防音材と吸音材は違います!混同する3つの理由とは?!
皆さん、こんにちは。
防音アドバイザーBudscene並木です。
下の画像で、どちらがハリネズミだと思いますか?
答えは・・・左です♪
左がハリネズミで、右はハリモグラでした^^
ハリネズミとハリモグラは見た目も名称も似ていますが、ハリネズミはモグラの仲間、ハリモグラはカモノハシの仲間なんだそうですよ!ややこしい(><)
こんな風に自然界には、こんがらがってしまうものがたくさんありますよね。
そして防音業界でも役割や用途が違うのに、紛らわしくてよく同一視されるものが存在するんです。
防音材と吸音材です。
この2つは実は全く別物なのに、同じものと認識されることが多々あります。
今回は、何故防音材と吸音材が混同されてしまうのか、その3つの理由や実際の違いについて解説していきます。
目次
理由1. 防音と吸音を曖昧に認識している
そもそも防音と吸音は名前もイメージも似ていて紛らわしいですよね。
けれど意味をよ~く考えてみてください。
防音は文字通り「音を防ぐ」と解釈できますが、吸音って何?音を吸うってどうやって?と思いませんか?!
吸血鬼や掃除機のように口から吸うわけないですしね・・・。
布が水を吸うイメージに近いのでしょうか。
そこで、違いを認識するためにまずは「防音」と「吸音」の定義をはっきりさせることにしましょう。
防音とは
防音とは「音(振動)が伝わらないようにする」ことです。
屋外から室内、または室内から屋外、隣室どうしなどの他方へ音が漏れないように対策することをいいます。
防音方法は主に次の3通りです。
- 遮音・・・壁などで音を跳ね返して遮る方法。壁などの材料が重ければより効果的。
- 防振・・・音源(振動源)と、音を伝えたくない箇所の間にゴムなどの弾性体を挟んで振動を小さくする方法。
- 制振・・・音源に対して支柱を増やすなどして振動を直接抑える方法。
遮音は空気を伝わる音に対して、防振・制振は固体を伝わる音に対して有効です。
吸音とは
一方、吸音とは何でしょうか。
実は吸音の正体は、「音エネルギーを熱エネルギーに変えて弱める」ことなんです。
吸音材は繊維状や無数の小孔があいているスポンジ状で、空気と吸音材との摩擦面積が大きくなるような構造になっています。
これにより音(空気の振動)が吸音材の中に入ると摩擦が起こり、音エネルギーは摩擦の熱エネルギーに変換されて音が弱まります。
ただし音を跳ね返して遮る効果はほとんどないため、防音(遮音)効果を期待して吸音材を購入しても満足な効果を得られないでしょう。
吸音材の摩擦熱による温度上昇も、触れないくらい熱くなる!なんてことはなく、人が感知できないほど微量です。
繊維状(グラスウール) 繊維状(ロックウール) スポンジ状(ウレタン)
また、音は吸音材の繊維や小孔であちこちの方向へ反射し、進行方向が揃(そろ)わずに特定の方向への強い反射音がなくなります。
そのため吸音材には反射音の伸びを短くし、音を響きにくくする効果もあります。
防音材と吸音材の使用法
防音と吸音の定義が明確になったところで、防音材と吸音材の使い方について解説していきます。
防音材には遮音材や防振材などがありますが、特に吸音材と混同されがちなのは遮音材なので、ここでは防音材=遮音材とします。
防音材(遮音材)と吸音材の用途の違いは次の通りです。
- 防音材(遮音材) → 音を跳ね返して遮る
- 吸音材 → 室内の反射音の調整
音が物質にぶつかった(入射した)際には、下図のように透過音・反射音・吸収される音に分かれます。
遮音材は反射音を多くして透過音を少なくし、吸音材は吸収される音を多くして反射音の響きを抑えるはたらきをします。
イメージとしては、防音材が防波堤、吸音材はテトラポットなどの消波ブロックといったところでしょうか。
防波堤は波を押し返し、消波ブロックは波がしみ込んで徐々に小さくなっていく様子がそれぞれ防音材、吸音材に似ています。
防音と吸音の違いについてはこちらでも述べております。
【防音と吸音の違い「吸音は防音しない」】
具体的な遮音材・吸音材についてはこちらでご紹介しています。
- 遮音材 → 【コスパ最強の防音材はこれ!】
- 吸音材 → 【吸音材は、こう選ぶ!選び方のコツ・注意点を徹底解説】
どうぞご参照ください。
理由2. 検索AIの信頼性が低い
2つめの理由としては、インターネットで「防音材」「吸音材」と検索すると表示される商品が代わり映えしない、ということが挙げられます。
違う検索ワードで検索しているのに同じ商品が表示されたら、検索ワードの意味も同じだと誤解してしまいますよね?!
