY】石膏ボードを貼るだけではダメ?!防音のコツを伝授

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並木 勇一 株式会社Budscene代表取締役
防音室・ホームシアターの専門家として、防音室の設計デザインから音響空間のデザインまで手掛けています。 音に関するお悩みを解決するきっかけになればと考え、正しい情報を元に防音に関するノウハウや情報を発信しています。
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