楽器演奏やボーカルの音を外に漏らしたくない!必要な防音性能を確実に調べる方法とは
皆さん、こんにちは。
運動会は常に全力!防音アドバイザーBudscene並木です。
マラソンや徒競走には常にゴールがありますよね。
もしこれがスイカ割りのように目隠しをしてグルグル回ってから走ることになったら、どこを目指せばよいのか方角も距離もわからずゴールにたどり着けません。
実は防音対策も、マラソンや徒競走と同じなんです。
音トラブルがあったからといって、必要な防音性能(=ゴール)もわからずにやみくもに対策しても目的を達成できません。
そればかりか、時間・費用・手間が無駄にかかるだけで終わってしまいます。
そのため防音のゴール設定は非常に大切なのですが、ゴール設定への道を拓(ひら)くには、3つのカギが必要になります。
今回は、このゴール設定に必要な3つのカギとゴール設定の仕方について解説していきます。
目次
防音性能を決めるために必要な3つのカギ
3つのカギとは具体的に何かというと「発生する音の音量」「環境騒音」「現状の遮音性能」です。
これらを求めることで、防音に必要となる性能が明確になります。
では早速、3つのカギについて説明していきましょう。
カギ1. 発生する音の音量
最初に、ボイスチャットや楽器演奏など、自分が発生させる音の音量を騒音計で測定してください。
本格的な騒音計を準備しなくても、スマホの騒音計アプリで充分です。
音源に近すぎると適正なデータを得られなくなるので、声の場合は50 cm以上、スピーカーや楽器の場合は1 m以上離しての測定を推奨します。
カギ2. 環境騒音
次に、音を漏らしたくない場所の環境騒音(日常を営む上で自然に耳に入ってくる雑音全般)を、音を発生させる時間帯に測定してください。
- 音を漏らしたくない場所が同世帯で、実際に測定できる場合 → その場所に行って測定
- 音を漏らしたくない場所が別世帯のため、測定できない場合 → 自分の部屋でシーンとしている状態で測定
測定の際は時間帯が重要です。
環境騒音は時間で変わるからです。
昼間は人間の活動も活発で交通量も多いのに対し、夜間は活動量が減少して静かになります。
夜にピアノを弾きたい、昼間にボーカルレッスンをしたいなど、自分が防音室を使いたい時間帯に、対象となる場所の環境騒音がどのくらいであるのか確認しましょう。
カギ3. 現状の遮音性能
最後に、音漏れをさせたくない場所の、現状の遮音性能を測定してください。
<手順>
- 自室にてカギ1で求めた発生する音の音量をスピーカーでピンクノイズとして再現
- 音漏れさせたくない場所で騒音計アプリにより音量を測定
- 現状の遮音性能=1-2で計算
発生した音が、音漏れさせたくない対象の場所でどのくらい減衰できているのかを知ることで、現状の遮音性能を把握することができます。
ピンクノイズを利用した測定方法に関してはこちらをご参照ください。
【スマホの騒音計アプリで防音対策!】
【防音室の正しい性能測定】
【防音室や防音の、音漏れ確認や防音DIYの目安の簡易測定に利用できる【ピンクノイズ】】
必要な防音性能の計算 ~ゴール設定の仕方~
発生する音の音量、環境騒音、現状の遮音性能という3つのカギがそろって初めて、必要な防音性能が判定できます。
必要な防音性能は、
必要な防音性能=発生する音の音量-(環境騒音+現状の遮音性能)
として考えることができるからです。
音量どうしの関係をグラフ1.に表します。
グラフ1. 各音量の相関性
では実際に具体的な測定例をあげて、各数値の関係を2パターン考えてみましょう。
パターン1:ボイスチャットの音を、夜に家族の隣室に対して防ぎたい場合
- ボイスチャットで元気よくしゃべる時の音量 → 70 dB
- 夜の室内の環境騒音 → 25 dB
- 同世帯の間仕切り壁の遮音性能 → 30 dB
この場合、
必要な防音性能=発生する音の音量-(環境騒音+現状の遮音性能)=70-(25+30)=15 dB
となります。
パターン2:全力ボーカルの音を、昼に建物の外に対して防ぎたい場合
- 全力ボーカルの音量 → 95 dB
- 昼の外の環境騒音 → 40 dB
- 建物の外壁の遮音性能 → 30 dB
この場合、
必要な防音性能=発生する音の音量-(環境騒音+現状の遮音性能)=95-(40+30)=25 dB
となります。
戸建ての場合は、隣の建物自体の性能もあるので、その分の遮音性能も現状の遮音性能にさらに加算できます。
パターン1とパターン2の各数値の関係をグラフ2.に示します。
グラフ2. パターン1とパターン2の各数値の関係
■=■+■+■というように、発生する音の音量に対して必要な防音性能・現状の遮音性能・環境騒音がぴったりイコールになっていると、環境騒音が低い時間帯などに、防音しにくい音(低い周波数の音や固体から伝わる音など)が漏れてしまう場合があります。
