宣伝文句に騙されないで!遮音シートよりも効果的な防音材とは?
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
落語のなぞかけってうまいこと言いますよね!
私もひとつ挑戦してみます♪
「てるてる坊主とかけて、遮音シートと説く!その心は?!」
「壁にかけると何となく効くような気がするけど、効果はおまじないと同じレベルです!」
え?そんなにうまいこと言ってないって?!まぁご愛敬ということで^^
今回は、おまじないグッズではなく、本当に効果のあるコスパがよい防音材や施工方法についてご紹介します。
目次
正しい防音とは
ちまたには、いかにも買いさえすればすぐに効果がでるかのような謳(うた)い文句の商品があふれています。勉強系教材やダイエット商品etc.、もちろん防音業界も例外ではありません。
そこで大げさな宣伝や曖昧な表現にうっかり引っかからないように、まず言葉の意味を正確に知っておく必要があります。
防音とは何を指すのか、遮音と吸音はどう違うのか、ということを知っておきましょう。
色々な防音方法
防音とは文字通り音を防ぐこと、つまり音が自分の耳へ届く前に振動を減衰させて届きにくくすることです。
防音には主に次のような方法があります。
- 遮音・・・材料を通して音を遮り振動を弱める方法
- 防振・・・振動源(音源)から伝わる振動を小さくするために、壁や床との間にゴムなどクッションを挟む方法
- 制振・・・支柱を増やすなどして、音源の振動を直接抑えこむ方法
一方、遮音と混同されやすい吸音ですが、こちらは音エネルギーを摩擦の熱エネルギーに変える方法です。熱に変わるエネルギーはほんのわずかしかないので、音を減衰させる効果はあまりありません。ただ、吸音材の気泡や繊維が音をあちこちに反射させるので、音の聴き心地を柔らかくする効果があります。
詳しくはこちらをご参照ください。
【防音と吸音の違い「吸音は防音しない」】
従って吸音は防音に含まれず、もちろん遮音とも異なります。
この定義が曖昧だと、色々な防音材の謳い文句が正しいのかそうでないのか判断ができません。
遮音シートの注意点
遮音シートは、その名前から誤解を受けやすく、間違ったイメージを持たれることが多々あります。
謳い文句につられて高額な価格で買ったのに、使い方を誤って結局求める性能を得られなかったケースをたくさんみてきました。
そこで遮音シートを使う際の注意点を3つご紹介します。
①遮音シートの正体は吸音材?
世の中には、遮音と吸音の定義が曖昧な業者により、あたかも大きな遮音効果を得られるかのように宣伝されている防音商品が山のようにあります。
そして、正体は吸音材であるそれらを、遮音材だと信じて高額で買っている人たちも大勢います。
防音に対しての知識を深め、見極める目を養って、商品を購入する際には慎重に吟味するようにしましょう。
②遮音シートは遮音性能が高くない
防音には「重さ」と「防振」が重要です。
そのため、遮音材として使うなら重さがある素材に費用をかけた方が効率的な防音ができます。
詳しくは、こちらをご参照ください。
【防音室に最も重要な「重さ」と「防振」の話】
さて、遮音シートの重さですが、通常販売されている遮音シートは大体2~4 kg/m2ほどの面密度です。
一方、壁によく使われている木材やコンクリートはというと
- 木材:1 cm厚さで1 m2あたり3~10 kgほど
- コンクリート:1 cm厚さで1 m2あたり24 kgほど
の重さになります。
比較すると、遮音シートが非常に軽いことがわかりますね。
そしてこの軽さでは、皆さんが遮音という名前から想像するほどの性能を実現できないことが多いのです。
木造の住宅なら、現状の遮音性能がそれほど高くないので、遮音シートくらいの重さでも重量嵩(かさ)増し分の割合が高くなり多少の効果は感じられるかもしれません。
しかし鉄筋コンクリートの建物だと既にそれなりの遮音性能がある状態なので、そこに遮音シートを加えても焼け石に水です。
従って遮音シートにコストをかけるなら、その分もっと重たい素材を購入した方がお得です。
③遮音シートの本来の使い方
遮音シートと銘打ってあったら、いかにも音を遮ってくれそうですよね。
だから壁に貼れば隣からの音もこちらからの音もきっと弱めてくれるだろう、そう思ってしまいます。
でも違うんです。
遮音シートは本来、壁の中の気密・防振を少しでも高める用途で、石膏ボード同士の間にサンドイッチのように挟み込んで使います。
そのため、音を遮る目的でそのまま壁に貼ってもあまり効果を得られません。
遮音シートに代わる効果的な防音方法
ここまで、世に出回っている遮音シートが実はあまり遮音性能が高くないという話をしてきました。
では、他に遮音性能が高い別の材料はあるのか?ということになりますが、あるんです!
