【防音DIY】-ダンボール製の防音室を強化して生配信をしたい-
配信 防音DIY 防音対策ギター弾き語りや歌の生配信を考えています。
ダンボール製の組立て式防音室を防音強化したいのですが、どういった方法がよいのでしょうか?
防音のお悩み・質問コーナー。
今回のゲストは、段ボール製の防音室を強化して生配信に使いたいNさんです。
では、お悩み・質問をどうぞ!
ギター弾き語りや歌の生配信をしたいと思っています。
市販のダンボール製の防音室を購入して防音強化したいのですが、1番適した方法を教えてください。
ご検討中の防音室の大きさ、重さ、価格など、詳細をお聞かせください。
はい。
・構造 ⇒ 組立て式
・材料 ⇒ ハニカムダンボール製
・大きさ ⇒ 広さ:1 m2ほど、高さ:2 mほど
・重さ ⇒ 35 kgほど
・価格 ⇒ 10万円超
の商品です。
防音性能測定データとして「防音室内の音量90 dBを防音室の外1 mの距離で60 dBまで減衰」と記載されています。
30 kgほどの重さで、30 dBの遮音性能と謳(うた)っているのですか?!
その重さでその遮音性能は再現できないと思いますよ。
我々が遮音性能を考える上で、参考の1つにする「質量則」という式があるのですが、それに当てはめて計算してみますね。
質量則は材料の重さが重いほど音を遮ることができるという法則で、次式で表されます。
透過損失値TL[dB]=18・log(f・m)-44
f:周波数[Hz]
m:面密度[kg/m2]
透過損失値とは試験室で測定した理想の遮音性能のことであり、面密度は1 m2あたりの材料の重さのことです。
ご検討中の防音室は広さ:1 m2、高さ:2 m、重さ:35 kgということなので、総面積10 m2、面密度は3.5 kg/m2になります。
周波数を500 Hzとして計算してみます。
透過損失値TL[dB]=18・log(500×3.5)-44
=18・log(1750)-44
=18×3.243-44
=58.374-44
=14.374
ご覧の通り、計算上では謳っている遮音性能30 dBの半分ほどの14.374 dBという数値になります💦
えっ?!遮音性能、そんなに違うのですか?
危なく信じてしまうところでした!
実際に使っていたら思っていた効果が得られなくて驚いていたかもしれませんね。
もし、もっと詳しく「既製品として販売されている量産型の組立て式防音室」の重さと防音性能についてお知りになりたい場合は、こちらをご参照ください。
【ユニット式防音ルームに潜む罠!重さで防音性能を見極めよう】
ありがとうございます。
参考にさせていただきます。
あ!そういえば、もしかして吸音材を使ったら性能UPする、ということはないですか?
商品の説明サイトには「別売りの吸音材と組み合わせることで防音性能をUPさせることができる」と書いてあったのですが・・・。
防音室の外1 mの距離で無音にできれば、と思っていました。
残念ながら吸音材は室内の音の響きを抑える効果はありますが、音を小さくする効果はありませんよ。
こちらで詳しく解説しているのでご参照ください。
【防音と吸音の違い「吸音は防音しない」】
【防音材と吸音材は違います!混同する3つの理由とは?!】
音量についても、必ずしも無音(0 dB)にしなくても、雑音に紛らせて気にならない程度の音量にできれば問題は解決するのではないでしょうか?
まずは、気にならない程度の音量や、その音量にするために必要な遮音性能はどのくらいなのかを把握することが重要です。
下記にて必要な遮音性能の算出法に関して解説しているので、どうぞご参照ください。
【プロが教えます!必要な防音性能を確実に調べる方法とは】
【スマホの騒音計アプリで防音対策!】
【防音室や防音の、音漏れ確認や防音DIYの目安の簡易測定に利用できる【ピンクノイズ】】
吸音材には音を小さくする効果はないのですか?
吸音材の商品も色々調べて2つまで絞ったので、並木さんにどちらがいいか聞いてみようと思っていたところでした。
音量については確かにそうですね。
別に無音にまでしなくても、他の人が気にならない音量まで小さくできれば問題なしですもんね。
では、防音室の壁の内側と外側に遮音シートを貼ったら性能をUPさせられませんか?
遮音シートは名前から誤解をされやすいのですが、遮音性が高いわけではないのです。
ダンボール製の防音室自体が35 kgほどのとても軽い商品なので、遮音シートの質量でも何枚か重ねれば5 dB程は向上するかもしれません。
しかし、5 dBは体感的にはほぼ感じ取れないほどの僅かな差ですので、遮音シートを貼ることをおすすめはしません。
遮音シートと吸音材の防音性能についてはこちらをご参照ください。
【遮音シートと吸音パネルを足したら防音性能はどうなった?】
では同じように、内側と外側に石膏ボードを貼ったらどうでしょう?
ダンボールに石膏ボードを直に接着するのは、表面が剥がれて崩壊する危険性がありますよ!
それに石膏ボードは木の下地を建てて空気層を設け、そこに打ち付けないと効果もそれほど得られません。
複構造についての考え方はこちらで説明していますので、ご参照ください。
【防音室】防音の効果的に行うにはミルフィーユ!】
いずれにせよ、どんな音をどこに対してどれだけ防ぎたいか?から逆算して防音室の材料や施工法を決める必要があります。
ダンボール製の防音室を強化しても性能が足りなかった場合、代金10万円以上を含め、全てが無駄になってしまいます。
それは困りますね💦
希望としては
・どんな音を ⇒ 自分の出す歌声やギターの音(音域:82~1318 Hz)を
・どこに対して ⇒ 同じ室内にいる家族に対して
・どれだけ ⇒ 100 dBの音を、防音室から1 m離れたところで40~45 dBに
したいのですが、ダンボール製の防音室では強化しても厳しいでしょうか?
厳しすぎかと思いますよ💦(><)
100 dBの音を40~45 dBにするには55~60 dBの遮音性能が必要になりますが、元のダンボール製の防音室は推定15 dB減衰ほどの性能です。
すると残り40~45 dBを強化しなければなりませんが、そのレベルは我々専門業者に依頼するような数値です💦
我々も下記のDIYで作る防音ブースを紹介していますが、このブースを部屋の中央に置いて、隣居室に対して40~45 dBの減衰値が確保できるかどうかです。
【【10万円】完全解説!防音のプロがDIYで防音室を創る】
ダンボールの商品に手を加えるだけで得られるレベルではありません。
そうなのですね!
ダンボール製の防音室に夢を見過ぎていました💦
見通しが甘かったです。
材質がダンボール製という段階から考え直します。
お陰さまで無駄な出費をせずにすみました!
ありがとうございました!
購入前で良かったです。
これからも音に悩んだら、お気軽にご相談ください!