実際に対策する際には念のため+5 dBほど余裕をもったゴールセッティングをするとよいでしょう。
必要な防音性能がわかれば、それに合わせて防音の方法や素材を考えることができます。
このように、防音はゴールからの逆算となります。
検証
現在、実際に販売されている商品やアップロードされている動画をみても、現状の遮音性能や必要な防音性能に関してしっかりと言及しているものはあまりみかけません。
そこで、現状の遮音性能や必要な防音性能を把握するために、商品の機能や間仕切りの複構造に対してBudsceneで検証してみました。
防音商品の、実際の機能について検証したものがこちらです。
【遮音シートと吸音パネルを足したら防音性能はどうなった?】
【自分で防音対策!オススメの素材や防音商品について解説】
複構造の効果を検証したものがこちらです。
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】
【防音はミルフィーユだ!!】
皆さんがDIYで防音対策する際や、専門業者に依頼する場合にご参考にしていただければと思います。
まとめ
音トラブルのない生活を実現するためには、防音対策でのゴール設定が大切です。
そして、ゴール設定のためには3つのカギ「発生する音の音量」「環境騒音」「現状の遮音性能」が必要となります。
これらを意識して確実な防音を行い、是非快適な暮らしを手に入れてください。
私たちBudsceneは様々な防音情報の発信とともに、求められた性能通りの防音室の提供も行っております。
音にお悩みの方がいらっしゃいましたらご相談・ご依頼などいつでも承りますので、どうぞお気軽にご連絡ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 環境騒音の測定で気をつけることはありますか?
A. 対象の場所・対象の時間帯で5分ほど測定し、平均値をとるようにしてください。
Q. 賃貸なので、相手側にどの程度聞こえているかわかりません。
A. そういった場合は、逆に隣から聞こえてくる音で判断してください。
ドアの開閉音やくしゃみなど、どのくらい聞こえるのかタイミングを見計らって確認してみるとよいでしょう。
Q. 賃貸ですが、天井の防音対策として素人がDIYで手を加えるのは難しいでしょうか?
A. 天井の防音は重い素材を支えないといけないため、かなり上級者向けです。
また、もし天井裏にまで手を加えなければならない場合、大家さんのような家の管理責任者の判断も必要となるので気をつけてください。
Q. 廊下を挟んだ部屋に音漏れをしているようです。どうすればいいでしょうか。
A. 廊下への音漏れにはドアの強化が効果的です。
現状から5 dBほどの向上でよいのであれば、隙間テープや防音カーテンでも満足できるかもしれません。
Q. ピンクノイズって何ですか?
A. 音の高さと強さが反比例する(低音ほどエネルギーが強い)ノイズのことです。
実際のピンクノイズはこんな音です。
【防音室や防音の、音漏れ確認や防音DIYの目安の簡易測定に利用できる【ピンクノイズ】】
詳しくはこちらのQ&Aをご参照ください。
【防音室の正しい性能測定】
Q. Budsceneでも騒音計アプリを使っているのですか?
A. いいえ。
私たちは、発生させた周波数ごとにオクターブバンドで測定できる騒音計を使っています。
騒音計アプリは周波数の全領域をカバーするオールパス式で、低音から高音まで全ての音域の音をごちゃ混ぜに表示してしまいます。そのため問題があった場合にどの音域の音が原因か特定できないからです。
しかし、本格的な騒音計は費用もかかるので、自宅で簡易的にDIYを行う場合は騒音計アプリでも充分でしょう。
詳しくはこちらをご参照ください。
【防音室の正しい性能測定】
関連動画
【意外と知らない、どうしたら音が漏れなくなるのか?を簡単に解説!】
【音が漏れてしまう仕組みを解説【防音のゴールセッティングとは!?】】
【防音アドバイザー 並木勇一チャンネル】
【防音室や防音の、音漏れ確認や防音DIYの目安の簡易測定に利用できる【ピンクノイズ】】
【防音はミルフィーユだ!!】
関連記事
【見積もりは金額で決めるな!防音室の目的を達成できなければ意味がない】
【スマホの騒音計アプリで防音対策!】
【防音室の正しい性能測定】
【自分で防音対策!オススメの素材や防音商品について解説】
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】
【遮音シートと吸音パネルを足したら防音性能はどうなった?】