それが石膏ボードです。
石膏ボードは重さ・コスト・加工性の3拍子揃った、非常に優秀な防音素材です。
1枚12.5 mmの厚さであれば1 m2あたり9 kgほどであり、低価格で遮音シートの2~4倍以上の重さを確保できます。
詳しくはこちらをご参照ください。
【防音するならこの素材を使うべき!】
カッターなどで自由に大きさを変えられるので、DIYにも重宝されます。
加工の際にできてしまった隙間は、音漏れ防止のためコーキング材を使って埋めてください。
画像のコーキング材はアクリル系ですが、皆さんがDIYで使う際はシリコン系がおすすめです。
コーキングすることによって、石膏ボード同士が密着して気密も上がり、シリコンで埋めるので隙間空間の重さも充分に補填できます。
遮音シートと石膏ボードの実際の検証
遮音シートと石膏ボードで実際に防音対策を行い、遮音性能を測定してみました。
500 Hzでの遮音性能[dB] | |
①石膏ボード+遮音シート+吸音材(グラスウール)で防音ブース作成 | 28 |
②石膏ボード+遮音シート+吸音材(グラスウール)で防音壁作成 | 19 |
③遮音シート+吸音パネルを壁に貼る | 7 |
各測定方法や結果の詳細に関しては、以下のコラムで詳しく述べています。
この3種類の防音対策の遮音性能を測定したところ、コストの面を含め、遮音シートより石膏ボードを使う方がより高い効果を得られることが検証できました。
まとめ
防音効果が大きいのは
石膏ボードで創った防音ブース > 石膏ボードを使った防音壁 > 遮音シート+吸音パネルのみ
でした。
防音性能を上げたいのなら、石膏ボードに費用をかけましょう!
限られた予算の中、最大限のコスパで防音DIYができるはずです。
私たちBudsceneは様々な防音情報を発信していますので、是非正しい知識を得てDIYの参考にしていただければと思います。
音について心配ごと・トラブル・疑問などありましたら、いつでも気軽にご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. コーキング、シーリング、パテの違いは何ですか?
A. すべて充填剤に分類されますが、コーキング材とシーリング材は時間が経過しても弾性を保ったままであるのに対し、パテは乾燥後に硬化して伸縮性を失います。
- コーキング材・・・表面のみ硬化して、内部は固まらず弾性を保つ
- シーリング材・・・表面も内部もゴム状のまま弾性を保つ
- パテ材・・・乾燥後は硬化し伸縮しない
今回、石膏ボードの継ぎ目にコーキング材を使うことを推奨したのは、隙間から音が漏れないようにするためです。パテや木工用ボンドなど弾性がないものは、揺れなどで割れてしまう心配があるので使わないようにしましょう。
逆にクロスを貼る仕上げ層には、パテ材を使用してください。コーキング材ではクロス糊がのらなかったり油がにじみ出ることがあります。DIYの際は、使用用途を間違えないように気をつけましょう。