何故、検索ワードが異なるのに全くといっていいほど同じ商品が出てきてしまうかというと、検索AIが文字のみを判断していて、情報の中身は精査していないからです。
検索の順位は、基本的に文字列やテキスト、ページ数などで決まります。
その商品が本当に防音材なのか、それとも吸音材なのかはAIには正確に判断できません。
商品説明に記載されている文字列から判断してしまうので、検索した人のニーズに合っていない商品を表示してしまうのです。
つまり現状は、「防音材/吸音材」のように検索に引っ掛かるように記載したもの勝ち、という事態になっています。
そのため買い手側自身の知識を深めて、無駄な買い物をしないように自衛することが必要なのです。
(余談ですが不思議なことに、ChatGPTを使って「吸音材と防音材の違いは?」と聞いてみると結構的確に説明してくれるんですよね^^;)
理由3. みなし密度に惑わされてしまう
多くの吸音材に記載されている「みなし密度」も、防音材と吸音材を混同してしまう一因です。
みなし密度とは、その商品1 m3あたりの重さ[kg]を表すものです。
例えば、私たちがよく使うグラスウール・ロックウールという商品には「32 K」「40 K」「80 K」といった記載があります。
これは、それぞれ体積1 m3あたり32 kg、40 kg、80 kgの重さであることを示しています。
しかしこの表示があることで、実際の商品は薄くて軽い板材なのに、重くて防音(遮音)効果があると錯覚しやすくなってしまうのです。
購入する時はみなし密度に惑わされず、商品の厚さ辺りの重さに換算して考えましょう。
まとめ
防音材と吸音材が混同されてしまう3つの理由をご紹介しました。
防音材と吸音材は違うので
- 防音材は「室内外での音の出入りを防ぐ」
- 吸音材は「室内での音の響きを調整する」
といった目的別に使い分けてください。
気軽に発注できる通販サイトは、運送業者が請け負ってくれる届けやすい素材を商品として扱っています。
目的に沿った買い物ができるように、本当に必要なものを見極める目を養いましょう。
私たちBudsceneは様々な防音情報を発信しています。
効果ある防音DIYの参考にしていただければと思います。
音にお悩みの方がいらっしゃいましたらご相談・ご依頼などいつでも承りますので、どうぞ気軽にご連絡ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
防音アドバイザーBudscene並木でした。
質問コーナー
Q. 有孔ボードは吸音材ですか?
A. 吸音効果はありますが、吸音する対象音域が狭く扱いづらいのでおすすめはしません。
表面をビニールクロスで仕上げたりした場合には無意味になります。
【吸音材は、こう選ぶ!選び方のコツ・注意点を徹底解説】
Q. 御社が提案している防音ブースを作ろうか考えているのですが、サイズダウンした場合防音効果は下がりますか?
A. サイズダウンしても問題ありません。
材料が高騰してしまっていますが、是非つくってみてください。
【【10万円】完全解説!防音のプロがDIYで防音室を創る】
Q. 自室で大騒ぎしたいです。最上階の角部屋です。
外への音漏れ対策として防音壁を作ろうと思っているのですが、壁だけ防音しても結局は他の部分から音が逃げてしまい無駄になるでしょうか。
A. 大騒ぎするとなると、建物の躯体構造を伝わる音が近隣へ伝わってしまう可能性が高いでしょう。
壁だけの対策では満足な性能向上は得られないと予想されます。
とはいえDIYで床への対策は難しいため、近隣から聞こえてくる音の音量から現在の遮音性を推測して、防音壁で向上できる性能で大騒ぎが可能かどうかを判断してください。
【壁の防音性能をDIYで上げる方法】
Q. SRC(Steel Reinforced Concrete)造のマンション10階の1Kに住んでいます。
窓の目の前に線路が通っており、騒音計アプリで測ってみる部屋内はどこにいても50〜55 dBほど出ています。
朝はそれで睡眠できないくらいうるさい状況です。
窓としての機能はほぼ要らないので、防音しようかなと考えています。
二重窓も考えましたが、以下の理由により難しいです。
・賃貸であること
・掃き出し窓に二重窓を取り付けるのに十分な幅がないこと
A. こちらの方法で大分軽減されるはずです。
【窓への音対策!こんなに防げるDIY施工法2パターン】
どうぞご参照ください。
Q. 賃貸アパートに住んでいます。
壁際に置いているテレビの音が隣室に聞こえていないか心配しています。
部屋の遮音性は、壁に耳を当てるとかかすかにテレビの音が聞こえる程度です。テレビの内容までは聞き取れず、隣の生活音もほぼ聞こえてきません。
A. 隣室の生活音がほぼ聞こえないなら、45 dB以上の減衰値があると推測されます。
壁に耳を付けた際には音を探すことになりますし、耳を付けた側は壁の音のみを聞くことになるので、とても聞こえやすくなりますよ。
どうしても気になるようであれば、ARC(Audio Return Channel)機能付きのスピーカーを利用してテレビの音が自室側に出てくるようにするとよいでしょう。
【隣居からテレビの音が聞こえる原因と防ぐ方法】
Q. 電動工具(トリマー・ルーター)を使用しています。
とてもうるさいため、電動工具自体に四角く囲いを作って音を閉じ込めてしまいたいと考えています。
80〜85 dB → 70 dB以下を目指したいのですが、可能でしょうか?
A. 空気で伝わる音を15 dB減衰させたいのであれば、面密度10 kg/m2が目安となります。
しかしカバーを作っても、隙間から漏れる音や、機器の振動で固体を通して伝わる音があるので、そこをケアしていくかたちになります。
Q. 車中泊が趣味なのですが、 車中泊時に他車のエンジン音や雨音が気になります。
何が効果ありますか?
A. 車内での雨音に関してはゴムシートなどでのボディーへのデットニングが効果的です。エンジン音に関しては安全面も考えると、ノイズキャンセラー付きのイヤフォンやヘッドフォンがよいと考えます。
関連動画
【【防音DIY】吸音材は防音材では無い!誤って認識してしまう落とし穴を3つ解説!】