なお、厳密にはコーキングとシーリングにも上記のように違いがありますが、建築業界ではほぼ同じ意味として使われることが多いようです。
Q. 石膏ボードは画鋲やピンで壁に留められますか?
A. 石膏ボード(1820 mm×910 mm、厚さ12.5 mm)1枚は14 kg程度です。
画鋲やピンで刺すだけの固定では重さに耐えられず落ちてしまう可能性があるので、らせん状の溝があるネジ類で留めた方が安心です。
Q. 鉛シートやタングステンシートって何ですか?
A. 鉛は密度11.34 g/cm3、タングステンは密度19.25 g/cm3の重金属で、両方とも重く柔らかいので防音には非常に向いている材質です。鉛シートやタングステンシートはその性質を利用し、優れた制振材として用いられています。
ちなみにこの記事で取り上げている石膏ボードは0.8 g/cm3程度です。この質量差から鉛やタングステンが石膏ボードよりもはるかに防音効果の高いことがおわかりいただけるでしょう。もし鉛やタングステンが安ければ防音室に使いたいところですが、あいにくコストが高すぎて・・・。
Q. 石膏ボード2枚重ねと、石膏ボード+遮音シート+石膏ボードでは効果は変わりますか?
A. 遮音シートは制振効果があるので、中に挟むなら効果があります。
Q. ドアがとても薄く声が漏れてきます。
ドアに石膏ボード+遮音シート+石膏ボードの順で貼ったら効果はありますか?
A. ドアの場合は、ドア自体を重くすることももちろん大事ですが、ドア枠とドアの隙間も考えないといけません。石膏ボードも遮音シートも重量があるので、ドアに貼り付けて重くすると、蝶番が重さに耐えられず壊れてしまう可能性もあります。
まずは、ドア本体とドア枠の間に隙間テープを貼り、床とドア本体の間は毛布などを差し込んで気密を向上させてみてください。
Q. 引き戸の場合、どうやってドア強化すればよいですか?
A. 引き戸(スライドドア)は隙間が広く、戸を重くしようにもレールが重さに耐えられないこともあるので、ドア自体の強化が困難です。
内窓のように、引き違い戸を追加できるなら音はかなり軽減します。
外観や使い勝手はよくありませんが、天井から床に届くような長さの厚手のカーテンを、ドアの前後に垂らすと多少なりとも防音効果を得られるかもしれません。
Q. 窓をDIYで塞いで防音したいと考えています。どういう方法がよいでしょう。
A. 元々のガラスに対しての質量増加と複構造が鍵になってくるので、石膏ボードは1枚ではなく2枚を使って目違い貼りをするのがよいでしょう。
石膏ボードとガラスの間にグラスウールを充填すると結露へのケアもでき、壁とガラスの間で起こる反響を抑えられるので一石二鳥です。
Q. 床の防音対策も壁と同様に考えてよいのでしょうか。
A. 床の場合、話し声などの空気から伝わる音の他に、子供の足音などの固体から伝わる衝撃音についても考えなければなりません。そのため、床に関してはこちらのような浮き構造が最もコスパが良い防音となります。
http://www.awaji-giken.co.jp/
石膏ボードは空気を伝わる音へは遮音効果が高いのですが、固体を伝わる音へはそれほど効果がありません。そのため、DIYで石膏ボードを使い対策する場合は、サウンドカットなどの制振材を用いて石膏ボードと下地を接着するとよいでしょう。
http://naisoushizai.com/catalog/download/pdf/board/yoshino/63.floor.pdf
Q. 下の階に対して防音したいのですが、部屋の床全てではなく、スピーカーのような音源周辺だけに何か敷くのは無意味でしょうか?
A. 本格的に防音をしたいなら床は全面的に対策しないと効果は得られません。
しかし、スピーカーの響きを調整したり、低音域で伝わる床の振動を避けたりしたいならオーディオボードなどが効果的です。
https://www.kripton.jp/fs/kripton/c/audio_board
Q. 家の中で、隣室との間の天井裏の界壁がなく、天井から音が筒抜けです。
点検口より天井裏には上がれるので界壁をDIYで作ろうと思っているのですが、どのようにしたらよいですか?
A. 自分の部屋と隣室の両側からアプローチできるのであれば、次のような施策を行ってください。
- 90 mm×45 mmの垂木を建て、界壁の芯材とする
- 10 mm厚みの16 kg/m3密度のグラスウールを充填する
- 両面に12.5 mmの石膏ボードを貼る
これで15 dBほどの減衰効果が得られ、大分音が聞こえなくなったと体感できるはずです。
Q. 壁全体に石膏ボードだけを貼った場合、どの程度の防音効果がありますか?
A. 石膏ボードを直接壁に貼るより、石膏ボードでもう一枚壁を設ける方が効果を得られます。防音には空気層が重要だからです。
こちらをご参照ください。
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】
Q. 既存の壁に2 cm程度のコンクリートを上塗りしようと思っているのですが、防音対策として効果ありますか?
A. コンクリート壁を設けるのなら、10 cm以上の厚みがないと実感できるような効果は得られないでしょう。
また、コンクリートの比重は2.35なので2 cmの厚みで塗ることができれば9.5mmの石膏ボード約8枚分相当の重さがあります。しかし、空気層が全くないと重さをかけても効果は減ってしまうので、やはり空気層を設けた石膏ボード壁がベストな防音対策と考えます。
Q. 石膏ボードは何枚まで重ねられるでしょうか。
A. 3枚までを目安限度にしてください。
重量に関しては、木造の2階以上であれば施工はNG、鉄筋コンクリート造であれば問題なく施工できるでしょう。
Q. ダンボールを2~3枚重ねて厚みをだし、その上に遮音シートと吸音材を貼るのは効果ありますか?
A. その内容だと雀の涙程度の性能向上だと思ってください。
Q. コンテナをカラオケルームとして利用したいのですが少し音漏れするようです。
どのように対策したらよいですか?
A. 音漏れの原因がドア、換気、エアコンなどではないと判断できれば、遮音シートを敷き石膏ボードを上から貼る方法で音漏れを抑えられるはずです。
ただし、カラオケルームとして利用するということで、低音がコンテナの外側鉄板に伝わって振動している場合には僅かな効果しか感じられない場合があります。
コンテナ内で音楽を流し、コンテナの外側を触ってみて振動が感じられるようであれば制振もした方がよいでしょう。
Q. 軽量鉄骨造でアコースティックギターを弾きたいのですが、窓側と隣室側の壁に石膏ボード+吸音材を貼れば外や隣室への音漏れを防げるでしょうか?
今の部屋は、スマホの最大音量で音楽を流した時でも隣室に聞こえないくらいの遮音性能です。
A. 窓側と隣室側の壁だけ遮音性能をアップさせても、他の壁や天井・床から音は伝わってしまいます。
そのため、全体的に部屋の防音性能を上げないといけません。
また、スマホのMAXの音量は75dBほど、アコースティックギターは95 dBほどと推測されるので、スマホの音が聞こえなかったからといって安心できません。
ちなみにDIYで窓の防音性能を15 dB上げるだけでも
- 内装下地を立てる
- 内装下地の間にグラスウールを敷き詰める(吸音)
- 石こうボード2枚貼りで塞ぐ
このくらいの作業が必要になります。
Q. 部屋で全力で歌いたい時はどういう防音対策をすればよいですか?
A. 防音ブースを設けるのが最もコスパがよいと思います。
部屋全体に防音工事しようとすると、費用も嵩(かさ)み、また賃貸の場合には工事の許可がおりないこともあるからです。
Q. 隣室や階下からのイビキに困っています。
A. 布団の場合にはベットにして床から寝る位置を浮かすだけでも若干(じゃっかん)の効果は期待できます。
隣室からのイビキの場合、壁から1.5cmほどの位置に木材の柱を建て、柱の間にグラスウールを充填して石膏ボード+遮音シート+石膏ボードの壁を貼ると効果を感じることができるはずです。
階下からの場合、床の防音は単に質量を増すだけでは難しいため、このような防振置き床を利用すると効果的です。
http://www.awaji-giken.co.jp
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